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354.アベル君と小さいサークル。

354.アベル君と小さいサークル。




 結局、オスカーが夜なべをして一通の文書を書き上げ、それをカレッド伯爵が確認、更にセントクレア宰相が確認、そして王陛下が封蝋を押し、カルー伯爵家へと運ばれることとなった。

 そして当の本人レオは、カレッド伯爵に貴族としての法と秩序を、グスタフさんに、騎士としての規律と精神をコンコンと説かれ、パンクしそうになっていた。


 まあ、パンクしてしまえとしか思えなかったが。

 で、これと言って奴ら個人に何かしら罰を課せられることはなかった。


 むしろ、隔離し、監視を強化するよりも、他の生徒たちとの触れ合いを多くして自分たちと他人との思考の乖離の認識を深めてもらう。

 まあ、無理な話なんだが、人と自分の考えは違うことぐらいは分かってもらう。


 そういう方向へ国の重鎮と王家は舵を取った。


 俺?

 オスカーに俺の考えを言った時点で、あの部屋には用事がなかったから、さっさと出てローズの作った料理に舌鼓をしつつ、イチャイチャしていたよ。


 それが間違いだったと、今思い知らせられているところだがな。

 「たかが魔素溜りに魔素を溜めるだけであろう?それを集まって練習などする必要はあるまい。」


 貴重な俺のイチャイチャタイムを削り、超初心者魔法講座サークルを修練場の隅を借りて俺を中心に始めたところで、レオの野郎が言いやがったところでございます。

 「ウダウダ言うんじゃねぇよ。校長に涙ながらの説教してもらうぞ。」


 俺がそう言うと、レオは若干引きながら

 「いや、ちょっと思ったことを言っただけだ。説教などはいらぬ。」


 などと宣うのでございます。

 ふざけた野郎だぜ。


 ふざけた野郎と言えば、ここに居る面子もほぼふざけている。

 このサークルの発起となった切っ掛けのリザナ、そこに居て自分たちも入りたいと言い出したパオロとフランカ。

 俺を含めた四人だけだったはずが、そういうものを作るのならと、校長とライラ女史の命令でレオが入ることが決まったわけだ。


 そこに、それを聞いていたオスカーが入りたいと言い出し、騎士学団幹部会で話に出したせいで、ジーナとリック先輩も入ることになった。

 あんたら二年生なんだから、もうこのような基礎は不必要だろうと言うと、


 「何年たっても基礎を学ぶことは悪いことではない筈よ。ねぇ、アベル。」

 と、ジーナが俺に張り付き耳元で呟く。


 まあ、そのとおりではございますけど!

 「ヴァレンティアの至宝の授業を受けてみたいではないですか。」


 などと、純朴を絵に描いたようなことをリック先輩が言う。

 北の貴族として、俺とロッティーがどんな歪んだ形でその姿を伝えられたか分からんが、いちいち大げさすぎるのよね。


 「アベルの魔法の一端でも掴めるのならば、私の目的はそれで満足いくものになる。」

 こう語ったのはオスカー。


 もうええわ。

 「空気を読まない奴から茶々が入ったが、基礎の基礎、魔素の吸入練習から行くぞ。リザナ、この中でこれが出来ていないのはお前だけだが、焦ることはない。皆少なからず時間が掛かったはずだ。ゆっくり深呼吸をしながら、魔素を感じ取るんだ。いいな。」


 俺はリザナに対して指導をする。

 「はい、師匠。」


 表情の分かりにくいリザナが答えた。

 俺とリザナは和解している。


 爺ちゃんをリザナが襲ったとき、俺は彼女が立てなくなるほど叩きのめした。

 俺にそうされた原因、そうされても仕方がないことをリザナ自身が百も承知していた。


 だからリザナからの謝罪を俺は受け入れ、現在に至る。

 「はい!吸ってぇー、吐いてぇー。」

 俺はこれを繰り返す。


 そして周りの皆も深呼吸を始める。

 「リザナはそのまま続けて、肺の中に小さな力、暖かさのような物があるかどうか探るのがこの訓練だ。分かったな。見つかったら俺に声を掛けてくれ。」


 「はい、師匠。」

 リザナはそう答え、すぐに深呼吸に戻る。


 「ほら、もう出来ている奴らはサボらないでずっとやる。意識しなくても魔素を随時吸って魔素溜りに送り込む、これが出来て剣士の第一歩だ。」


 「「そんな話は聞いたことがない!!」」

 オスカーとパオロがそろって文句を言ってきた。


 「アホかお前ら、随時身体強化を使っている状態で魔素切れなんて起こしてみろ、深紅の大穴なら死活問題だぞ。」

 「ヴァレンタインは常に行っているのか?」


 レオが聞いてきた。

 珍しいね。


 「まあね、やらないとうちの母さん怖いからなぁ。」

 俺がこう言うと、オスカーが

 

 「お転婆魔法使いはそんなに教育熱心だったのか?あんなに優しそうなのに。」

 などと言う。


 「お前そりゃ、余所行きの顔しか見てないからだよ。オスカーと母さんが会ったのだって王城でだろ?そりゃ猫被るよ。」

 「なるほどな。」


 俺の発言を聞いて、オスカーは頷いた。

 「ヨシ!一番真面目に修練した者に、ヴァレンタイン家直伝の魔素溜り活用法を教えよう。」


 「なに!?」

 「やるわ!」






 俺の言葉を聞いた各々が、深呼吸の速度を上げるのだった。




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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