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343.アベル君と爺ちゃんの打ち明け話。

343.アベル君と爺ちゃんの打ち明け話。




 「ある日、儂と剣術の修練の時に、ボーとして居ったアベルにお灸をすえるため、木剣で頭を叩こうとした。」

 爺ちゃんが話し始める。


 そしてバルドさんが、

 「うん。」

 

 と、頷いた。

 みんな興味深そうに爺ちゃんの話に聞き入る。


 「アベルは振り上げた剣に気が付いた。その時点で剣の落下地点を読んで既に避けに入っていたのだ。自慢ではないが、儂の剣の速度は速い。もちろん本気で打ち下ろしたら、木剣と言えどアベルの頭が無事では済まないが、それでも避けられる速さではなかった。それをだ。」


 などと爺ちゃんは言っているが、木剣を振り上げたのに気が付いたので、とっさにブレインブースト発動。

 ゆっくりスローモーションで落ちてくる剣を見ながら、やべぇって思いながら避けただけだ。


 予測したわけじゃないんだ。

 それで、


 「儂はちょっとムッとしてしまった。懲罰を避けるとは何事だと思ってしまい、アベルの頭に剣がうっかり追従してしまった。」

 酷いだろ?


 本気じゃなくても、痛いんだからさ。

 追っかけなくてもいいじゃんね。


 「そしたらなんと、儂の頭上から打ち下ろした木剣を、此奴はさらに素早い動作で自分の剣で受けおった。」

 うん、そうだったね。


 普通だったら、頭に直撃だったんだけど、追従してきたから、こっちもとっさにマッスルブーストを使って爺ちゃんの剣を受けちゃったんだ。

 普通の筋力だったら受けられないよ。


 爺ちゃんの剣に打ち付けられてそのまま自分の剣で頭を打っただろう。

 まあ、それ以前に受けが間に合わないけどね。


 筋力が上がり、スピードも上がる。

 マッスルブーストの恩恵様様ってわけだ。


 「十分速度の乗った儂の剣を五歳そこそこの子供が受けた。アベルには黙っておったが、何か憑き物でも憑いているのではないかと、ローランドとアリアンナに相談したのだ。」

 そこまで話して、何かハッとした爺ちゃんは


 「ゴホンっ!」

 と、わざとらしい咳払いを一つして、


 「ローランドたちに笑われた。」

 と言った。


 一瞬、この部屋に居る全員、レグナート家の執事さんからメイドさん、ローズまでが口を押さえ噴き出すのを我慢していた。

 その間俺は五十キロ以上になったであろう黒曜鋼の剣を支えていたんじゃなかろうか?


 「ローランドたちが言ったのはこうだった。アベルは五歳の頃にここセイナリアに来てから、いろいろトラブルがあって、その時スキルらが目覚めたんだそうだ。な、アベル。」

 「うん、そうだね。切っ掛けと理由は王家のやんごとなき方が絡んでいるから言えないけれど。」


 全身魔素タンクになったのは赤ん坊のころからだが、頭まで魔素が回った完全魔素タンク状態は、呪詛を受けていたオスカーがロッティーを殺そうとしたのが切欠なんて言えないしな。ましてスキルの説明をしてくれたのがトレーサだから、なおのこと言えない。


 「と言うわけでね、あまり僕のスキルに関しては軽々しく他の人に話さないでね。王家が絡むから。」

 実際は切欠がオスカーだけだってことで、あんま絡まないけどさ。


 だが今の俺の言葉で、周りの人間は他の人には話し難くはなるだろう。

 SNSで暴露話しながら、いいねの数で自己肯定感を上げる人間は少なからず居るだろうけど、幸い、ここにはそのようなツールはないしな。


 「うむ。」

 バルドさんが鷹揚に頷き、他の皆もこの件は納得できたようだ。


 その時、数人のメイドさんと執事さんが動いた。

 「旦那様、お着きになられました。」


 「おお、そうか。ではこちらに通してくれ。」

 執事さんがバルドさんに来客を知らせ、バルドさんが承認し、この部屋へ通せと命令したってことは、


 「バルド団長、お呼びにより参上いたしました。」

 執事さんに連れられ入って来たのは、それは、それはテンプレな雰囲気バリバリのドワーフの鍛冶屋さんだった。

 背は低く体形は武骨、顔は髭面、コーデュロイ素材っぽい厚手のシャツに厚い革のゴワゴワオーバーオールと安全靴を思わせる先の膨らんだ革靴。

 ね、言語化しただけでテンプレじゃん。


 「バルドさん、貴重な剣をありがとうございました。」

 俺はバルドさんに剣を返す。


 いつまでも実験しているわけにいかないしね。

 実験するなら、自分の剣が出来た後が楽しそうじゃん。


 「おう、もう感覚が分かったようだしな。」

 バルドさんがこう言うと、


 「団長、この坊っちゃんが話の客ですかい?」

 そう言って鍛冶屋さんが俺を舐めるように見るのだった。





 いやん。


読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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