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333.アベル君と放課後の予定。

333.アベル君と放課後の予定。




 「それで、いつから始めるんだ?」

 パオロが俺に聞いてくる。


 何を?

 とは言えんが、


 「明後日かな。」

 と、俺は答えた。


 「何故です!師匠!今日ではないのですか!?」

 無表情なトカゲ顔が俺ににじり寄ってくる。


 と言っても、リザードマンにもちゃんと表情筋はあるらしく、喜怒哀楽もちゃんと注意深く見れば読み取れるらしい。

 「まあ、家庭の事情だな。」


 俺がこう言うと、パオロとフランカは、「あっ!」って顔をする。

 気が付くのが遅すぎ。


 「師匠も寄宿舎に住んでおられるのに、家庭の事情とは面妖な!」

 唯一事態を理解できないリザナが更に俺に詰め寄る。


 そこでフランカがリザナを読んだ。

 「リザナさん、ちょっと。」


 そう言ってそそくさと二人は席を離れた。

 そうそう、ちゃんと気遣ってくれなきゃ困るんだよ。


 ローズがやらせてくれなくなったらどうするんだっての。

 これはちょっと表現が下品ですね、失礼。


 共同作業が出来なくなったら、どう責任を取るのかと。

 まあ、俺とローズの絆はそれくらいでは離れぬものだがな!


 「あべる、ところで明日はなんでダメなんだ?」

 急にパオロが俺の思考に割り込んでくる。

 

 「明日、爺ちゃんと出かけるんだよ。」

 「剣では無敵とか!差し支えなければ何処に行くか聞いてみたいが。」


 「そんな秘密にしている事じゃないからいいよ。セイナリア騎士団長のバルドさんの所へ行くんだよ。」

 「セイナリア騎士団長だと!知り合いなのか?」


 「爺ちゃんの古からの友人なんだ。市の騎士団長、近衛騎士団長で剣の腕を競っていたらしいよ。

 「やはり、アベルの家は凄いな。まあ、アベル自体が王家と懇意になっているからな。普通なら、俺はお前に話しかけも出来んのかもしれない間柄なんだな。なあ、アベル様。」


 「お前が敬称を付けるな。気持ち悪い。」

 俺がこう言うと、


 「気持ち悪いは酷いな。分かってるよ、アベル。で、どんな用事なんだ?」

 ぐいぐい来るな。


 「実は僕の剣を作る算段なんだよ。ちょっと変わった鉱石をダンジョン見つけてさ、その鉱石の剣をバルドさんが使っていて鍛冶屋さんを紹介してもらうことになっているんだ。」

 「へー、アベルの剣か。お前、ミスリルの剣を持っていなかったか?」


 「あれは十歳の頃、ダンジョンへ初めて入る記念で家族から頂いたんだ。十歳でも振れるように作ってあるから、普通のロングソードより短いんだよね。だからこの際、新調しようかと思ってさ。」

 

 「なるほどな。どんな剣になるか見てみたいものだ。」

 「明日一緒にバルドさんの所に行くかい?」


 「なに!本当か!エドワード様とバルド様に会えるなど、騎士を目指すものの誉れ!ぜひお願いしたい!」

 「いいよ、爺ちゃんももうすぐ帰るからいい機会だしね。パオロの家のことも爺ちゃんは知っていたからね。会わせたいとは思ってたんだ。」


 「是非!是非にお願いしたい!!」

 と、パオロは大興奮。


 そこへフランカとリザナが帰ってきた。

 「何の騒ぎです?」


 フランカが興奮気味のパオロにやや引きながら俺に聞いてきた。

 「アベルがエドワード様と、セイナリア騎士団長のバルド様にお会いさせてくれると申し出てくれたのだ。これほど嬉しいことが有ろうものか!」


 パオロは涙を流しそうなほど感激していた。

 まあ、自分の身内が各所の子供たちにアイドル化されているとは知っていたけど、目の当たりにすると引くな。


 「どうせなら君らも行くかい?一人増えようが、三人に増えようが乗る馬車は一台だ。構わんだろう。」

 俺が女性らにそう言うと、


 「私たちの様な下々の者がお会いしてよろしいのでしょうか?」

 そう言って、フランカは遠慮する。


 「なるほどね。なに、こう考えればいいじゃないか。学友のお爺さんとそのお友達に会うことになった。会うのはあくまで僕の爺ちゃんとその知り合い。それだけさ。」

 「で、でも、恐れ多くて。」


 「今更何言ってんだよ。騎士学団でオスカーともやり取りしているじゃないか。慣れだ、慣れ。騎士になれば否が応でも上の人達と触れ合う機会がある。そういうものだと思えるようにならなきゃね。」


 「そうですか?そうですね。分かりました。アベル様のご厚意に便乗させていただきます。」

 フランカはそう言い切ると、大輪の花のような笑顔を見せた。


 吹っ切れたか。

 良い傾向だね。


 などと考えていたら、

 「師匠のお爺様に会わせて頂けるのか?」


 と、リザナが聞いてくる。

 「うん、明後日ね。」


 「そうか、それはとても嬉しい。ところで、師匠。」

 「師匠は止めてもらいたいんだが、何?」


 「さっきは済まなかった。ヒューマンは盛りの時期がないのだな。」

 「へ?何のこと?」


 「盛りの時期が無いとは、毎日が盛りのような日々なのだな。フランカに聞いた分かったぞ。」

 俺は、ん゛って感じでフランカを睨みつけた。


 フランカは自身の胸の前で両手を左右に振りながら、頭も「違う、違う」と言いたそうに左右に振る。

 「盛りの時期じゃない今日も、ご内儀と密に過ごしたい。そうフランカに教えてもらったのだ。」


 間違ってはない!間違ってはないが、表現が露骨すぎやしませんか?

 「僕は君の種族に疎いから、失礼な言い様になるなら先に謝っておくね。」


 俺は先にリザナにエクスキューズを送り、フランカをキッ!と睨む。

 その俺を見たフランカは、叱られた子猫の様に首をすくめた。


 「ヒューマンは繁殖期がなく、毎日が繁殖期であるというのはあながち間違いではない。やろうと思えば時と場所を選ぶことなく、その君が言った密な行動をとることが可能だ。」

 俺がそこまで言うと、リザナは無表情なトカゲの顔を一回頷かせた。


 「うん、だが、僕らヒューマンとそれに近しい種族は、君らの種族と同じく羞恥心やモラルがあるので、そこかしこではそのような行動はとらない。勿論例外者はいるけれどね。」


 そして、またリザナは一回頷いた。

 「だからこそ、その密な関係を結べる時間は貴重なんだ。そういう時は、二人きりで居たい。僕らの種族はそう思うし、そう行動するのさ。分かったかい?」


 「はい、わかりました。師匠。では、ご内儀との貴重な時間をこれから過ごすのだな。」

 「う、うん、ま、まあね。」







 いちいち言語化しないで頂きたい!!





読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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