表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/365

339.アベル君と子爵夫人。

※子爵夫人の名前を、カトリーヌからカテリーナへ変更しました。

339.アベル君と子爵夫人。




 「しかし学生たちを迎えるなど、何年ぶりだろうな。」

 戦慄していた俺をよそ目にバルドさんは声を張る。


 「うちの子が学校に通っていた以来でしょうから、30年近くなるかもしれませんね。」

 気の強そうなご婦人がバルドさんに声を掛けた。


 そのご婦人に爺ちゃんが話し掛ける。

 「カテリーナ夫人、大勢で押しかけて申し訳ない。」


 「いえ、エドワード様。そんなのはいつもの事ですから構いませんよ。この人が騎士団の若い子達を連れて、ご飯を食べさせるなんてことばかりですからね。」

 カテリーナ夫人と呼ばれた女性はそんなことを爺ちゃんに言った。


 「ふむ、確かに近衛騎士団でも、若い騎士たちを食と酒でもてなすなど、そう言う騎士団間のやり取りは有りますな。」

 「ねえ、そうでしょうとも。ですから、お気遣いなど結構。玄関先もなんですから、我が家にお入りください。」


 そう言ってカテリーナ夫人は俺たちに邸内へ入るよう促した。

 なるほどそうか。


 俺がカテリーナ夫人を気が強そうだと感じたのは、母さんと同じ部類の人だからだ。

 意地悪とか、ヒステリックとかじゃなく、肝っ玉母さん的な気の強さとでもいうのだろうか。


 鋭い目線で、見守ってくれている。

 若者たちの腹が減っていれば、何も言わないでも食事の皿を差し出してくれそうな。


 そんな感じ。

 「あなたがアベル君ね。」


 カテリーナ夫人は俺を鋭い目つきで見ながら声を掛けてきた。

 「はい、はじめまして。僕がローランド・ヴァレンタインの嫡男である、アベルです。以後、よろしくお願いします。」


 「まあ、もうそんな立派なご挨拶をなさるのね。私はバルドの妻、カテリーナよ。よろしくね。ヴァレンティアの至宝さん。」

 そう言って、ちょこんとカーテシーをしてから、優しく微笑んで下さった。


 初めて見た時は身構えそうになったけど、もうね、騎士団長の妻!てのが姿勢から所作から、言葉遣いから現れているよね。


 「あなたはもう子供のころから有名だったし、バルドも教えてくれていたから、会いたかったわ。」

 歩きながら、夫人は俺に話しかける。


 「自分では目立つ行いはやらないよう努めていたはずなんですが。」

 俺は照れ隠しではないがちょっと頭を描いた。


 「いろいろ逸話はお聞きしましたよ。知に長け武にも長け、既に女性も幾人かとか。かなりの早熟な子供だと。」

 言い終えてからフフフと含み笑いする、カトリーナ夫人。


 女関係の噂まで出回っているか。

 そうよな、そうよね。


 そりゃまあ、仕方なし。

 隠しているわけじゃないしね。


 後ろ指刺されるようなこともしていない。

 「何も出来ない、一歩も踏み出さない人たちもいるくらいですもの、アベル君の積極性を見習って貰いたいくらいだわ。」


 「母にはそそっかしいとよく怒られましたが。」

 「アリアンナさんね。それは貴方、A級冒険者から比べられたら、どんな思慮深い子供でもそそっかしい事でしょう。でもその注意のお陰で今の貴方がある。お母様には感謝しておきなさい。」


 そう言いながら歩くカトリーナ夫人は、孫を相手に話をするように目を細めた。

 「そう言って頂けると、母も喜びます。」


 「そうだと私も嬉しいわ。それと、一緒に来たメイドは、あなたとご関係があるのかしら。」

 「そうですね、僕の身内となったものです。」


 「そう、妾ってことかしら?」

 「言葉で表現するなら、それが適当なのでしょうね。僕にはそれ以上の存在ですが。」


 「嫌だ、女の子が聞いたら、飛び上がって喜びそうなセリフね。」

 「そうでしょうか?」


 「アベル君は自己評価低いのかしら?」

 「いえ、決してそのようには思っていませんが。」


 「ならば、俺の女だと、堂々として居なさい。」

 「それはもう、どんと来いです。」


 「うふふ、可愛いわね。さあ、客間よ、皆さんくつろいでくださいね。」





 そう言ってカテリーナ夫人はホステスとしての務めを始めるのだった。

 

 



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