ローズの回想11
「ただいま戻りました。」
と、リサと私は子供部屋に入りました。
「お帰り。何か面白いものでも見れた?」
そう言ってシャーロットお嬢様は私たちを微笑みながら見つめました。
私は
「庭園が凄く綺麗でビックリしました。図書室も本がたくさん並べられていて凄かったです。あと、ご隠居様とビル爺さん、ヨハン様にハンスさん、それとジョージさんに会ってご挨拶しました。」
と言いました。
「まあ、お爺様たちにお会いしたのね。どうだった?面白い人ばかりでしょう。」
シャーロットお嬢様がおっしゃったので
「皆さんとてもお優しい人ばかりでした。ご隠居様には飴玉を頂きましたし。」
とポケットに入った飴玉をお嬢様に見せました。
「あら、良かったわね。お爺様ったら最近飴玉を持ち歩いてるのよね。私にもよく下さるのよ。それで炊事場から、おやつを持って来てくれたのね。」
そう言ってリサが持っているお皿の上のドーナツを見たシャーロットお嬢様は
「ジョージは優しいわね。さあ、一緒にドーナツを食べましょう。」
とシャーロットお嬢様は私たちに告げました。
リサが
「私たちもですか?」
と、尋ねると
「だって私一人で3個も食べれないわ。ジョージは初めからそのつもりで3個あなた達に持たせたのよ。早くこちらにお座りなさい。食べましょう。」
と言ってシャーロットお嬢様は美味しそうにドーナツを食べ始めました。
「私、こんなお菓子初めて。本当に食べて良いんですか?」
と私が言うと
「良いのよ。あなたはこれからこの城で働くのですから、これくらいの役得は有ってしかるべきです。さあ、冷めないうちにお食べなさい。」
とシャーロットお嬢様は優しく言って下さいました。
私は恐る恐るドーナツを一口食べ
「美味しい…」
そう言うと、なぜだか涙が溢れて止まらなくなりました。
「どうしたの?お腹でも痛いの?」
私が泣いているのを見て、珍しくシャーロットお嬢様が狼狽えました。
「お嬢様、たぶんそんなんじゃない。ホッとしたんだと思う。ここまで家族から離れて、お城に来て、いろんな人に会って、緊張の連続だっただろうから。」
と、リサが言うと、シャーロットお嬢様が
「そういえばそうね。ローズも疲れたわよね。私は生まれてからいろんな人たちに囲まれた生活だけど、お城の外の人から見れば、煩わしい生活なのかもしれないわ。でもリサ、良くすぐわかったわね。」
と、言いました。
「あたしも来た道。最初は誰だってそうなると思う。」
と、リサが言います。
「あら、リサもそうだったの?そんな感じには見えなかったけれども。」
と、シャーロットお嬢様が言うと、リサは
「あたしはあまり顔に出さないから。」
と、返します。
そして私は
「ごめんなさい。ドーナツを一口食べたらなんだか安心して、糸が切れたような感じで涙が止まらなくなりました。もう大丈夫です。ご心配をおかけました。でもドーナツっておいしいですね。弟達にも食べさせてあげたい。ウッ…」
一度止まった涙が、兄弟たちを思い出したら、また溢れてきてしまいました。
「もう、仕方ないわね。泣きたいだけお泣きなさい。でも、これだけ兄弟を思えるって素敵ね。母様のお腹の子がもうすぐ生まれるけど、楽しみになるわ。」
と、シャーロット様が言います。
「アリアンナ奥様はもうすぐなんですか?」
私が聞くと、
「あと三つ月が替わるとって話よ。待ちきれないわ。」
と、シャーロットお嬢様。
「ではあと三つ月が替わる前に、お仕事覚えなきゃ。」
と、泣き止んだ私は意気込みました。
「ん、頑張れ。」
と、リサは励ましてくれました。
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