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86.アベルくんとある朝のひと時。

86.アベルくんとある朝のひと時。




 アルケイオン神殿に行くかどうか悩んでいたところでノックの音が聞こえた。

 「アベル様、起きていらっしゃいますか?」 


 ドアの向こうから、ローズの声が聞こえた。

 「うん、起きているよ。入って。」


 俺がそう言うとドアが開き、俺の着替えを持ったローズが入ってきた。


 「あれ、リーサちゃん。帰ってきていたの?またアベル様の部屋に潜り込んだりして。」

 俺の部屋に居たリーサを見つけて、ローズは少しお冠。


 「いいじゃないの、ローズ。私とアベルの仲なんだから。」

 リーサはローズを煽る。

 止めろよ、面倒くさいんだからさ。


 「アベル様、お着替えをお持ちしましたので、お手伝いしますから着替えてください。皆さん食堂でお待ちですよ。」

 ローズはリーサの挑発を躱し、俺へと接近する。


 「いいよ、自分で着替えられる。ローズは食堂に行ってすぐに行くからってみんなに伝えて。」

 俺がこう言うと、ちょっと寂しそうな顔をしたローズが


 「承知いたしました。皆様にお伝えいたします。」

 と言って、着替えをベッドの隅に置き、体を翻す。


 俺はその後ろ姿を見ながら、


 「ローズ、いつもありがとう。」

 と、感謝の言葉を掛けた。


 その声を聴いてからこちらを向いたローズの顔は、少し笑みが零れる。

 「では失礼します。」


 ローズはおれを真っ直ぐ見ながらそう言い、静かにドアを閉めた。


 「なんだか焼けるわね。」

 リーサを詰んなそうな顔をしながらこぼす。


 「聖王国のアイドルが何言ってんだか。」

 俺は着替えを急ぎながら、ふくれっ面のリーサをからかった。


 「でも、あんたの本命はハーフエルフの大年増なんでしょ?」

 リーサは目を細め睨みながら俺に言う。

 神のお前が大年増とか言うのか、この口か、この口が言うのか。


 「精神年齢的に話していて一番楽なのはリラだけっての話さ。」

 俺は着替えのペースを速めながらリーサに言う。


 「ふーん、それならあたしでもいいじゃない。」

 「そうだよ、だからこんなに明け透けに、前世のことも含めて話をしているだろう。」


 「ん!!」


 「何顔を赤らめてんの?」

 「なんでもないわよ。ないわよ…」

 リーサはなんだか、身を縮ませ、ぼそぼそ言っている。


 「頼りにしてんだからな。トレーサ神。」

 「私は、フェアリーのリーサちゃんよ!」


 俺は着替えを終え

 「よし、行こうか。母さんがうるさいからな。おい、お前その格好で行くの?」

 

 リーサは薄いワンピース姿だ。

 下着もつけてないから、おっぴろげていた姿や胡坐をかいていた姿は言わずもがなだった。


 え?

 仮に、リ〇ちゃん人形のお股が見えたとしても、さして興奮しないでしょ?

 しないよね。


 「あたしはこうよ。」

 パチン!と指を鳴らすと黄緑を基調としたドレスに変わった。


 「神様は便利でいいな。」


 「そうよ、神様だもの。」

 そんな掛け合いをしながら、食堂に向かった。


 食堂前の扉の横にエレナが立っていた。

 「アベル様、おはようございます。リーサちゃんもおはよう。」


 「おはよう。」

 俺とリーサは一緒に挨拶をした。


 「エレナ、ユーリとは仲良くしてんの?」

 俺がエレナに聞いてみると


 「そんなことより、皆様お待ちですから早く入ってください。」

 とエレナにスルーされる。


 まあ、大人の色恋をからかうもんじゃないよね。


 食堂に入ると、言われた通り皆が待っていた。

 「皆さん、おはようございます。申し訳ありません、遅れました。」


 俺は素直に皆に謝罪をする。


 「うん、おはよう。ちょっとだけだったからね、いいよ。いただこうか。」

 父さんはいつもの穏やかな顔でそう言うと、パンを千切りモシャモシャ食べ始めた。


 「ローランド、キチンと叱って下さい。」

 母さんが不服そうに父さんに告げる。


 「母さん、言い訳してもいい?」

 俺はそう言った母さんの言葉に割って入った。


 「いいわ、聞きましょう。」

 俺を横目でチラッと見てから母さんが言った。

 

