5.田中さんの改名。
5.田中さんの改名。
赤ん坊生活も3ヶ月程度が過ぎた。たぶん。
喜ばしいことに、目がいつの間にかハッキリ見えるようになっていた。
スゲーよく見える。
耳もよく聞こえる。
鼻もよく臭いがわかる。お母さんの香りは甘い香りでいい香りだ。
母乳は甘い。みんな甘いのかな?苦い人もいるって聞いたことがあるな。
まあいい。とにかく身体の器官はすこぶる好調だ。
新品の身体はすごいな。
前の身体なんて、偏頭痛はするわ、視力はガタガタだわ、腱鞘炎で手首は痛いわ、中年期に入り身体もボロくなりつつあったんだな。
それと、だいぶ言語の認識力も育ってきたんじゃないか?
というかチートなんじゃないかと思うほど、周りの会話の意味が良く分かる。
赤ちゃんてこんなに言語認識力高いものなの?
恐ろしいなこの子の頭。
どんだけIQ高いんだよ。
それで家族構成も把握できた。
父親はローランド。
なんと辺境伯様だそうだ。なろうの小説で見かけたことはあるぜ。
どんな役割なのかさっぱりだけどな。
偉いのかな?
で、この人の顔がまたカッコいいんだ。
抱き上げられるとちょっと細身なのに、胸なんかちょっとゴツゴツしててね。
細マッチョなんだな。たぶん。
なんかやっているんだろう。剣術とかやってんのかね。
この世界がおもくそファンタジーならやってんだろうな。
しかしこの人の遺伝子がこの身体に宿っていんの?
俺の成長した姿が楽しみだね。
母親はアリアンナ。
安心感の源のお母さん。大好き。美人、超美人。
それなのにちょっとした仕草がスゲー可愛い。
なんなのいったい、なんで俺息子なの?
ガッカリなんですけど。
しかしまあ家族でもなきゃ話すことも出来なかったろうな。
俺、陰キャなキモオタだったし。
そしてこれが悔しいことにローランドとイチャコラするんだ。 子供産んだばかりなんだから自重しなさいよ。まったく。チクショウメー。
でも俺はね、気遣いの人だから。
いたしている最中は邪魔はしないよ。
お腹が空いていても、おしりが気持ち悪くても、気遣いの人だからね、ちょっとは我慢してあげるんだ。
そこら辺の制御はできるようになったんだよ。
でね、終わったあとローランドは必ず「はぁ」ってため息のような呼吸をするんだ。
これが聞こえたら、毎度激しく泣いてあげてるよ。
そしてスッポンポンの二人を慌てさせるんだ。ピロートーク?なにそれ。
そしてね、驚くべきことに小さな姉がいた。
名前はシャーロット。
かわいい、超かわいい。
天使だよ。
大天使。
どうなってんのこの家族。
やっぱり人も血統なんだよ。この家族を見ていると、つくづくそう思うよ。
でもこの子がベビーベッド越しに俺のことを覗き込んでは、何かブツブツしきりに言っているんだ。
天使とか、大天使とか。若いのに信心深いのかな?
わけわかんね。
両親はロッティーと呼んでいるようだ。
ロッティーかわよ。
そして祖父エドワード。
いかつい爺ちゃん。
爺ちゃんつっても歳はそんなに食ってはないみたい。
見た目は渋くてダンディー、かっこいいぜ。マジで。
でも、俺を抱き上げているときは、ニッコニコ。渋さどこ行った。
ローランドはよく似てるね。さすが親子。
でも、爺ちゃんてば、ちょっと顔色悪いんだよな。
たまにゲホゲホやっているし。大丈夫かな?長生きしてくれよ。
でだ、俺の名前はアベルだってさ。
殺されそうな名前だけど、大丈夫か?
そして家名はヴァレンタインと言うそうだ。
まったくもって俺には馴染みのない名詞のはずだったが、自分の名字になってしまうとはな。 なんてこった。
てなわけで、貴族の家に生まれ落ちた。
どんなもんだろう。堅苦しいのかな?堅苦しいのは嫌だな。
前世では一応、人に迷惑かけずに真面目に生きてきたんだけど、これからは悪人になって街を大暴れできるゲームをやっていた時みたいに、ハッチャケちゃおうかな。
いや、いや、いや、いや、無理か、無理だ。
もとが陰キャのキモオタだし、ここは少なくとも現実っぽいしな。
でも二回目の人生だ。後悔するような生き方は出来ん。
前と違って、家族はまともそうだしね。
とにかく細心の注意を払って生きていければいいか。
この子はいろいろポテンシャルありそうだし、油断さえしなければ大丈夫だろう。
うん、それだけだな。
二度目の人生、それで行こう。
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