ローズの回想13
炊事場の奥の使用人用の食堂で、ご飯をいただきました。
ジョージさんが顔を出し
「おう、ちびっこ共!やって来たな。疲れただろ、たくさん食えよ。」
と言って下さいました。
先に食べていた、歳の離れたお姉さんメイド達と挨拶を交わし、お話しながら楽しく夕食を食べることが出来ました。
そしてリサと自分たちの部屋へ向かい、それぞれの部屋の前で別れました。
部屋に入った私は、メイド服を脱いでハンガーにかけるためクローゼットを開けると、見慣れないパジャマと、新しくて清潔な下着が数着入っていました。
ここに持ってきた袋の中の着替えはなくなっていました。
思わず振り返ったベッドの枕元には、小さな犬のぬいぐるみが置いてありました。
そのぬいぐるみを持って、これはどうしたことか聞くために、リサの部屋に向かいました。
ノックを数回して
「リサいる?」
と聞いてみると
「入っていいよ。」
と、リサの声が聞こえました。
私は素早くリサの部屋に入り、今まであったことをリサに聞きました。
そしてリサは
「ああ、それはマーガレット様か持ってきたんだろう。」
私はちょっと混乱しました。
そしたら
「マーガレット様は、ジョージさんが言うとおり、仕事のときは怖いけど、本当に優しい。下着のことはあたしが言ったから、新しいのを用意してくれたんだと思うけど、ぬいぐるみは、マーガレット様の趣味。上手に作る。ローズが淋しくないよう置いていったんだろう。良かったね。」
そうリサは私に言いました。
私はぬいぐるみを抱きしめて、泣いてしまいました。
そして、リサと少しお話してから自分の部屋に帰り、ベッドへ潜り込みました。
目を瞑ると、あっという間に眠ってしまいました。
そんな初日を終えてから、三つ月が経ちました。
この日はアリアンナ奥様のお産が始まりました。
清潔な布をたくさん運んだり、リサと一緒にタライに入ったお湯を運んだり、バタバタ忙しなく動いていると
「オギャー!」
と、赤ちゃんの鳴き声が聞こえてきました。
リサと慌ててお産の部屋に入ると、アリアンナ奥様が小さな赤ん坊を抱いていました。
御領主様、ご隠居様、シャーロットお嬢様が、お集まりになっている中
「ローズ、いらっしゃい。」
とアリアンナ奥様は少しお疲れになったお顔で私をお呼びになります。
私は
「はい。」
と、言ってアリアンナ奥様のそばまで行きました。
「アベル、この娘があなたのお付きのメイドよ、ローズ、この子はアベルよ。よろしく頼むわね。」
アリアンナ奥様は、そう言って赤ちゃんの顔を、私によくお見せ下さいます。
なんて神々しい赤ちゃんなんだろう。見ているだけで胸が一杯になりながら
「アベル様、ローズと申します。誠心誠意お仕え致しますので、これからどうぞよろしくお願致します。」
自然とご挨拶が口から出てきました。
この子に仕え、この子を守っていかなくては。そう強烈な思いが全身を駆け巡るのでした。
回想終わり
「ローズばかりずるい、私もアベルとずっと一緒に居たいわ、あの子は天使のようだもの。」
「クソ、全然見えねぇ、でも、あれだな、覗き込んでいる奴らは日本人じゃねぇな。どこだ、一体。」
これでローズの回想はお終いです。
次回から第二章です。
引き続きよろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただき、有難うございます。
☆の評価ポイントとブックマークで得られる作者の栄養があります。
よろしければ、下にある☆とブックマークをポチっとしていってください。
どうかよろしくお願いします。
この作品を気に入ってくださると幸いです。