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66.アベルくんと旅支度。

66.アベルくんと旅支度。



長々と報告しちゃったけど、まあ色々ありましたよ。

で、今は何をしているかというと、首都セイナリアへ行くことになったんで、準備をしているんだよ。

理由?

母さんの里帰り。

父さんと離婚したとかケンカしたとかじゃないよ。

父さんも一緒に行くからね。

俺が5歳になったから、長旅に耐えられるだろうということで、ウイリアム爺ちゃんとクリス婆ちゃんに会いに行くんだ。

初めて会うから、行儀よくしないとね。

なんたって宰相様ご夫妻だからね。

でもまあ、貴族の華やかな世界はうちのお姉様に任せた方がいいよ。

ガサツな俺とか、何かやらかす妖精種の神とか。

とてもお淑やかな貴族社会になじめそうにないしね。

というわけで、ここは俺の部屋。

かあさんとローズとマリアさんが俺の荷物を整理しているわけだ。

羽虫は飛んで、邪魔しているだけ。

「あなたも王様に会うのよ。」

いきなり母さんがとんでもないことを言い始めた。

「へ?」

「へ?じゃないの。辺境伯一族でご招待を受けているのよ。あなたも来なきゃダメなの。」

と母さんは強い口調で言った。

「え~~~、無いわぁ~~~。」

絶対阻止。無理だけど。

「そうよアリアンナ、アベルなんて王様の前に出したら、何をしでかすかわからないわよ。」

リーサが余計なことを言う。

いい加減なこと言ってんじゃねーぞ、このバカミが。

「リーサちゃんも王様に会うのよ。うちの家族みたいなものですからね。」

「え~~~、無いわぁ~~~。」

リーサ、俺の真似すんな。

「それからアベル、歳の近い王子様と王女様が居るから仲良くするのよ。」

母さんが不穏なこと言う。

「うわぁ。そこはかとなく悪い予感しかしない。そういうのは姉さんが相手してよ。」

フラグだよね。フラグだよ。

「駄目よ、あなた跡継ぎなのよ。ここで顔つなぎやっておかないと後が大変よ。」

王室の人間と顔をつないだって大したことは無いと思うけどな。

「ローランドは騎士学校行かないで冒険者になったから、色んな貴族との顔つなぎが出来ていなかったの。でも冒険者で名をはせたから、一目置かれる立場になって事なきを得たの。アベル、ローランドみたいになれる?」