 「僕が起きたら、リーサが居たので、登城した時の事を説明していたんです。」


 「それなら最初に控えていたローズなり、誰かメイドに伝えておきなさい。リーサちゃん、おはよう。」

 

 「わかりました、母さん。ごめんなさい。」

 俺がそう謝罪すると


 「アリアンナ、皆さん、ごきげんよう。」

 そう言ってリーサテーブルの上を飛びながら、カーテシーをする。


 「ミー、リーサちゃんも食事の用意を。」

 近くの壁に控えていたミーに母さんが指示をする。


 「アリアンナ、良いわよ。アベルからパンを分けてもらうから。」


 「あら、駄目よ、ちゃんとお野菜やお肉も食べないと。」

 母さんが食事のバラスの重要性を説く。


神様には必要ないと思うけど、ここは黙っておくに限るな。


 「わかりました。お気遣いありがとう。いただきます。」

 リーサが折れた。


 お利口だね。


 「はい。では、ミーお願いね。」

 母さんは満足げにミーに告げる。


 「はい、奥様、分かりましにゃ。」

 猫獣人のミーは、可愛くそう言って食堂を後にした。


 「で、リーサちゃんが現れたってことは、またお城に行くのかい?」

 父さんが珍しく聞いてきた。

 

 こういう役目は母さんの者だと思っていたから、正直驚く。


 「その前に、アルケイン様の神殿に行こうと思って。良いかな?父さん。」


 「アルケイン様の神殿かい?いいけどなんでかな?理由を聞いてもいいかい、アベル。」

 父さんが理由を聞いてきた。


 まあ、街に出るとすれば馬車も出さなきゃならないし、護衛やメイドも必要になるからな。

 その割り振りも考えるんだろう。


 「僕が蘇生したのは城のアルケイン様の礼拝堂だったでしょ。蘇生を施してくれたのはアンネとリーサだけど、やっぱりこのセイナリアのアルケイン神殿へご挨拶に行くべきだと思ったんだ。」

 もっともらし言い訳をでっちあげる。


 「うん、そうれは大事なことだね。では、僕もご挨拶に行こうかな。」

 何!?父さんも来るとな!


 という事は必然

 「あら、それじゃ私も行こうかしら。」

 母さんが手を上げる。


 当然そうなりますよね。


 「もちろん私も行くわ。」

 はい、ロッティーも規定事項です。


 「では、みんなで行きましょう。その方が僕も心強いよ。」

 と、俺は言っておく。


 「うん、観光はしたけど、神殿は行っていなかったからね。ちょうどいいから、喜捨しておこう。」

 

 そっか、そういうのも必要だもんね。


 「ヨハン、大金貨を用意して。」


 「はい。」

 父さんの後ろで控えていた、エルフ執事のヨハンに父さんが告げた。


 は!?

 大金貨!


 日本円で、一千万だよ!

 それをポンと喜捨すんの?


 「ローランド、それで足りるかしら?」


 この一言を聞いて、食堂を出ようとしたヨハンが足を止める。

 母さん!!


 「足りないかい?アリアンナ。」


 「アベルの蘇生を見守って下さったのよ、神殿の喜捨ですもの、もっと有ってもいいんじゃないかしら?」


 いやいやいや


 「そうか、そうだね。ヨハン、大金貨は2枚にしよう。」

 父さんがそう言うと、ヨハンは無言でうなずき、食堂を後にした。


 この人たちの金銭感覚がバグってる。

 これがノヴァリス王国魔石採石量随一を誇るヴァレンタイン辺境伯領の財政感覚か。


 食事が終わり、出かける支度のために部屋に戻った。


 「みんなを連れてって、大丈夫?」

 リーサが珍しく心配をする。


 「大丈夫じゃない?アルケイン様にお願いできるか聞くだけだし。思念だけで話出来るでしょ?」

 

 「まあ、コミュニケーションは思念だけでOKだけどさ。」


 「アルケイン様は顕現するつもりもなかったみたいだから、なおのこと大丈夫じゃないか?」


 「そうね、行ってみりゃわかるわね。」


 「そのとおりだな。」




 こうして、家族全員とリーサを含めたアルケイオン神殿参拝が決まったのであった。






ここまで読んでいただき、有難うございます。

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