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342.アベル君と剣の重さ。

342.アベル君と剣の重さ。




 身体強化を通した黒曜鋼の剣を目の前に、俺はバルドさんに話しかけた。

 「見た目は変わらないんですね。」


 いかにも重いものを支えるバルドさんが口を開く。

 「うむ、目立つ剣がなお目立つようになったら、狙われるだけだからな。」


 至極まっとうなお話だ。

 バルドさんは、騎士の戦いそのものを良く知っているんだろうな。


 「しかし、今現在はすごく重くなっている?」

 「うむ、そのとおりだ。アベル坊もやってみるか?」


 身体強化を解いたバルドさんが剣の柄を俺に向けて差し出した。

 俺はその柄をゆっくり掴む。


 「離すぞ?」

 バルドさんが俺に声を掛け、俺はそれに頷く。


 「軽っ!」

 俺は思わず声が出てしまった。


 「で、あろう?」

 バルドさんの口角が右上に歪む。


 「ええ、ビックリです。バルドさんの重そうな剣を持っていた雰囲気そのままで持ち上げたら、羽根の様で驚きました。」

 俺は思ったことをそのまま口に出した。


 「そんなに軽いのか?」

 パオロが興味深そうに聞いてくる。


 「うん、僕のミスリルの剣より軽い。」

 俺は寄宿舎に置いてきた、愛剣を引き合いに出してしまう。


 「身体強化を通しても?」

 俺はバルドさんに聞いた。


 それを聞いたバルドさんは、手を差し出し、どうぞと言わんばかりのジェスチャーをする。

 一気にやると不具合が起きた時に対応できないかもしれない。


 じわじわと、魔力の総量を上げてみよう。

 「では、失礼して。」


 俺は、抹茶の茶碗でも持ち上げるような言い方をしてしまった。

 俺は全身に身体強化を掛ける。


 勿論、剣も含んだ全身だ。

 出力的には五パーセント。


 あ、当たり前だけど出力計なんて、俺の身体についていないからね。

 比喩よ、比喩。


 だいたいこんなもんよねってね。


 おお、重くなった。

 でもこれでは羽根がアルミニウムに変わった程度か。


 さらに魔力を込める。

 十パーセント。


 この時点でミスリルの剣と同等か。

 では、二十パーセントでどうなるか。


 「ずっしり重くなってきた。これで鋼鉄のロングソード一本分くらいかな。」

 俺は声に出す。


 しかしパオロは、

 「さっぱり分からん。」


 つまんなそうに言った。

 「さっき、見た目は変わらないってバルトさんが説明して下さったじゃないか。」


 俺はそんなパオロに言った。

 「それは分かっているさ。でもアベルもしれっとしているからそうもピンと来ん。」


 ああ、さようで。

 とりあえず、パオロのことはスルーして出力を上げていく。

 

 二十パーセントで鋼鉄。

 バルドさんの魔力は俺よりは少ない。

 

 魔力操作自体も失礼な言い方になるが稚拙だ。

 それは仕方がない。


 魔法専門職ではないからな。

 そのバルドさんが身体強化を掛けて、最終的にアダマンチウム程になるという。


 では、俺の出力でどれくらいだ?

 俺は倍の四十パーセントに出力を上げる。


 ぐわっ!おっもっ!

 「むっ!」


 俺は思わず声を洩らす。

 「アベル坊、今どれぐらいだ?」


 そんな俺を見ていたバルドさんは面白そうに聞いてきた。

 「そうですね、鋼鉄のロングソード十本分くらいってところでしょうか。アダマンチウムの剣なんて持ったことが無いので、これくらいしか比喩が出ませんね。」


 俺は軽い声で説明した。

 「むっ!重くないのか?」


 バルドさんが、平然と話をしている俺を訝しんで聞いてきた。

 「重いですよ。スキルを使ったので楽になったんです。」


 俺はさらに魔力を込めながらバルドさんに言った。

 「「なんだそれは!」」


 バルドさんとパオロが俺の言葉を聞き叫ぶ。


 五月蠅いなぁ、そんなんマッスルブーストに決まってんじゃんね。

 って、言っても分からないだろうがな。


 「アベルの固有スキルらしい。」

 そう口を開き、爺ちゃんが皆に話しかけた。


 「此奴は魔法と剣術の両方が使えるようになったときに、更に独自のスキルも習得したようなのだ。儂が知っているのは二つ。一つは、単純な膂力が増え、更に持久力も付くというもの。もう一つは頭の回転が常人の何倍も速くなるものらしい。」





 爺ちゃんは皆に説明を続けるのだった。



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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