349.アベル君と強情な白猫。
349.アベル君と強情な白猫。
俺の周り四人もの人間が纏わり付いて歩いている。
「付いてきても面白いことないぞ。」
「ではどこに行くのだ?さっきから聞いておろう?貴様は常にトラブルのもとだ。ちゃんと言わねばやはり付いて行くしかあるまい。」
オスカーが呆れたと言わんばかりの顔をして俺に言った。
「そうよ。言わないアベルが悪いのよ。アベルが行くところって必ず何かあるじゃない?あなたが言わないなら、やっぱり面白いことがあるに違いないわ。」
ジーナがそんなことを言いながら、更に俺の腕に絡みつき自分の胸を押し付ける。
「そうだぞ!アベル!先輩方のおっしゃるとおりだ。お前は頭がいいから、俺たちまで何でも知っていると思っている節がある。ちゃんと大切なことは言葉にすることだ。出ないとこうやって心配して突いてくることになる。」
「パオロ、誰も僕の心配をしてくれなんて頼んでないんだぞ。」
俺のことが心配と言いながら、楽し気に付いてくるパオロに向かって俺は言った。
「でも、やっぱり心配になりますよ。アベル様の事ですもの。絶対何かあります。」
フランカが何かを断定した物言いをする。
そこまでか!
まあ、いいか。
ここで種明かしてか、なんで俺は頑なに話さなかったんだろう?
「誰か、レオを見なかった?」
俺は纏わりつく四人に聞いてみた。
「なんだ、レオに用事だったのか?今朝のことでか?まだ続きをやるつもりか。」
「駄目ですよ!アベル様。レオ様がアベル様を見れば、また刃傷沙汰になるんだから!」
パオロとフランカは今朝の揉め事もあり、レオとは会わせたくないようだ。
「ん?レオとは誰だ?」
オスカーが呟く。
「殿下、私たちの一学年下の生徒ですよ。西の森のカルー家嫡男、人呼んで森の剣星。」
ジーナがレオの概要の説明台詞を言った。
台詞?
「おお、聞いたことがあるな。白い髪の毛の猫の獣人と言う話であったな。そうか、アベル、今朝の騒動と言うのはそのことであったのであろう?だからグスタフまで学校に来たらしいじゃないか。」
「だけどジーナ先輩はよくレオが森の剣星だなんて知っていますね。」
俺はジーナに聞いてみた。
「私だって剣士の端くれよ。国内屈指の剣術の名門くらい知っているわよ。」
「ああ、そう言う事ですか。」
「そうよ。アベルはなんでも私のことを聞いていいのよ。」
「そういうのは良いので。」
「まあ、つれない。でもいいわ。いつかこっちを向かせてやるんだから。」
「ジーナ、そのなんだ、其方がアベルに関心があるのは否定するつもりはないが、昼間からそのように引っ付くような状態は何とかならんのか?」
「あら、殿下。私はもうこの男のモノなんですよ。」
そのジーナの声を聞いて、オスカーはじめ他の二人が目を剥く。
いや、それは絶対に違う。
しかし髪の事もあるから、もう俺から弄るのはよそう。
そうしよう。
などと俺が考えていると、修練場の隅で剣を振る風切り音が聞こえてきた。
「おい、アベル、あれ。」
パオロがその隅を指さした。
やっといたか。
俺たちはそこを目指し歩いて行く。
そして素振りを繰り返していた白い影が俺たちの方を向いた。
レオだ。
「おったな。」
オスカーが呟く。
「なんだ?ヴァレンタイン。今朝の続きをやるのか?」
レオは俺の顔を見ると、手ぬぐいで顔を拭きながらそんなことを言ってきた。
「いや、その件には関係するが、校長がお前を呼んでいる。早く行ってくれ。」
「断る。」
はあ?なぜ?
「校長室にはグスタフ軍務大臣だけではなく、カレッド内務大臣もお待ちだ。わがまま言わず早く行け。」
「だから断る。」
「なんでだよ!」
俺が思わず怒鳴る。
「お前の後に今から行っても、どうせそのお二人ともお前に懐柔されているのだろう?行くだけ無駄だ。」
よく分かってんじゃん。
「そっか。では勝手にしろ。」
俺はそう言って踵を返す。
「レオ・カルー!貴様何もせずに負けるというのか!」
オスカーが叫ぶのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。