330.アベル君と一日の終わり。
330.アベル君と一日の終わり。
『『はぁ!?』』
善処すると言われ、脳内で俺とアンネの呆れた声が響く。
『だってなんだか嫌じゃない。この場を収集させるために言われたみたいでさ』
カミラが脳内に話しかけてくる。
『そう言う風にとったのか。割と考えた答えだったんだがな。ならこの話は無しで。』
俺が言うと、
『いやいやいやいや』
と、何故かカミラが焦り始める。
『なら私がアベル様のお嫁さんになります。』
「ブホッ!」
思わずリアルで吹いてしまったわ!
なんぞアンネッ!
悪いモンでも食った!?
しかもまだロッティーが抱き着いたままだった。
吹いた息がロッティーの栗毛を巻き上げる。
「いやだ!何アベル!?」
「姉さんゴメン、姉さんを抱きとめていた時なぜか息を止めていたから。」
などと、自分でも訳が分からん言い訳をしてしまう。
「あら、そう?ちゃんと呼吸はしなければダメだわ。たとえ姉がいい香りだとしてもね。」
ロッティーの自己肯定感が高めな部分が作用してなぜか救われる。
そんなロッティーはとりあえず置いておいて、
『アンネ、さっきからどうした?悪ふざけが過ぎるよ?』
脳内でカミラ経由でアンネに話しかける。
便利な通信機器が手に入ったな。
『もう我慢しないことにしたんです。ローズちゃんもそうしたように。トレーサ様も実際に行動したように。私も動かないと大事な人の隣に居られないじゃないですか。赤ちゃんの時から、アベル様の隣は私の指定だったんですよ?』
アンネそれでいいのか!?
幼馴染ポジは負けヒロイン指定席だぞ!
とりあえず、アンネを諭しておこう。
『これ以上内縁の妻を増やすつもりはないんだけどなぁ。』
『ずっと守ってくれるって言ってくれたじゃないですか。聖女の騎士様。』
うわ、三歳の頃に父さんにそう言われて揶揄われたっけ。
『忘れたつもりはなかったけど、今それを言われるとは思わなかったよ。』
『目立たなかったけど、私も重要ポジションなんですよ。』
そう脳内でアンネが言って、不敵に笑う。
『もとはと言えば、そこで寝たふりしている奴が一番悪いんだけどな。』
そう言うと、ベッドで狸寝入りしていたカミラが薄目を開けて俺を見る。
『なによ、私があの時顕現したお陰で、あんたもアンネも色んな能力持ってんじゃないの。今更文句言わないでよね。』
とりあえずもう疲れたからそろそろ解散かな。
『トレーサ、とりあえず買えるけど、お前そのまま狸寝入りしとけ。ややこしくなるから。』
『了解!』
そう言って、カミラはシーツを顔に掛けなおす。
『アンネもその話はまた今度な。大事な話だ。今日の短い時間で決まめるわけにはいかないからさ。』
俺がそう脳内会話すると、
『分かっています。でも私は随分前から考えていたんですよ。気付いていたんでしょう?』
そう言って、アンネはまた悪戯気な顔を見せた。
『気づいて居たさ。だから慎重だっただろ?よし、ここまでだ。』
俺はそう脳内会話を切り上げ、
「姉さん、そろそろ帰るよ。遅くなったからね。」
そう言ってロッティーの耳元で言った。
そう言えばいつまでこの人は抱き着いているつもりだ?
「もう帰っちゃうの?」
何その返事?
この人は三歳児まで後退したのではあるまいな。
カミラが随分刺激を与えたからな。
「帰るよ。明日学校だし。姉さんたちもだろ?はい、離れて。」
俺は半ば強引にロッティーを引っぺがす。
「もう!」
急に話されたロッティーはふくれっ面で俺を睨みつけた。
血を分けた姉弟じゃなかったら間違いなくこの人が正室だよ。
この世界に来て初めて心惹かれたのは母さんだけどね。
そう、田中信一郎はアリアンナ・ヴァレンタインに惚れていましたよ。
でも、母さんだからね。
俺、アブノーマルは同人誌までって決めているんだ。
だから、ロッティーとも無理。
「カミラさんは本当に体が弱かったそうだから、もう騒がないでこのままに。わかった?姉さん。」
「分かったわ。もう口論なんてしないわよ。眠っているようだし。この子も本当に心臓強いわね。」
ロッティーは呆れた声で呟く。
まあ、メンタルはお化けだと思うよ。
神様だし。
「じゃあ、ローズ、僕らは帰ろう。アンネ、またね。」
「はい、またお話ししましょうね、アベル様。」
そう言ってアンネはマリアさんのように月の美しさの笑顔を見せる。
流石親子だ。
本当に似てきたな。
「爺ちゃん、悪いけど後頼んだよ。」
「ああ、面白いものを見せてもらったからな。それくらいはいくらでも引き受けよう。」
「そう、良かった。明日最愛の娘を迎えにカレッド伯爵が慌ててやって来るだろうけど、よろしくね。」
「うむ、そこまでは想定通りだ。任して居れ。」
流石、爺ちゃん、肝が据わっている。
そして俺はローズに肘を突き出し、腕が巻かれたのを確認してから、首だけ振り返りこう言った。
「それでは皆さん、おやすみなさい。ごきげんよう。」
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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