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新生児から始まる異世界ライフ~愛情いっぱいに育てられた俺は剣も魔法も極めます~  作者: 天斑 蒼
第二章 アベルくんは三歳児

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56-1.アベルくんとギルド長。

56-1.アベルくんとギルド長室。




 「あの餓鬼ども何やってんだ?」

 「馬鹿、ご領主の御子息たちだぞ、めったなこと言うな。」


 周りの冒険者たちは騒然としている。

 そりゃそうだ、領主の息子のこんな茶番見せられたら、騒がれても当然だ。


 その騒がしさの中、ギルドの扉が、

 「バタン!!」


 と大きな音を立てて開いた。

 「おい坊主!何してる!早く入ってこんか!」


 いかつい顔が乗った、でかい筋肉の塊が現れた!

 周りで騒いでいた冒険者も一瞬ビクッとする。


 出てきたのは、ノヴァリス王国冒険者ギルド・ヴァレンティア支部長である、ギルバートその人である。

 「はーい!今、行きますよ。」


 俺はドアからこちらを覗き込む筋肉の塊に、軽い調子で返事をする。

 「なんだ、ギルド前で女の子を泣かせて。やっぱりお前もローランドの息子だな!わっはっは!」


 まだグズって涙を拭いているローズを見て、ギルおじさんは豪快に笑い始めた。

 「なに、その話教えて。それって母さんにも言っていい話?ねぇ、おじさん、教えてよ。」


 俺がこう尋ね始めると、やべぇって顔をして

 「ほら、馬鹿言ってねぇでギルドに入るぞ。」


 ギルおじさんはそう言ってごまかし、逃げるようにギルド内に入っていった。

 あれ?いつの間にかソフィアさんはギルド長の横についていたな。

 

 さて、これ以上目立っても仕方ないから行こうか。

 「ローズ、泣き止んだか?行くぞ。マリアさんもいいね。」


 気を取り直した俺は二人に聞いてみる。

 「はい、アベル様。」


 泣き止んだローズとマリアさんは俺に向かって返事をする。


 「待って、アベル様。」

 俺の横に来たアンネが俺を呼ぶ。


 「なしたよ?アンネ。」

 「ローズちゃんと仲直りに、手をつないで。」 


 アンネがなんとも子供っぽいことを言う。

 子供なんだが。


 ここでまた茶番?

 うーん、どうしたもんか。

 

 「そうだな。じゃ、みんなで手をつなごうか。ローズおいで。」

 俺はそう言ってローズに右手を差し出す。


 ハッとした顔で俺の目を見た後、すぐに目を伏せ、一瞬の逡巡の後、ローズは左手で俺の右手を握る。

 ローズの空いた右手をアンネが笑いながら握る。


 そして、アンネの右手をマリアさんが包み込むように握った。

 みんながそれぞれの顔を覗き込み、全員がニコッと笑った。


 「行こうか。」

 俺がみんなに言うと


 「はい。」

 と元気に返してくれた。


 大きな扉には、なんだか大仰な彫刻が施されており、それをくぐってギルドの中に入った。

 冒険者に向けて、こういうハッタリが必要なんだろう。


 ギルドに入ると、まず長いカウンターが目に付く。

 右側からランクの低い冒険者用なのかな?


 行列の長さが違う。

 ランクの優劣を示すためなんだろうけど、俺から見ると全くもって不合理だね。


 アホらしい。

 ぐるりと見回すと、案内板があって、もう一つ、あれは依頼張り出し用の掲示板のようだ。


 天井は吹き抜け。

 天井から豪奢なシャンデリアっぽい魔道具がぶら下がっている。


 むさい冒険者が集うギルドには、無駄に豪華な作りだ。

 キョロキョロしてる、そんなお上りさんな俺達をソフィアさんが待っていた。


 「ギルド長のお部屋は三階になっております。昇降台にご案内しますね。」

 エレベーターね。


 そういや、こういうテクノロジーは久しぶりだ。

 とはいっても魔道具なんでしょ。

 

 魔力を上下させる動力にする?

 どうやって?


 だってさ、四大元素に則ったものしか魔法は事象にできないはずなのに。

 テレキネシス的な?


