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346.アベル君と家と家。

346.アベル君と家と家。




 朝の教室である。

 教室と言っても、現代日本の様な教室ではなく、大学の講堂のような教室だ。

 

 そこに騎士の卵たちが朝から集まり、ガヤガヤと朝の挨拶や雑談に興じていた。

 俺はいつものようにパオロとフランカ二人と、雑談をしていた。


 「お前の魔力は相当だって聞いたが、ありゃ相当どころではなかったな。」

 「ええ、バルド様もゲドさんも大層驚いていらっしゃいました。」


 パオロとフランカは昨日見た黒曜鋼の実験のことを話し始めた。

 「確かに僕の魔力は他の人より多いらしいね。」


 俺はシレっと情報を小出しにする。

 魔素タンク化なんて、皆に広げていいもんでもないしね。


 そんな話をしていると、「ガラリ」と音を立て、と教室の扉が開かれた。

 そこに現れたのは白髪の美少年。


 二つ名を森の剣星、白猫獣人のレオだ。

 教室に入った途端、俺をねめつけ、


 「アベル・ヴァレンタイン、今日こそ決着をつけてやる。」

 そう静かに言った。


 そこには底知れない殺気が漂い、今まで騒がしかった教室が途端に静かになる。

 卵と言っても騎士の修練を積んできたものばかりだ。


 あからさまな殺気は感じ取れる。

 レオは俺のところに来て、


 「今日の放課後修練場に来い。リザナの分まで叩きのめしてやる。」

 そう俺に向かって呟いた。


 「僕もお前に話が有ったんだよ。ヴァレンタイン元辺境伯エドワード。ヴァレンタイン暗殺未遂について。」

 「むっ!」

 

 レオは歯を食いしばり、しかめっ面を見せる。

 「あれはカルー家が差し向けたととっていいのか?それともリザナの独断か?」


 「我が家の総意だはない。しかし打倒ヴァレンタイン家は我が家の家訓だ。」

 「物騒な家訓掲げるなよ。だから臣下が暴走するんだろ?」


 「ぬかせ!もとはと言えば貴様の祖父が悪いんだろう!」

 「ほう、それではうちの爺ちゃんが勝ちを譲らなかったのが悪いと?森の剣星とは勝ちを譲ってもらうのが二つ名を名乗る条件なのかい?」


 「貴様!リザナを傷物にしても飽き足らず、我が家さえも愚弄するか!」

 「僕は事実を述べたまでだ。貴様の家の逆恨みで、僕の祖父はそちらの家臣から命を狙われた。これはまごうことなき事実。カルー家はどう対処する?しかもだ、それでもなお僕はリザナの命は取らなかった。同級生なればだ。そうする?もうこちらの家に係わらないか?それでもリザナを人身御供にでもしてこちらと全面戦争をするか?」


 「ぐッ!」

 俺の問いにれは言葉に詰まる。


 単純な損得勘定で言えばヴァレンタイン領に逆らうのは損だ。

 圧倒的な軍力、圧倒的な財力、王家との繋がり。


 まあ、対抗しようとすれば、汚いパーシー公のケツでも舐めなきゃいかんだろうな。

 それぐらいにカルー家は勝ち間がないはずだ。


 「貴様ら!止めんか!!学び舎で家同士の諍いなどするでない!」

 教室の入り口から、ライラ女史の女性にしては太く、そして色気のある怒声が響いた。


 「レオに絡まれました!」

 俺は即座に言った。


 こういう時は早く言ったもの勝ちなのだ。

 「な、何を言う!貴様が家の問題と話を大きくしたのではないか!」


 「ほれ、小さい子供みたいなことを言っているんじゃない。さっさと席に着け。話が有るなら校長が聞いてくださるだろう。」

 軍務大臣閣下は今日もおいでなのですか?」

 俺は校長=軍務大臣についてライラ女史に聞いた。

 「ああ、今日はお出でになるぞ。なんだ?用事か。」


 ライラ女史の返答に、俺は

 「ええ、さっきの話を軍務省と、あとは内務省かな?を巻き込んでやろうと思いまして。」


 「何を馬鹿なことを!国家の中枢を巻き込むなど!!」

 レオが焦ったように叫ぶ。


 「お前さ、事はもう僕とレオとの決闘じゃすまないんだよ。俺が勝ってもレオが勝ってもさらに遺恨は深まるだろう。そうなったらもう家同士の戦争だ。そうだろ?」

 「しかし!」


 「しかしも案山子もないんだよ。僕とお前、ヴァレンタイン家とカルー家、もうそういうミニマムな問題じゃない。リザナが剣を爺ちゃんに向けた時点でな。」

 「し、しかし!」


 「だから!もうカルー家は元辺境伯!元近衛騎士団長に刃を向けたってことになってるんだよ!」

 「…」


 レオは後の言葉を紡げない。

 だから俺のターン!


 「僕らリザナを生かした。さっき言ったように同級生だからだ。しかし国の裁定が出たらどうだ?おそらく暗殺者として裁かれるだろう。そしたらカルー家はどうする?うちはいつでも聖王国に向けた騎士団を西に向けられるぞ。」


 「アベル・ヴァレンタイン!いつまで言っている!後で校長室に行け!」

 「はーい。」


 「はーいではない!はいだ!」

 「ハイッ!」


 「よろしい、では授業を始めるぞ。レオ・カルーいつまでそこで落ち込んでおる。第一お前、宰相の孫に口でかなうはずがないのだ。剣だけ振っておれ。」




 

 そう言われたレオは、肩を落とし、自分の席に小さく収まるのだった。

 



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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