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ローズの回想12

 「シャーロットは居るかい?」


 そう言って扉が開きました。


 「父様、ここにいるわ。」


 そうシャーロットお嬢様は声の人に呼びかけます。


 リサは私の手を引っ張って壁まで下がりました。


 私はよくわかりませんでしたが、リサの真似をして姿勢を正し控えるようにします。


 入ってきた人は光沢のある白いシャツに刺繍がふんだんに施されているベストを着て、革のパンツをはいていました。


 ちょっと見えただけですが、カッコいいなぁと思いました。


 「いたいた、また本を読んでいたのかい?」


 シャーロットお嬢様に、父様と呼ばれた人は尋ねます。


 「いいえ、父様。リサとローズとでお話をしていたの。あ、そうね、ローズこちらに来て。」


 呼ばれてあたしはシャーロットお嬢様のそばまで行きます。


 「父様、今日メイドとして雇用され、私のお付きとなったローズです。ローズ、こちらが私の父様。ローランド・ヴァレンタイン辺境伯閣下よ。ご挨拶を。」


 私はいきなりのことで



 「ヒッ!」



 となりましたが、何とか持ち直し


 「今日からこのお城でメイドとしてお世話になることとなりました、ローズと言います。オオカミの獣人で4歳です。よろしくお願いたします、御領主様。」


 と挨拶すると、御領主様は


 「いやぁ、4歳にしては立派な挨拶をするなぁ。」


 とおっしゃり、続いて大きな咳払いをオホンとしたかと思ったら


 「私が辺境伯のローランド・ヴァレンタインだ。よろしく頼む。」


 と、ご挨拶して頂きました。


 「ネスが連れてきた子が君だね。よく出来た子だからと聞いていたが、いやはや大したものだ。」

 と、御領主様は続けておっしゃいました。


 そしたら、なぜかシャーロットお嬢様がムフーッて感じで笑い出し


 「そうでしょ、ローズは優しいし頭が良いの。きっとこれから仲良くなれると思うの。」


 とおっしゃって私はビックリしましたが


 「そうか、シャーロットがそこまで言うのなら間違いないだろうね。シャーロットと仲良くしておくれ、ローズ。」


 そう言って私の頭をなでてくださいました。


 御領主様は、すごく嬉しそうにしばらく子供部屋でシャーロとお嬢様と談笑されていましたが、ヨハン様がこちらにおいでになり


 「公務にお戻り下さい。」


 と言われ、御領主様は連れて行かれました。


 遠くの廊下から



 「シャーーロッートーーー!」



 と叫ぶ声が聞こえたような気がしました。


  シャーロットお嬢様は


 「ふぅ。」


 と小さなため息を付くと


 「父様はしかたないはね。」


 と一言。


 そして


 「たまに仕事を自主的にお休みになるの。ヨハンに見つかるまでだけど。」


 とシャーロットお嬢様はおっしゃいます。


  「大変なお仕事なんでしょうね。」


 と私が聞くと


 「そうね、領地経営は掃除するほど簡単ではないでしょうね。でもね、貴族として、領主として産まれてきたものは、背負わなければならない重荷なのよ。ヴァレンタイン領の人々、ローズたちの家族の生活もかかっているのですもの。逃げ出せないわ。」


 シャーロット様は私にはちょっと難しい言葉を使ってお話しくださいます。


 「ローズのお父様が、父様が下々にも仕事を回すって言っていたでしょ。」


 と、シャーロとお嬢様がお聞きになったので


 「はい、そう言いました。」


 と、私は答えます。


 「そうやってあなたのお父様が稼いだお金を、あなたのご両親は街で買い物する。ご両親に物を売った商店は、また新しく物を仕入れ、その買値を売上から引いたお金が、お店の儲けになるわ。その儲けから少しばかり、領主に税金として払う。そうやって貯まった税を色んな仕事として商業ギルドに下ろし、また工事などの仕事をする。こうやってヴァレンティアの街のお金は、回っているのよ。わかったかしら?」


  私は


 「うーん・・・」


 と、難しくて頭を捻るばかりでした。


 「すぐには理解できないわよね。でも領主から街に出たお金は、色んな人の手にわたり、また領主に戻ってくるってことなの。金は天下の回りもの、とはよく言ったものよね。」


 とシャーロット様がおっしゃり、薄っすらですがわかったような気がしました。


 「お金を使うにも損をしちゃいけないから、算術は重要よ。まずは読み書きが先になるでしょうけど、後で一緒に勉強しましょうね。」


 とシャーロットお嬢様は、おっしゃり私に微笑んでくれます。


 私は


 「はい。」


 と、返事をしました。


 そんな話をしていると、


 「失礼いたします。」


 とマーガレット様が入ってきました。


 「お嬢様、夕食のお時間です。皆様お集まりしていらっしゃいますので、どうぞお急ぎ下さい。」


 と、おっしゃいました。


 「ローズ達とお話しているのが、楽しくて時間を忘れてしまったのだわ。マーガレット、行きましょう。」


 と、シャーロとお嬢様がおっしゃいます。


 「リサ、ローズも今日はお疲れさまでした。あなた達も夕食を食べに行きなさい。その後は寝るまで自由時間ですからね。」


 と、マーガレット様がおっしゃいました。


 「リサ、ローズ、また明日ね。マーガレット、行きましょう。」


 そうシャーロット様はおっしゃり、マーガレット様を伴い食堂へと向かいました。


 「今日はたくさん動いた。ローズ、疲れてない?」


 と、リサが私に聞きます。


 「なんだか、疲れているのか疲れていないのか、フワフワした感じでわからない。」


 そう私が言うと


 「緊張しっぱなしだったから、今夜はよく寝るといい。とにかく炊事場に行こう。」


 と、リサは言いました。


 「炊事場に何があるの?」


 と私が聞くと、リサは「炊事場の奥が、使用人の食堂になっている。早く行こう。」


 そう言って私の手を取り、炊事場に向かって歩き始めました。


ここまで読んでいただき、有難うございます。

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