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36.アベルくんとふたつの学校。

36.アベルくんとふたつの学校。




 「これは父さんにも関係するんだ。冒険者ギルド職員養成学校と城に官僚養成学校を作る。」

 大真面目な顔で二人に言った。


 「なんだい、その養成学校って?」

  ローランド父さんが不思議そうに俺に聞く。


 「騎士学校の職員版だよ。ギルおじさんが言っていた話だと、職員のなり手がかなり少ないみたいだから、子どものうちからギルド職員として育てるんだ。狙い目は貧乏な家の子供たちで、無料で勉強を教えると言って集める。そして、読み書きや算術の後に、ギルド職員としてのルールやモラルをしっかりと教え込む。卒業後にはギルドでの就職を希望するものを採用するっていう仕組みなんだけど。どうかな?まあ一定数は冒険者になっちゃいそうだけどね。」

 草案にもならない提案を、とりあえず言ってみた。



 父さんの方にズイッと身体を乗り出しながら

 「おい、うまくいくと思うか?」

 と、ギルおじさんが父さんに聞く。


 「わからん、アイデアとしては聞く部分が確かにあると思うが.、ふむ…」

 父さんは両手を口で挟み込むようにして俯いた。


 二人とも考え込んで静かな時間が過ぎる。

 俺はその静寂を嫌うように言った。


 「そんなに今の段階で深く考えないでさ、職員の人達や、セイナリアの本部とじっくり相談するのも一つの方法だと思うよ。それとさ、もっと深く子供たちのことを考えると、親がネックになる場合があると思うんだ。子供を金儲けの道具にしか思っていない親も一定数居るからね。そう言う親って子どもの幸せの邪魔をするんだよ。そんな親を持つ子供たちには寮を提供してほしい。親から逃げられるようにね。」


 「ああ、居るよな、そう言う親。自分は飲んだくれてるとかな。しかし坊主そんなことまで考えてんの?大したもんだな、次期領主様は。」とギルおじさんは豪快に笑う。


 まあ毒親は前世で経験済みですからね。あまつさえ、死んだ切っ掛けも毒親のせいだし。許すまじだよ、まったく。


 「茶化すのやめてよ、もう。でも子供たちは未来の納税者だからね。しっかり考えますよ。ギルドについては僕からはここまで。次は父さん、官僚養成学校の話だよ。」


 「うん、官僚養成学校だったかな、一体どういうものだい?」

 と、父さんは俺に問うた。


 「その前に父さんは忙しいよね。」

 俺は父さんの目をじっと見ながら言い始めた。


 「ああ、忙しいね。」

 父さんの目が俯きかける。


「こうしている時間ももどかしいくらいに?」

 俺は追い打ちをかける。


 「言いたくはないけど、もどかしいね。」

 父さんは俯いた。


 「僕はね、その忙しさの原因は今までの仕事のやり方だと思っている。その仕事のやり方を抜本から変えたいんだ。」


 「そんな事できるのかい?それなら大賛成なんだが。」

 はっと顔を上げ、俺を見つめる。


 「父さん早いよ。」

 俺はクックッと思わず笑ってしまった。


 「あ、うん、先走ってしまったね。」

 そう言って恥ずかしそうに薄い苦笑いをする父さん。


 「基本的な話をすると、全部の仕事が父さんに行きすぎなんだ。本来、父さんの仕事は決定権さえあればいいんだよ。ぶっちゃけ、大本の書類作成は文官の仕事だって割り切りが必要なんだ。でも現状だと文官がいくら優秀でも領主の手伝い以上のことは出来ない。そうだよね。」


 「そうだね、書類の草案や格子は僕が考えなくてはならない。その後の取りまとめは文官が手伝ってくれるけどね。」

 「そこでね、そういった事務をする職員を増やしたいんだ。そしてある程度優秀な職員たちに、さっき言ってた草案や格子を作るように命令する。後は出来上がったものを父さんが確認してサインをする。もっとあるけどこういう仕組みを作りたい。けど今の文官の数では足りないんだよ。だから学校を作りたいんだ。」


 「これが出来たら嬉しいね。本当に僕の仕事が減りそうだ。」

 自嘲気味に笑う父さん。


 「僕はね、上申書に埋もれながら唸っている父さんは見たくないんだよ。上申書も職員が分担して優先順位を決められたらって思った。そしたらこの考えが浮かんだ。母さんも、姉さんも領主の仕事をわかっているから口には出さないけどね、僕らは父さんにもっと笑ってほしいんだ。」

 なんだろう、ちょっと泣きそうだ。


 グスグスって鼻をすする音が聞こえるのでそちらを向くと

 「なんだよ~、お前ら良い家族だな~。」

 うわっ、ギルおじさん大泣きしているよ。


 「ああ、そうだね。僕の自慢の家族だよ。アベル、学校の内容はどうするんだい?」

 

 少し光る目尻を拭い、はにかむような笑顔で父さんは俺に聞いた。



ここまで読んでいただき、有難うございます。

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