いきなり厳しい現実を突き付けてくるじゃないか、マイマザー。

「そんなの余裕で出来ないよ。」

まあ、事実だし。

まず剣術で打ち込みや乱取りが出来ないようでは始まんない。

爺ちゃんも苦心して俺のトラウマを外そうとしているけど、なかなか染み付いたものは取れそうにない。

こんな所で躓くとは思わなかったよ。

もう5歳だからね。

丁度父さんも5歳で剣術を始めたころだ。

何とかしないと、追いつくどころか剣術を出来ずに魔法使いで終わってしまう。

「アベル様なら出来ますよ。今まで何でも出来てきたじゃないですか。」

ローズが気休めを言ってくれる。

「ありがとな、ローズ。でも、諦めるべきところで諦めないと次に進めないという現実があるんだよ。」

うん、5歳が言う言葉じゃないのはわかっている。

「アベルはそれでいいの?」

母さん追い詰めないでしょ。

「アベル様は魔法があるじゃないですか。そちらを伸ばせば、まして色んな新魔法を作ってらっしゃるでしょう?」

マリアさんも気を遣ってくれる。

「できればどちらも。ヴァレンタイン家の男としては剣術なんだよなぁ。でも魔法も面白いし。」

「どちらもは選べないのが歯がゆいですよね。」

マリアさんは俺を慰める。

「僕の顔つなぎの話だったよね。嫌だって言っても会わなきゃならないなら会うさ。母さん、これは決定事項なんでしょ?」

「そうね。会わなきゃ駄目よ。貴族として生まれたからには、王室や他の貴族とのつながりはどんな仕事よりも大きい。アベルならもうそれを分かっているんでしょ。」

「うん、まあね。分かりたくないけど。俺はこの城でのんびりぬくぬく暮らしたいだけなんだけどな。」

「その割には自分で色んな事件に首突っ込んでいるじゃないの。」

「そうだっけ?」

「そうですよ。」

これはローズ。

「そうですね。」

これはマリアさん。

「そうよね。」

これは母さん。

「アベルは自分で事件作るものね。」

これは羽虫。

「リーサ、お前が言うな。」

「なによ!ホントの事でしょ。!」

「お前にだけは言われたくない。」

「なんでよ!」

「そんな風だから。」

「もう!!」

「はいはい。母さん。どれくらいいるんだっけ?」

「3つの月から5つの月までの2か月ね。旅行日が合計で3週間くらいかな。」

「マリアさんゴメンね。アンネ連れていけないから、一緒に居れなくて。リーサが一緒に居てくれればいいんだけど、このお上りさんはさ。」

「いえ、私たちは大丈夫ですから、ごゆっくりお楽しみください。」

マリアさんは上品に微笑みながら言った。

「いいじゃない、私もセイナリアは初めてなんだから。」

「うん別にいけどね。リーサなら迷子になっても飛んで戻ってこれるしな。」

「そうよ。私は凄いのよ。」

「はいはい、ローズ、いっぱい色んな所へ行こうな。」

ローズは目を輝かせて

「アベル様、連れてってくださるんですか?」

「俺の観光に同行って形になるけどな。」

「それでもいいです!」

ローズは食い気味で返事をしてきた。

「さよか。」

まあ、なかなかこういう事もないから、連れまわしてやろう。

「正味3ヶ月、このお城ともお別れか。」

「出かける人たちは誰になるんだっけ?父さんと母さん、姉さんと僕、ヨハンと、チャールズ、ユーリの他騎士が8人?メイド勢はエレナ、ローズ、リサ、ミー、これだけ?」

「そうね、これだけね。」

母さんも頭の中で数えながら同意する。

「なに、ユーリとエレナ、二人で首都旅行かぁ。」

と俺が言うと

「ホントだぁ!」

と、ローズが黄色い声を上げる。

「遊びじゃないのよ。」

母さんが呆れたように言う。

「でも暇な時間はあるんでしょ。」

「そりゃ、あの二人にはそれくらい気は使うわよ。ユーリも訓練ばかりでエレナを放っておいたからね。」

「さすが母さん。」

母さんは続けて

「ローランドも色々気を遣ってんのよ。騎士たちも行き帰りの旅は仕事だけど、向こうへ着いたらちゃんと休暇を上げるつもりでいるの。」

「へー、そうだったんだね。爺ちゃんは留守番で可哀そうだけど。」

「お爺様はセイナリアに住んでらしたから、あまり新鮮味はないかもしれないわ。行ったら行ったで気をお使いになるでしょう?」

そう言って母さんは微笑み、さらに

「ヴィクトル王の剣の師匠なんですもの。」

さらりと初出の情報を言った。

「そうなの?知らなかった。王様が僕の兄弟子になるわけ?」

「あ、そうね。そうなるわ。」

「爺ちゃんが王様の師匠ねぇ。」

「そうよ、お爺様は剣士を志す人たちには人気だったのよね。」

流石二つ名持は違うね。

「お爺様は王室近衛騎士団の団長だったでしょ。それに二つ名持の有名人ですもの。当時王太子だった王様がまあ、いろいろがんばってお爺様を口説き落としたらしいわね。」

「楼閣主の婆ちゃんに振られて剣に打ち込んだって言ってはいけないんだよね。」

「絶対ダメ。絶対よ。」

母さんは固く口留めをする。

「爺ちゃんの尊厳のために絶対話さないよ。」

「そうしなさい。あなたはなんでも面白おかしく話してしまうんだから。」

おう、俺に対して辛辣だ。

「ほら、あとはあなたで整理なさい。マリアさんもローズもご苦労様。」

「まだアベル様のお手伝いしますよ?」

ローズは優しいなぁ。

「駄目よ、甘やかしちゃ。癖になっちゃうでしょ。この子は魔法とか剣術は手を抜かないくせに、こういう所で手を抜こうとするんだから。ローズ、手を出しちゃダメよ。」

「はい、奥様。」

「ローズ、アベルは私がちゃんと見ているから大丈夫よ。」

ウッセーぞ、リーサ。

「ウッセーぞって何よ。」

「俺そんなこと言ってないけど。ローズ聞こえた?」

「いえ、アベル様は黙ってましたよ。」

「キーー!」

人の心ばかり読むからそうなるんだよ。

「アベル!引っ掛けたわね!」

「何を?何一人で騒いでんの?あまりおかしな行動をとっていると、連れていけなくなっちゃうよ。」

リーサに俺は追い打ちをかける。

「リーサちゃん大丈夫?疲れているのかしら。少しおやすみしいたほうがいいんじゃないから。」

母さんは優しいなぁ。

「嫌ね、アリアンナ。私はいつでも元気なリーサちゃん。」

「母さん、リーサ元気みたいだよ。」

「そうね、良かったわ。リーサちゃんも準備があったら終わらせておいてね。」

そう言って母さんたちは部屋から出て行った。

「はーい!準備しておくわ。」

「リーサ、何か準備あんの?」

「特段ないわ。自分のものは願えば出てくるもの。」

神様は便利だ。

「楽でいいね。」

「アベルと一緒にいると楽じゃないけどね。」

「からかわれるからな。」

「そうよ!」

「セイナリアに行ったらどこ行きたい?」

「行きたくないとこならたくさんあるわ。」

「なんだよ。行きたくないとこって。どこさ?」

「あそこね、いろんな神々の神殿があるのよ。みんな小うるさいのよね。」

「あー、なーほーねー。けど、リーサさん。」

「なんですかアベルさん。」

「それってフラグでは?」

「あ!?」



ここまで読んでいただき、有難うございます。

続き読みたいなぁって思ったら、是非ブックマークしてやって下さい。

作者が喜びます。

外されると病みます。

嘘です。

とにかく気に入ってくださると幸いです。


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