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8. 田中さんと高次元。

8. 田中さんと高次元。




 「お前、何しに来たんだよ。」

 と、言われ、コツンと頭を小突かれた気がした。


 ん?なんだここ。


 「なんだここじゃねーよ。何しに来たんだってんだよ。」


 なんだよ、誰だよ、テメー、何も見えねーじゃねーか。隠れてんじゃねーよ、このコミュ障が。


 「お前じゃあるまいし、コミュ障なんかじゃねぇよ。ここはな、お前が居た次元とはちょっと違うのよ。高次元と言えばいいのか。そんなもんだから、お前の目ん玉と脳みそがうまく処理できなくて見えなくなるのな。どれ、その一角だけ3次元にしてやるよ。ちったぁ待てや。」


 何ブチブチ言ってんだって。


 おお、見えた。なんだ薄汚ねージジイじゃねーか

 爺さんがイキってんじゃねーよ、コラ。


 「イキってんのはお前じゃねぇか、コラ、やんのか、次元の果てに飛ばしてやるぞ。」


 ちょっ、ちょい、待て待て。何それ、そんなん出来んの?聞いてないけど。


 「そりゃ、おめぇ、聞かせてないもの」


 そりゃそうか。で、ここどこ?


 「さっきも言ったろ、ここは3次元より別次元だな。高次元?そんな感じだ。概念みたいなもんだから、これ以上言いようがないのよな。」


 概念ねぇ。で、あんた誰?


 「俺かい?俺はなぁ、それこそ概念みたいなもんなんだが、いろんな思念体がまとまったものって言えばいいのか、意識の集合体って言えばいいのか。混沌みたいなもんかな」


 神様?


 「アハッ!そんなんじゃないよ。ありゃ最もくだらねぇ、質の悪いもんだぞ。まぁ、中にはお前ら人間にとって有用な奴らもいるけどな。」


 その意識の集合体だか、混沌だか知らないが、汚いジジイの格好なんかして俺になんの用?


 「なんだと、この格好が気に入らないなら、この格好になってやるよ、ほら。」


 うわ、うわ、Youちゃんの3D衣装になっているんじゃねーよ、あー、びっくりした。


 「それにな、あたしは用なんかねーよ。お前が勝手に来たんだ。せっかく出来のいい身体に入れてやったのに、また離れてきやがって。」


 お!?声までYouちゃんかよ。

 いいね、そのままでお願い。

 で、なに?出来のいい身体?どういうことだ、アベルのことか?


 「そう、アベルって赤ん坊の身体のことだよ。あの子は訳ありでさ、あの器で生まれ出るのを拒否したんだよ。怖いってさ。自分の身体の出来が良すぎて怖いんだと。こんな身体で世界に生まれたくない!って強烈に拒絶されてさ。死産になりそうだったんだよ。わけわかんないよな。そこへお前の魂が呑気にふよふよ漂ってきたから、丁度いいってんで、お前のことをパッと丸めて、グッと赤ん坊の中に突っ込んだのさ。それがどうしたよ、お前、今まで楽しくやっていたじゃないか。それを何故拒否した?」


 拒否ってかさ、あまりに順調すぎることに気持ち悪くなったんだよね。

 同時に怖くなっちゃってさ。何者かにいいようにやられているんじゃないかってね。

 今までの話っぷりだと、あんたがいいようにやっていたんだろ?


 「あたしはね、いいようにやってねぇのよ。対象が産まれちまえば何もできねぇんだ。たしかにお前のことをアベルの身体に入れたけどさ。それであたしの役目は終わりなんだよ。しかし、お前の両親の遺伝子がさ、ホント凄いんだ。万に一つもない確率だったんだよ。あの二人は結婚すんの。姉のシャーロットだっけか?あれも凄い才能を持っているだろ?しかし、あれだな、お前もアベルの魂と同じだったんだな。あまりに器が強力すぎると、魂のほうが拒否るのな。貴重なケーススタディだよ。」


 で、その旧アベルさんは今何やってんの?


 「ああ、強力な身体がやだって拒否ったわけだろ?だから相当努力しなければ生きていけない身体に入れてやったよ。多かれ少なかれ、生きるのには努力が必要なんだが、その振れ幅がだいぶ大きい身体に入った。まあ、空いてる器がそれしかなかったんだがな。あぁ、旧アベルがどこに生まれたかは言えねぇぞ。」


 まあ、会うつもりもねぇよ。

 でさ、変なこと聞くけど、俺ってばなんでこんなとこ来たわけ?Youちゃんの配信見ていただけなんだけど。


 「ああ、そっか、わかってないのな。お前死んだんだよ。脳卒中でぽっくり。ハッて顔してっけど、34歳はまだ若いって思ったか?節制なんて関係なく生きてきただろ?まだ若いからって、毎度の寝不足、塩分過多と油まみれの食事、仕事と毒親でストレスにどっぷり浸かったの生活。そんなん続ければ、逝く奴は逝くのよ。でも良かったじゃねぇか、苦しまずに大好きなあたし(Youちゃん)の声に送られて逝けたんだ。羨ましく思うやつもいるだろうさ。」


 せめてストレージの中身を・・・

 「それも今どきサブスクで済ませておけよ。DL保存て時代じゃないだろ。」


 うぐっ。

 でも、そうか。死んだのか。

 死んだとわかって、いっそ清々しくもあるな。

 もうあの糞親共からビビりながら生きる必要もなしか。へへへ。


 「お前んち、相当な毒親だったからな。お前が死んじまったトリガーはその毒親だったな。あいつらがインターホンで急襲したおかげで、お前のストレスが爆上がりして血圧も爆上がりしたと。で、脳の血管が切れちまったってわけだ。」


 やっぱりあの時のインターホンは、奴らだったのか。

 まじ糞共、死ね。


 「でもまあそこに来ると、家族愛って意味ではヴァレンタイン家は完璧だぞ。たっぷり甘えられる人生もありかもな。まあ、なんだろうな、なぜかお前はここにたどり着いて、俺の目に止まり、アベルの身体に入ったわけだ。本来は偶然とか運命もない次元なんだけど、お前は何者なんだろうな。つくづく不思議なやつだよ。」


 それって褒めてんだよね?

 ところで、俺がアベルの身体で生まれるときにさ、「世界に生まれたくない!!」って、すごく怖かったのよ。あれって、旧アベルさんの思念とかが残っていたってこと?


 「それだけじゃない。ぶっちゃけほとんどの奴は生まれたくないのよ。子宮の中は気持ちよかったろ?で、産まれ出ると辛いこと多いしな。でも、残留思念があったのはそのとおりだ。突貫工事だったからな、許してくれや。」


 ああ、そうなんだ。残留思念がなくても、怖いんだね。しかし、すっげー怖かったもんな。


 「ん?おい、お前向こうから帰れって呼ばれているぞ。またそばにヤバいが奴いるなw」


 草生やすなや!ホントだ、呼ばれてる感じがする。

 あれ?またあの身体に俺帰れるの?


 「ああ、もう行け。めったに魂が離れないよう調整しておいてやるから。ここの記憶もうすぼんやりさせといてやるよ。もうこっち来んなよ。」


 うん


 「ああ、一つ言い忘れていたわ。身体に振り回されるなよ、周りが不幸になる。では、視聴者のみなさまぁ!See You Bye Bye~!」



 おおぉい!勝手にYouちゃんのお別れ挨拶すんじゃねーよ。おい、こら、わかってん…



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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