332.アベル君とリザードマン(メス)
332.アベル君とリザードマン(メス)
俺は声の方へ頭をめぐらせると、そこには屈強なリザードマンが立っていた。
説明しよう!
リザードマンとは読んで字の如く、大型のトカゲであり、よく似ているのがコモドオオトカゲなんだが、身体がヒューマノイド化し、二足歩行を行う種族だ。
胸部と腹部、関節部以外が固い鱗で覆われており、また、筋力も強い。
その外見から、知能も低そうに見られがちだが、その実そんなこともなく、ヒューマンと変わらぬ知性を持っている。
外見はヒューマノイドだが、卵生なので色んな種族と交わるのに禁忌がないヒューマンが、唯一交われない種族となっている。
え!?そこまで聞いていない?
種族間の理解として、こういうのは大事よ?
「えっと、リザナさんだっけ?魔素を感じられないって認識でいい?」
彼女とは初めて会話するが、彼女は外見で、俺は悪目立ちでクラスでも目立つので、名前くらいは知っている。
外見でリザードマンは残念ながら男女の区別がつきにくい。
胸部装甲も皆無だしね。
ただ、シルエットはヒューマンの女性と同じように柔らかい。
そして、女性は頭部に羽飾りをしている。
これはリザードマンの伝統なんだそうだ。
赤い羽根飾りが独身、青い羽根飾りが既婚者なんだってさ。
現代日本人の結婚指輪だと思えばいいんじゃないかな?
「そうだ、ワタシは未だ魔素を感じられない。固い鱗に覆われているが、身体強化を使ったヒューマンたちには太刀打ちし辛い。こちらも魔法で強化しなければな。」
そう言って小鳥が鳴くような高い声で話す。
そう、リザードマンのもう一つの特徴がその声だ。
まさに小鳥の鳴き声。
男女共にだ。
屈強な見た目と相まって笑ってしまいそうになるが、それはさすがに失礼だから皆控える。
そして大きな口のせいで、少々空気が漏れて聴きづらい。
それもまた致し方なしだ。
それと更に補足。
この世界のヒューマノイドたち(ヒューマン、獣人、エルフそしてリザードマン等)はもれなく魔素溜りが体内に存在し、それを介して魔法を使う。
エルフの精霊魔法だけは魔法の成り立ちと使い方が違うので、魔素の使い方も違うけどね。
「リザナさんも僕らと同じ十五歳だよね。」
俺がそう問うと、
「うむ、年齢は種族間の差異はないな。」
リザナはそう返してくる。
「いや、失礼。別に悪意はないんだ。確認だけでね。」
「うむ、わかっている。アベル様は聡明でおられるからな。」
「ありがとう。年齢は魔素を感知するのに重要な問題なんだ。若ければ若いほど感知しやすいと言われている。だから一般的な貴族の家では早くて三歳、遅くても五歳から魔法の家庭教師を迎い入れる。それくらいシビアだ。僕らはもう十五歳。ギリギリと言っていいかもしれないんだよ。」
「むっ、そうだったのか。しかし、魔法使いの家庭教師など、迎え入れようもないからな。主に経済的理由で。」
そう言ったリザナの眼球がくるりと回る。
器用だな。
カメレオンのようだ。
「家庭の事情は人それぞれだから、仕方ないとして、僕が教えてあげてもいい。でも一つ条件がある。」
俺はそのリザナの目を見ながら言った。
感情の見えない表情のリザナが、その言葉を聞いて口を開く。
「うむ、何だろう?その条件とは。」
「出来なかったときにスッパリ魔法をあきらめてもらう。引きずらないことさ。」
「そのような事か。問題ない。こう見えて諦めはいい方だ。」
そう小鳥の鳴き声で話すリザナ。
どう見えてだよ。
でもその姿勢は良い。
とても好ましいものだ。
「わかった。微力ながら協力させてもらうよ。」
俺は彼女に右手を差し出した。
「ありがとう!アベル師匠!!」
そう言った彼女は、俺が差し出した右手を両手で包みブンブンと振り上げる。
「師匠は止めて!その手もやめて!」
俺は上下に振られる腕をなすがままにされるほかなかった。
「アベル、俺も一緒に習わせてくれないか?」
俺の隣で聞いていたパオロがそんなことを言いだす。
そのパオロに俺は、
「お前身体強化使えるだろう?」
「もちろん、使えるんだが、お前にまた習えば新しい発見があるんじゃないかと思ってな。な、いいだろう?」
などと、パオロは新しいおもちゃを見つけた子供の様なキラキラした目で俺に訴えかけてくる。
「なら私も!」
そう言って元気よく手を上げるフランカ。
俺は出来るだけ早く帰って、ローズといちゃつきたいのだ。
孔雀期なのだよ?君たち分かってる?
「おお、同輩が出来るのは心強い。師匠良いではありませんか。」
小鳥もピーチク鳴き始める。
しょうがねぇなぁ。
「わあったよ。まとめて面倒見てやらぁ!」
俺が投げやりにこう言うと、周りの三人は
「おー!」
と、拳を突き上げるのだった。
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本作は長編となっています。
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