7.アベルくんの魔法入門。
7.アベルくんの魔法入門。
ベビーベッドのそばで、それはいきなり始まった。
「さあ、ロッティー、これから魔法の練習を始めますからね。コツさえ掴めば、あなたならすぐ使いこなすようになるわ。一番大事なのはイメージよ。魔素を取り込むイメージ。魔素から魔力へ変換するイメージ、さらに事象へ昇華するイメージ。その一連の流れを統一したイメージとして成立させることが出来れば、あなたは一流の魔法使いになれる。がんばっていきましょう。」
と、ゆったりとしたワインレッドのワンピースドレスを着たアリアンナ母さんが、ロッティーを相手にレッスンを始めた。
あぶな!寝てなくてよかった。
アリアンナ母さんてば、急に始めんなし。
しかし普通に生きるだけなら聞く必要のない単語がガンガン出てきたけど、5歳とかの幼女に通じるのか?通じるか。ロッティーだしな。
さて、続きのようだ。
「まずは魔素の取り込みね。魔素はこの何も見えない、空気のただ中を漂っているわ。この空気中の魔素を呼吸で取り込むの。普段もみんな気づかずに吸っているのよ。うまく言葉にできないのだけれど、何かふわふわ漂っているのよね。体内に入ると、小さな力を感じるの。でもとても小さいから皆気づかないのね。それを感じ取り如何に効率的に取り込むことが出来るか、それがまた一流の魔法使いとそれ以外の線引きになる。とにかくまずは魔素を感じること。出来るかしら。」
アリアンナ母さんは続けて言った。
奥さん、そりゃ抽象的過ぎて難しいよ。なんだよ小さい力って。
光っているとか何とか、もっと具体的な特徴を言ってもらわないと…
ん?なんか肺の中にいるな。
これか?
いやいや、まだわからんよ。
何個か吸って力があるのか認識できないと。
あれ、意識してみたら、確かに空気中に漂っているな。ちょっと吸ってみるか。
んん…?肺の中に集まっているぞ。確かになんだか力のようなものを感じる。これが魔素か。
そりゃ意識しなきゃわからんよな。
てか、意識してすぐってのも出来過ぎなように思うが、たぶんこの子はまだ新生児で五感が敏感なんだろう。
おい、そんな五感ってだけで片づけていいものなのか?。
なんだろう、嫌な気分だ。身体の表面がザワザワする。
はたして、こんなに順調にことが進んでいいものだろうか?
思考ができ、出来のいい身体だといっても、こんなに物事が順調に進むはずがあるまい。
この子の身体は俺を受け入れてよかったのか?入るのは俺じゃなかったんじゃないか?
チートだなんてスルーしていたが、生まれて3か月の視野角がベビーベッドから見上げた天井の、何の経験もない赤ん坊が周りの会話を理解できるはずがないじゃないか。
そして魔素の取り込みだ!
順調すぎるんだよ…気持ち悪い!
出来すぎているんだよ!
なんだここ、なんだこの身体、なんなんだ俺は!!
あっ、あれ…? なんだ、目の前真っ暗…
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