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7. リストバンド

 夕飯を済ませた俺は、ソファでくつろぎながらスマホでプロのテニスの試合を見ていた。

 プロのテニス選手のプレーは見るだけでも勉強になることが多い。そのため、暇なときはよく視聴している。


「あ、そこで反対側に打つのか」


 1人でボソボソと呟きながら試合を見ていると、背後から香澄さんが俺のスマホの画面をのぞき込み始めた。


「うわっ! びっくりしたぁ」

「ふふっ、ごめんね。夢中になってみてるから何を見てるのかなぁと気になっちゃって」

「別にいいですよ。一緒に見ます?」

「うん、見る!」


 香澄さんは俺の隣に腰を下ろし、一緒にテニスの試合を見始めた。


「やっぱりバレー以外のスポーツの映像とかも気になるもんですか?」

「そうだね。他のスポーツの技術がバレーでも活かせたりすることもあるからね」

「確かにそうですよね。俺もテニス以外のスポーツの試合を見るとき、この動き、テニスに使えないかな? とか考えることあります」

「やっぱアスリートはみんなそうなのかもね!」

「今度は一緒にバレーの試合も見てみたいです」

「それじゃ、今度一緒に見よっか」

「はい!」


 今度一緒にバレーの試合を見る約束をしたのだが、突然、香澄さんが何かを思い出したように立ち上がる。


「あぶない! 忘れるところだった!」

「え?」

「涼くん、ちょっと待ってて」

「あ、はい」


 香澄さんは小走りで自室へと行き、すぐにリビングに戻ってきた。


「はい、涼くん。これ、あげる」

「え!? いいんですか?」


 香澄さんは俺に2つの白いリストバンドを手渡した。

 俺がテニスをするから買ってくれていたのか。

 やばい、めっちゃ嬉しい。


 俺は心の中で歓喜の舞いを踊っていた。


「涼くん明日から部活でしょ?」

「そうですね」

「だったら、これくらいあげたいなと思って」

「マジで嬉しいです! 香澄さん、ありがとうございます!」

「それをつけて部活頑張ってね」

「超頑張ります!」


 早速つけてみると、サイズもちょうどよく、完璧だった。

 俺だけがもらうのも申し訳ないので、今度は俺が香澄さんに何かプレゼントしてあげたいと思った。


 だけど、何をあげればいいのか思いつかない。

 こういう時は俺も部活の練習等で使えるようなものが良いのだろうか。それとも日常生活でも使える者が良いのか。


 俺が頭を悩ませていると、香澄さんが不思議そうに俺の顔を覗き込む。


「どうしたの?」

「あ、いえ、俺がもらうだけなのは申し訳なくて香澄さんにも何かあげたいなぁと思って」

「そんなこと気にしないで良いんだよ」

「でも、俺の性格的に一方的にもらうのは……」

「んー、だったら、テニスボールのストラップが欲しいな」


 香澄さんはテニスボールのストラップが欲しいと言った。

 バレーボールではなくテニスボール?

 どうしてテニスボールなのか不思議に思った俺は直接聞いてみることにした。


「バレーボールじゃなくてテニスボールのストラップですか?」

「そう! バレーボールのストラップはもう持ってて、スマホに付けてるの。だから、同じとこにテニスボールのストラップをつけたいの」

「そう、なんですか」

「私と涼くんの2人で頑張ってる感じがして良いでしょ?」

「確かにそうですね!」


 2人で頑張っている感じがして良い……か。

 正直照れくさかったが、嬉しかった。

 明日にでもテニスボールのストラップを買いに行こう。


「やっぱり、同じ目標を持つ人が近くにいるのは最高だね」


 香澄さんは俺の隣でそう呟いた。

 聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で。

 俺に言ったわけではなく、ただの独り言かもしれない。だけど、俺はこくりと頷いた。


「あ、そうだ。香澄さんは明日、何時に部活終わりますか?」

「私たちは、いつも通りだと6時半くらいかな」

「わかりました。それじゃあ、明日の部活が終わったら一緒にストラップを買いに行きませんか?」

「うん、行く!」


 俺は明日の部活後、香澄さんと一緒にストラップを買いに行くことになった。


「それじゃあ、決まりですね。明日部活が終わったら正門前で合流しましょう」

「わかった!」


 1人で買いに行っても良かったのだが、香澄さん本人に選んでもらった方が良いだろう。

 まあ、一緒に帰りたかったからという理由もあるのだが。


 明日の約束を決めた俺たちはその後も一緒にテニスの試合を見ながら談笑をした。

 香澄さんはテニスについてそこまで詳しくないはずなのに、楽しそうに試合を鑑賞していた。ルールを理解できたいなさそうなときは、俺が出来るだけ分かりやすく教えた。


 最初はテニスもバレーのように地面に一度もついてはいけないルールだと勘違いしていたようだが、「それはバドミントンです」と教えたとき、顔を真っ赤に赤らめていて思わずドキッとしてしまったのはここだけの話にしておこう。


「面白かった~」

「楽しめました?」

「うん、テニスもかなり面白いね! 今度は約束通りバレーの試合見ようね!」

「はい、もちろん」


 テニスの試合を見終わった俺は寝る準備を整えてから眠りについた。


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