 また魔法がわかんなくなっちゃうよ。

 とりあえず、乗ってみよう。


 Don't think! Feel.ってやつだ。

 「こちらです。」


 ソフィアさんが案内してくれた昇降台の扉は、シャッターのような両開きの扉だ。

 昔見た洋画に出てきたビルのエレベーターのような感じのやつね。


 「ガシャガシャ」

 と、開ける時に割と派手な音がした。


 あ、閉めるときはもっと派手な音だね。

 ソフィアさんと俺以外のメンツは、緊張した面持ちだ。


 機械に乗るなんて、なかなかこの世界ではないことだからね。

 乗るとソフィアさんがレバーを操作する。


 「へー、レバーなんだ。」

 俺は思わず口にしてしまった。


 「レバーって何ですか?」

 相変わらず耳のいいローズが俺に聞いてくる。


 「そのソフィアさんが操作した棒のことだよ。」

 「へぇ、アベル様は何でも知っていますね。」


 ローズがそんなこと言うから、俺は思わず

 「何でもは知らないわ…何でもってわけじゃないさ。」


 「?」

 ローズは俺の答えを聞いて不思議そうな顔をしてる。


 うん、それでいい。

 オタ要素なんてものはスルーが一番だ。


 そんなことを言っている間に、昇降台が動き出した。

 上昇した時の体重が下に引っ張られる感じ。


 これはエレベーターと同じか。

 「シュー」という空気漏れのような音とともに、昇降台は昇り始める。


 まだちょっとしか上がっていないのに、気圧の変化を感じる。

 あっ!風か。


 風の魔法で持ち上げているんだ。

 下りはどうするんだろう?


 風を徐々に弱めて下がる?

 まあ、そんなところなんだろうな。


 おっと、三階に着いたようだ。

 ソフィアさんがまたガチャガチャと扉を開ける。


 「こちらです。」

 そう言って歩き出すソフィアさん。


 え?風が切れたら、昇降台は落ちるんじゃないの?

 どうなっているんだろう?


 俺は不思議に思って、振り返った。

 昇降台はピクリとも動かない。


 「落ちませんよ。」

 後ろからソフィアさんの声がした。


 「昇降台の籠の骨組みとその周りの支柱には、歯車のような籠を停める装置がつけられているんです。ですから、魔法の力が無くなっても停まったままなんですよ。」

 なるほどねぇ。


 ソフィアさんがレバーをガチャコンやっていたのは、階数指定だけじゃなくて、その留め具の取り外しもやっていたんだろう。

 だからこそのレバー操作ってわけね。


 昇降台を降りると、豪華な赤絨毯の敷かれた廊下があった。

 その廊下を、前を歩くソフィアさんについて行く。


 すると、また豪華な観音開きの扉の前に着いた。

 しかしあちこち、豪華が過ぎる。


 まったく。

 コン、コン、とその扉をノックするソフィアさん。


 「おう!」

 という声が聞こえると、おもむろにソフィアさんがドアを開け、


 「お連れしました。」

 そう言ってソフィアさんは、俺たちに中へ入るように促す。

 

 中はダークブラウンの家具で固められ、使用者の身体に合わせたようなデカい執務用の机と、中央に応接セットが置かれている。

 率直に言おう。地味。


 もっと、ギルド長の部屋なんだから、けれんみが有るのだとばかり思っていた。

 とはいうものの、部屋の床には毛足の長い絨毯が敷き詰められているし、家具自体は良い物のようで、重厚感がありギルド長の部屋にはぴったりだ。


 何気に部屋の奥には高級そうな酒瓶が並んだ棚と、バーセットらしきものが置かれている。

 こりゃ、この部屋は地味なくせに、金掛かってんな。


 その部屋の主は、執務机の椅子に座って俺たちを出迎えていた。

 デカい身体が、デカい机に収まっている。


 どうせ移動するんだから、応接セットで待ってりゃいいのにと思ったのは内緒。

 「坊主、よく来たな。今、お前さんが思っていることを当ててやろうか?地味な部屋だなってな。」


 残念、応接セットで待っとけって思ってたんだよ~だ。

 草。


 とは、流石に言わないよ。

 「さすが元百戦錬磨のA級冒険者にして、登録者数2万人を超える冒険者ギルドのギルド長。読心術はお手のものってことですかね。」


 まあ、当たり障りのないことを言っておいた。

 「ふふん、だろう。まあ、ソファに座れ。」






 ギルおじさんは得意げに鼻を鳴らすのだった。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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― 新着の感想 ―
ギルド長、わざわざ3階から玄関まで降りてきて声を掛けてからエレベーターを使わずに階段でまた3階まで駆け上がり、部屋の奥で椅子に座って待ち構えてたのか…涙ぐましい頑張りというか
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