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5. 全国大会に出たい

「ごめんね! ちょっと遅くなった!」

「いえ、全然大丈夫ですよ」


 サーブの練習を終えた香澄さんは着替えてから、俺のところにまた戻ってきた。


「つい練習に夢中になっちゃった」

「香澄さんの練習を見るだけでも俺は楽しかったのです。色々とためになります」

「そう? まあ、涼くんが良いならいっか」


 俺と香澄さんは帰り道もずっとお互いの協議について話を弾ませた。

 テニス以外のスポーツはあまりやったことがないので他のスポーツについて詳しく聞けるのはとても楽しい。


 どうやら香澄さんもバレー以外の話に興味があるようでテニスの話をしている最中、目をキラキラと輝かせていた。


「今日、バレー部は部活休みだったんですよね?」

「うん、そうだよ」

「それなのに、どうして1人で練習をしてたんです?」

「それはね、勝ちたいから……かな。私たちの学校の女子バレー部ね、ここ数年、ずっと都大会ベスト4止まりで全国に行けてないんだよ」


 そうだったのか。

 春風高校の女子バレー部は東京都の中では上位の実力だと聞いたことがあった。だから、俺はてっきり毎年全国大会に出場しているものだと思っていた。

 でも、そうだよな。


 強いチームは何校もあるよな。

 どんなに強いチームでも全国に行くというのは大変なことだろう。

 だからこそ、選手は一生懸命努力するんだ。


 たしか、俺が入部する予定の男子テニス部もここ数年はあと一歩のところで全国大会出場を逃していたはず。団体戦でも、個人戦でも。


「全国、絶対に行きましょう」


 俺は自然とその言葉が口から出た。

 その言葉を聞いた香澄さんは一度驚いたような表情になっていたが、すぐに頷いた。


「絶対に行く。けど、涼くんも行こうね」

「はい、もちろんです。それじゃあ、2人の共通の目標ですね」

「ふふっ、そうだね。お互いに支え合いながら、上を目指していこうね」

「はい、競技は違うけど上を目指す気持ちは同じですからね」


 俺と香澄さんは、2人で目標を立てた。

 必ず全国大会に出場するという目標。

 競技は違えど上を目指す者同士支え合っていける。香澄さんも頑張ってるから俺もまだ頑張れるという気持ちになれることもあるかもしれない。


 全国大会に出場するときは絶対に片方だけではなく、2人で出場を決めたい。


「近くに同じ目標を掲げてる人がいると、私も多分、毎日頑張れるような気がするよ」

「そうですね。俺も限界だーって思っても香澄さんがいればまだ頑張ろう、ってなると思います」

「お互いに良い刺激をもらえそうだね。よーし、今日は2人で全国に行く目標ができた記念に夕飯を豪勢にするぞ~」

「あははっ、それは楽しみです」


 香澄さんは上機嫌そうにスキップをし始めた。

 同居人である俺と一緒の目標を持てたことが嬉しいのかもしれない。まあ、そんな俺も内心ではかなり嬉しい。


 春風高校の部活の練習だけでも大変かもしれないが、全国に行くにはそれだけじゃダメだから俺はこれから努力し続けなくては。

 全国に行くという事は先輩たちを超えなくてはならないという事だからな。


 並大抵の努力じゃ無理だろう。

 今のままじゃ難しくても、必ず目標を達成してみせる。


「ん、今誰かいた?」


 2人で目標を立てて上機嫌に帰り道を歩いていると、突然、香澄さんが後ろ振りむき、そう言った。

 俺も困惑しながら背後を見てみるが、そこには誰の姿もない。


「あれ、気のせい……かな」

「なんか感じました?」

「うん、視線を感じた気がして……」

「ちょっと怖いですね。早めに帰りましょうか」

「うん、そうしよ」


 香澄さんは視線を感じたというので、もしかしたらストーカーが跡をつけているという可能性もあり得ないことではない。香澄さんはかなりの美人だからそういうことをする人が現れるという可能性もある。


「ん? いや、まさかな」


 最後にもう一度だけ後ろを確認すると、電柱の陰から金髪が見えたような気がした。

 だけど、恐らく気のせいだろう。

 知り合いに金髪はいるが、あいつは俺より先に帰っていたし、あいつではないだろう。


 俺と香澄さんはとりあえず、少し急ぎ目に家に帰った。


*****


 帰宅し、2人とも風呂に入り終えてから一緒に夕飯を準備した。

 ハンバーグやスープ、そしてサラダ等を作った。


「涼くん、結構料理上手なんだね! 意外かも」

「よく母の料理を手伝ったりしていたので、料理は結構好きです」

「そういうことだったのね。涼くんが手伝ってくれたから早くできたね」

「そうですね、これからもできる限りは一緒に作りますか」

「え、いいの? 私はむしろお願いしたいくらいだけど」

「俺も楽しいので」

「それじゃあ、これからも一緒に作ろうね」

「はいっ」


 俺はこれからも出来るだけ香澄さんと一緒に食事を用意したりすることになった。

 料理を作ることは楽しいし、香澄さんと一緒なら更に楽しいので俺にとっては得でしかない。


「それじゃあ、食べようか」

「はい」

「「いただきます」」


 食卓を囲み夕飯を食べているときも話題に上がったのは互いのスポーツの話ばかりだった。

 スポーツ好きな俺たちの食卓はこれからもこういう話題が多くなるんだろうなぁと思った。


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