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8. 隠し事はダメ

 ――翌日、朝。


「眠っ」

「どーしたんだ? 夜更かしでもしたのか?」


 俺が大きなあくびをしながらボーっとしていると、前の席の海斗が声を掛けてきた。


「まあ、そんなとこだ」


 本当は、香澄さんにリストバンドをもらえたことが嬉しくてずっとリストバンドを眺めていたら朝になってましたなんて絶対に言えない。


「あっぶない! 遅刻するかと思ったぁ!!!」

「お、愛花。おはよー」

「……うん、おはよ」


 慌てて教室に入ってきたかと思えば、俺の顔を見たとたんに愛花は何故かソワソワし始めた。

 何かあったのだろうか。


「ん?」


 愛花は席につくと、ずっと俺のことをじっと見つめてくる。

 本当にどうしたのだろう。

 俺の顔に何かついているのか?


「…………」

「ずっと見つめてどうしたんだ?」

「今日の昼休み、時間ある?」

「まあ、あると思うけど」

「じゃあ、昼休みに体育館裏に来てくれる?」

「うん、いいよ」


 昼休みに体育館裏……?

 教室じゃ話せないようなことなのだろうか。


*****


 昼休みが始まるまでの間ずっと愛花の様子はおかしいままだった。

 いつもなら冗談を言えばツッコんできたり、逆にボケてきたりするはずなのに今日の愛花はずっと静かだ。それに、授業中も休み時間もずっと俺の顔を見つめていた。


 そして、昼休み。

 俺はすぐに体育館裏へと足を運んだ。


「よっ」

「やっと来たね」

「いや、すぐ来たんだけどなぁ」


 体育館裏に着くと、すでに愛花が待っていた。

 というか、ここまで一緒にこればよかったんじゃ……。


「なんでここに呼び出したか分かる?」


 愛花は真剣な眼差しで腕を組みながら俺を睨みつける。

 気づかないうちに俺は愛花を怒らせてしまうようなことをしていたのかな。


「ごめん、わからない」


 呼び出された理由が分からず謝ると、愛花は大きなため息をついた。

 いつも明るい愛花とはまったく違う、怒っているような悲しんでいるような表情をみせている。

 本当に俺は、何をしたんだ。


「私に隠してることない?」

「え、隠してること?」

「うん」


 俺が愛花に隠している事。


「あ」


 愛花が起こっている理由が分かったかもしれない。

 俺が愛花に隠している事なんて1つしかないからな。

 きっと、俺が香澄さんと同居していることについてだろう。


 だけど、なぜ愛花がそのことを知っているんだ。


 もしかして、昨日の帰り道で香澄さんが感じていた背後からの視線。あれって、愛花だったのでは!?


 そういうことか。

 まあ、隠していた俺も悪いわけだし、ここは素直に香澄さんとの同居のことを話そう。


 もちろん、他の誰にも言わないようにさせるけど。


「隠し事、思い出した?」

「ああ、そういうことだったんだな」

「うん、それじゃあ、自分の口で説明してちょうだい」

「わかった。俺が愛花に隠していたのは、香澄さんとの同居のことだ」

「へっ……?」


 俺が正直に香澄さんと同居していることを話すと、愛花は何故か驚いた表情になった。

 愛花は俺が香澄さんと同居していることを知っているんだよな?

 それなのに、なぜそんな予想外の回答を聞いたような反応になっている?


「おい、愛花?」

「え、ど、同居……?」

「え、待て待て。俺が香澄さんと同居していることに気づいたから俺をここに呼び出したんだよな?」

「えーっと、少し違くて……」


 あれ?

 もしかして俺、同居してること言う必要なかった?

 同居のことを知っていると勘違いしちゃってた感じなのか?


「じゃあ、なんでここに呼び出したの?」

「昨日、涼の様子が少しおかしかったから帰ったふりして本当は涼のあとをつけてたの」

「うん」

「そしたら、涼があの有名人の香澄先輩と一緒に帰り始めて」

「お、おう」

「一緒のマンションに入っていったの」


 一緒のマンションに入っていくとこまで見られたならやっぱり同居に気づいてたんじゃないのか?


「そこまで見たなら同居に気づいたんじゃないの?」

「いや、ただ同じマンションに住んでるだけかと思ったの! あったとしても隣の部屋に住んでるとかなのかと……」

「あー、そういうことだったのか」


 なるほどな。

 たしかに俺と香澄さんが一緒のマンションに入っていくとこまでを見ただけだと偶然同じマンションに住んでたんだなぁとしか思わないか。

 それなら同居のことは言わなくても良かったのか。


 まあ、幼馴染に隠し事はどちらにせよ良くないことだし、いつかは言うことになってただろうから良しとしよう。


「それで同居って一体どういうことよ!」

「あー、それは――」


 俺は一切嘘をつかずに同居することになった経緯を話した。


「……とまあ、こういう感じで香澄さんと同居することになったんだよ」

「なるほどねぇ、そういうことだったのね」

「うん」

「全生徒が羨む状況ね」

「絶対に言うなよ!」

「言わない言わない。私たちだけの秘密にするよ」

「ああ、そうしてくれると助かるよ」

「ふふっ、同居は予想外だったけど正直に教えてくれてうれしかったよ。よし、それじゃ、教室に戻ろうか」

「ああ、そうだな」


 こうして秘密を打ち明けた俺は愛花と一緒に教室へと戻った。



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