331.アベル君と友人と。
331.アベル君と友人と。
昨日はひどい目に遭った。
アンネが友達に合わせたいって話だけで、サブイボが立つほどに嫌な予感があったのだが、まさにその予感は正解だった。
この世界って、こんなに女性の方が積極的に求婚してくる倫理観の世界だっけ?
俺は満足げに眠るローズに腕枕しながら策や考えていたさ。
何にローズは満足したのか?
それは各々考えてほしい。
先生は答えを言いませんからね。
想像力は国語にとって一番大事な感性です。
どこの国の言葉か知らんが。
まあ、いい。
今、俺は教室に居て、パオロと一緒に駄弁っているわけだ。
「魔法の授業で平民出の連中が困り果てているらしい。」
そんなことをパオロが言った。
「幼少期に魔素を感じる練習をしてこなかったってことかな?」
俺がそう言うと、
「然り!」
と、古臭い言葉をパオロが使った。
これは母さんが昔から問題視していたことだ。
貴族は、必ず魔法使いの家庭教師を子供たちが小さいころに向かい入れる。
空気中に漂う魔素を感じるという、魔法の基礎を学ばせるためだ。
もちろん親がそれをできるなら、やってもいい。
ただし恐ろしく感覚的なものなので、親子間、家族間などで不和を生じやすい。
「なんで俺の息子なのにこんな事も出来んのだ!」とかってやつだ。
これが金銭授受を生じる他人なら粘り強く教えることができる。
諦めたらお金にならないからね。
だからこその家庭教師ってわけだ。
うちの場合はさ、そんな人たちが裸足で逃げだす人が母親だったから必要なかったんだ。
てか、母さんは魔法に関しては真摯で怖かったけど、教えるのはうまかったからね。
まあ、ロッティーも俺も才能があったことは間違いではない。
教えられたその日に魔素を感じ、魔素溜りに魔素を溜めこむまでできる人間はごく限られているらしいから。
「流石、お転婆魔法使いの倅は理解が早いな。」
パオロお前、アラフォーの俺の母親の前でその二つ名を言えんのかって。
俺は揶揄ってなら言える。
後でどうなるかは知らんが。
「昔、母さんが教えてくれたよ。市井から来た子はこれで必ず躓くって。」
俺がそう言うと、
「なるほどな。」
と、パオロは深く頷いた。
そこへ、フランカがやって来て、
「お二人とも、何のお話をしていらっしゃるのです?」
と、聞いてきた。
俺たち二人は、今話したことをフランカに言った。
「なるほど、確かにそうですね。私は身近に魔法使いの人が居たので、恵まれていました。」
「へえ、そうなんだ。ちなみにどんな人だったの?」
俺は、ちょっと興味がわいたので聞いたみた。
すると、ちょっとフランカは躊躇したが
「お母さんです。」
と、答えた。
なんと!フランカの母親は魔法使いだったのか。
「アベル様のお母様とは比べものになりませんが。」
「自分の母親をそのように卑下するものではあるまい。そのおかげでフランカ自身も魔素を感じることが出来たのであろう?」
そう言って、パオロがフランカを諭す。
「パオロ様、ありがとうございます。そんな言葉を聴いたら、涙を流して母は喜ぶと思います。」
そう言うフランカの目にも、涙がにじんでいた。
パオロめ、なかなかやりおるわい。
はっはっは。
「い、いや、率直に思ったことを言ったまでだ。深い意味はないのだ、勘繰るなよアベル!」
今まで無関係だった俺をけん制してどうする。
なお今の動揺がバレるってなもんだぞ、パオロ君。
君も一緒に娼館へ行って、いろいろ卒業するかい?
そうだね、今度連れて行こう、そうしよう。
「ライラ先生の授業は、魔素溜まりどころか昇華が出来る状態を前提に授業しているからね、そう言う生徒達には辛いかもしれないな。」
俺がそう言うと、
「アベル、お前が教えてやればいいのではないのか?」
そんなことをパオロが普通に言ってくる。
「アホか!人にものを教えるということを、そんな軽々しく言うな。教える方にはそれ相応の責任が生じるものだ。言うほど簡単なものではない。パオロ、俺の爺ちゃんの前で、十歳程度の子供に剣術を教えることが出来るか?」
「い、いや、エドワード様の前で子供に剣術を教えるなど俺には出来ん。俺が人に剣術を教えること自体がおこがましいことだ。うむ、なるほど。置き換えてみれば軽率な言葉だったな。済まなかったアベル。」
パオロ君は言えば分かる子なので、きちっと諭せば納得してくれるのだ。
「構わないさ。分かってくれればいい。」
俺はそう言って、パオロに笑って見せた。
それを見て、なぜかフランカが赤面したが、同人誌でも書くつもりじゃないだろうな。
俺はナマモノ本反対派だぞ。
そんな俺たちの前に人影が立った。
「そこを曲げて、ご教示願えないだろうか?」
座って駄弁っていた俺たちの頭の上に、そんな声が響いたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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