336.アベル君と敵討ち!?
336.アベル君と敵討ち!?
リザナはひょっとして、このために俺に近づいた?
どうでもいいが、とりあえず止めておけよ。
なんて甘いことを考えたんだが、リザナは柄に手を掛けた。
俺は素早くリザナに近付き、力の容赦なく平手打ちをした。
全力のスピードを出すために、身体強化とマッスルブースト二段掛け。
それでの平手打ちなので、以前南の馬鹿貴族のルーカと同じように、リザナは壁まで吹っ飛んだ。
そして壁からバウンドし、床に転がったリザナに俺は怒鳴った。
「リザナ!何をするのか!!」
リザードマンはヒューマンほどやわくない。
全身を固い鱗が覆っているし、俺が平手打ちした箇所も頬の鱗の上だ。
その実、ルーカは骨折して立ち上がることなどできなかったが、リザナはふらつきながらも立ち上がった。
「師匠!どいていただきたい!エドワード・ヴァレンタインを目の前に、引き下がることなど私には出来ぬ。」
大きい口の端から血を流しながら、ピーチク鳴きやがるトカゲ女。
「アホか!今の僕のスピードについてこられないお前が爺ちゃんに敵うわけなかろう!どうしてもやりたいなら、まず僕を押し通せ!!」
俺がそう言った途端、フッ!っとリザナの姿が消えたように見えた。
早い。
身体強化もかけられないのに、リザードマンてスピードも兼ね備えているの?
だが、ふらついたリザナなんて、深紅の大穴を跋扈する虫共よりも遅いんだよ。
俺の脇を通り過ぎようとしたリザナの、さっき打った逆の頬を思いきり平手で打った。
そして、逆の壁まで吹っ飛ばされる。
それをパオロとフランカは驚いた顔で見ていた。
そっか、俺が身体強化とマッスルブースト掛けた姿なんて見せたことが無かったもんな。
俺は壁に体を預け、立ち上がれないままでいるリザナのもとへ行った。
「押し通れなかったな。今回のことはカルー家の総意と見て良いな?」
「い、いえ、私の独断で、御館様や若旦那様は無関係で…」
「いや、お前は明確に仇と言った。明日、俺はレオに、いや森の剣星に正式なクレームを入れる。」
「師匠!それはお慈悲を!」
「人の命を狙うものが慈悲など請うな。」
俺は冷たく言い放ち、まだ俺にすがろうとするリザナを酸素魔法で窒息させ、無力化した。
「アーサー。」
俺はアーサーを呼ぶ。
「はい、坊っちゃん。」
アーサーはすぐに俺の側へやって来た。
「こいつを治療院へ運んでやって、治療してから学校へ送り届けてやってくれ。しばらくは無茶やっても起きないと思うから。」
「はい、畏まりました。」
そう言うが早いか、アーサーはリザナを抱え、玄関に向かった。
そして俺は重い気持ちを抱え、爺ちゃんのもとへ行く。
俺は爺ちゃんの前で膝をつき頭を垂れ、口を開いた。
「賊を我が弟子と称し、屋敷内に入れたこと、万死に値します。如何様な罰でも享受いたしますので、何なりと申しつけ下さい。」
俺はたぶん暗い声で言った。
その遠く後ろですすり泣く声が聞こえる。
ローズだ。
でも彼女はシャシャリ出ない。
出ても仕方ないことが分かっているから。
出たら、更に俺の立場を悪くするのが分かっているから。
すると、爺ちゃんの声が聞こえた。
「儂は既に隠居。十分とは言えんが、若いお主等からすればもう老いぼれよ。その身体が狙われようとて、誰が我が家の後継者に罰を与えるというのだ。しかも、アベルお前は既に自分で罰を与えておる。床を見よ。」
そう言われ、俺は床を見た。
そこには俺の眼から零れ落ちた涙の痕が落ちていた。
「それで十分だ、アベル。ほら、もう行こう。バルドが待っておるぞ。」
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本作は長編となっています。
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