表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/362

47.アベルくんと午後の庭園。

47.アベルくんと午後の庭園。




 ネスと別れてほどなく庭園についた。


 バルコニーのテーブルではアリアンナ母さんが優雅にお茶してる。


 傍で控えているのはマーガレットとエレナだ。


 庭園の花々はそれぞれ季節の花が咲いて、見事なグラデーションを形成している。

 庭師のビル爺さんの手腕だ。

 ドワーフだから見た目はゴツいが、朴訥で気のいい爺さんだ。

 曾祖母ちゃんの頃から働いているって聞いた覚えがある。

 ドワーフも長命なんだね。



 庭園に配置されている木々に、柔らかい陽光が当たり、影を落としている。



 「あら、あなた達も来たの。お茶を飲む?」

 俺達に気が付いた母さんが聞いてくる。


 「僕らはもう頂いたよ。ね、姉さん。」

 「そうね、お茶はさっき子供部屋でおやつと一緒に頂いたわ。ありがとう、母様。」

 ロッティーが母さんに目を向けながら返事をした。


 「そう、アベルはマーガレットたちとおやつを頂いたんでしょう?おしゃべり楽しかった?」

 母さんは楽しそうに微笑みながら俺に聞いてくる。


 「おやつ頂戴って、ジョージとマーガレットに甘えちゃったんだけどね。楽しかったよ、いろんな話をしたんだ。」


 「そう、良かったわね。マーガレット、気を使わせて悪かったわね。ありがとう。」

 「滅相もございません、奥様。アベル様はヴァレンタイン家の宝でございますから。私共も一緒に居れて幸せなのです。」

 マーガレットは言い終えると丁寧なお辞儀をする。


 その横でエレナはニコニコしていた。

 二つ食べたドーナツのことでも思い出しているのだろうか。

 思い出すのはユーリとのデートのことであってくれ。


 「あなた達、三人で何処へいくの?って、図書室よね。あなた達なら聞くだけ野暮だったわ。」

 

 「そうだよ、英雄王ノヴァリスのことを調べに行くのさ。」


 「また、変わった題材を見つけたわね。あまりハンスに迷惑を掛けちゃ駄目よ。」

 母さんはにべもない。


 「そうだね、気を付けるよ、ね、姉さん。」

 俺は当たり障りなく姉さんに振った。


 「分かっているわ、母様。ハンスに迷惑を掛けたことないもの。」

 へっ!?なんですと?


 「嘘おっしゃい、あなた、お城の改善案の資料作りに、ハンスに無理難題押し付けたそうじゃないの。知っているんですよ。」



 「チッ」

 おいこら!ロッティー!



 「シャーロット様!?」ロッティーの舌打ちにマーガレットが目を回す。


 「こら!貴婦人が舌打ちなんてするんじゃないの。アベルに似たのかしら。」

 俺かよ!


 「僕に!?母さんじゃないの?」

 「私は舌打ちなんてしないわよ。淑女ですから。」

 得意げに顎を上げる母さん。


 「左様ですか。さあ、姉さん図書室に行こう。」

 「あら、もう行くの?楽しかったのに。」

 薄目を開け、からかうように母さんは俺を煽る。


 「母さんとの会話は、気が休まらないよ。」

 俺はやれやれという感じで言った。


 「隠し事をしているからよ。」

 この人なにを知っているというのだ?コワイ…


 「アベル、なにか隠しているの?」

 ロッティーが不思議そうに俺に聞く。


 「なにも隠してないさ。母さんは時々こうやってカマをかけるのさ。知っているだろ?」

 内心冷や汗ものだが。


 「あら、私を賭場のディーラーのように言わないでほしいわね。」

 はいはい、もう分かったよ。


 「んもう、ああ、そうだった。母さん、そろそろ魔法を教えてほしいんだ。アンネも一緒にね。」

 今まで空気だったアンネを引き合いに出した。


 「アンネちゃん、魔法を使いたいの?」

 母さんはアンネの顔を見て聞いてる。


 「はい…よろしいでしょうか?」

 「当然よ、あなたは私の娘同然ですもの。マリアさんには私から言っておくわ。だから大丈夫よ、アンネちゃん。それからアベルも。」

 「なんだよ、人をついでみたいに。」

 「ありがとうございます。アリアンナ様。」

 小さくお辞儀をしながらアンネが母さんにお礼を言う。


 「けどアンネちゃん、この中にずるい人間が居てね。もうフライングしているみたいだから、頑張らないと、追いつけないわよ。」

 俺の顔を見ながら、クククと含み笑いをする母さん。


 もう嫌だこの人。


 「アベル、フライングしているの?」

 ほらロッティーまで…


 「いつものカマかけだって。母さん、魔法の修練よろしくね。アンネのこともありがとう。もう行くよ。」

 「わかったわ、アンネちゃん、アベルをちゃんと連れてきてね。アベルも新しい魔法教えてね。ロッティー、二人をよろしくね。」


 俺は脂汗をダラダラ流しているわけだが。


 「アベル様、お顔の色がよろしくないようですが、大丈夫ですか?」

 マーガレットが心配してくれる。ありがとう。

 「ありがとう、平気だよ。じゃあね。」


 「待って、アベル。新しい魔法って?」

 「もう行くよ姉さん。」




 爽やかなはずの木漏れ日の中、俺はフラフラと図書室へ足を運んだ。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

☆の評価ポイントとブックマークで得られる作者の栄養があります。

よろしければ、下にある☆とブックマークをポチっとしていってください。

どうかよろしくお願いします。


この作品を気に入ってくださると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