344.アベル君と鍛冶屋さん。
予約投稿がされていませんでした。
申し訳ありません。
344.アベル君と鍛冶屋さん。
「俺はバルド騎士団長に懇意にされている鍛冶師のゲドってもんだ。よろしくな、坊主。」
俺を見つめていたドワーフが口を開いた。
登場キャラが多くなったなぁ。
いや違う。
「僕はヴァレンタイン辺境伯が嫡男、アベル・ヴァレンタインと申すものです。よろしくお願いします。鍛冶師のゲドさん。」
俺はキチンと家名までつけて挨拶を行い、お辞儀をした。
その挨拶を聞いたゲドさんの口がわずかに戦慄き、
「ヴァレンタイン辺境伯だと!?一閃の剣の倅か!」
と、大きな声で聞いてきた。
「ええ、そうですよ。そしてこちらが、」
俺が言いかけた途端、ゲドさんが中断させる。
「いや、こちらの方は見たことがある。剣では無敵ではないですか!エドワード様、ご無沙汰しております。」
懐かしげにゲドさんは爺ちゃんに頭を下げた。
「ゲド、覚えてくれていたか。儂がまだ近衛の団長だったころに数回会っただけだったが、嬉しいものよ。」
そう言って爺ちゃんは目を細め、満足げに頷いた。
「ところでなんだい、このすげぇ黒曜鋼の塊は。」
ゲドさんの関心は黒曜鋼に移ったみたいだ。
「僕が持ってきたんですよ。深紅の大穴のドロップなんです。」
俺はそう言って黒曜鋼の出所を示す。
「深紅の大穴だあ?ヴァレンタイン辺境伯領にあるデカいダンジョンのこったろ?坊っちゃんがそこから持ってきたのかい?」
お!坊主から坊っちゃんに格上げした。
「そうですよ。一応冒険者ギルドにも登録していて、D級なんです。」
「ほう、D級な。大したもんだ。流石エドワード様のお孫さんだな。で、そのドロップで黒曜鋼の剣を作りたいって話だな。」
ゲドさんはまだちょっと訝しげだ。
まあ、俺みたいな若造が、おいそれと振れる剣じゃないって思っているんだろう。
「ああ、そうだ。ゲド、面倒見てやってくれんか。」
バルドさんがゲドさんに言った。
「団長の頼みを聞くのはやぶさかじゃねぇが、話を聞くだけじゃなぁ。身体強化通しただけで剣を落としそうななりしていますぜ、この坊っちゃん。」
まあ、まだ成長期だからね、身体的には細く見える。
剣を振る以外の筋肉を付けるのはセーブしているんだ。
でも高校一年生の体つきからすれば、結構大きいと思うんだ。
でも、周りがデカいからな。
爺ちゃんでも百八十センチは下るまい。
父さんも同じくらい。
しかも二人とも鍛え方が違うから、細く見えるんだけど裸になるとその肉体の実戦的な筋肉は凄い。
背中に鬼は見えないけれど、筋肉量の密度は近いように見える。
バルドさんに至っては、二メートル近くあるんではなかろうか。
体重も相当あるように見えるが、その身体を軽々動かしている。
この世界の剣士たちに関しては、別の物理法則が働いているようにしか思えないね。
「そう見えるのも仕方ないですよね。」
俺がそう言うと、バルドさんがすぐ口を開く。
「さっき俺のこの剣に身体強化を通したまま、鐘四分の一は持っていたぞ。」
鐘四分の一とは十五分程度の事だ。
鐘一つが六十分、その四分の一って言い方だ。
まどろっこしいが、こっちではこれが標準。
「それでも身体強化の魔力が少なければ話になりませんぜ?」
まだ穿った目で見てるなぁ。
「アベルの魔力は底なしだぞ。」
ここで口を出したのは爺ちゃんだ。
「底なし?身体強化を半日くらいかけていられて底なしと言えるでしょ。そん奴ぁ、見たことたぁねぇですぜ。」
ゲドさんも疑り深さも半端ないなぁ。
「アベル、どうなんだ?」
爺ちゃんが俺に聞いてくる。
「バルドさんと同じ出力の身体強化なら、一週間は持つかなぁ。僕なりの最大出力なら三日ってとこでしょ。でも魔素はその間、常に吸っているわけで、結構持つかもね。」
「そんなに?嘘だぁ、坊っちゃん冗談も大概にしてくだせぇ。」
「ゲド、アベルの魔法の師はアリアンナだぞ。魔力制御が我々と違う。」
「は!そういや一閃の剣の母ちゃんはお転婆魔法使いでしたね。むぅ。」
ゲドさんは納得のいかない顔をしていたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。