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325.アベル君と女難!女難!女難!

 325.アベル君と女難!女難!女難!




 【別邸での会話はまだちょっとだけ続くんじゃ。】



 「それがかえって直系の兄弟のやっかみになったのね。」

 ロッティーが付け加える。


 そして爺ちゃんが飲みながら呟く。

 「そうであろうな。まして嫡子と庶子。それらの差別意識がそんな厳しい家庭であったからこそ育んでいまったのであろう。」


 なるほどなぁ。


 俺も前世の親にはよく叱られたな。

 いや、叱られたと言うより、躾と言う名の、いや、虐待と言う名の、いや、結局は親のストレス解消だったんだろう。


 毒親共の虐待とネグレクト、学校では虐めの数え役満だった。

 だから兄弟たちに辛く当てられていたカミラの辛さは、少しくらい分かったかもしれない。


 もうカミラの中の人はトレーサになっちゃっているけど。

 馬車に轢かれて、死ぬ際に現れたトレーサの蘇生を断るくらいに、自分の人生に絶望していたカミラか。

 

 テーブルの向こうで楽しげに笑う三人の娘たちを見ながら、俺の中で色んな感情が渦巻いた。

 「どうしたの?難しい顔をして。」


 こういう時のロッティーの観察力は鋭すぎてちょっと引く。

 「何でもないよ。良い光景だね。」


 俺はそう言ってグラスの酒を煽った。

 「そう、それなら良いのだけれど。」


 ロッティーは納得してなそうだが、引いてくれた。

 「ところで、アベルよ。オリビア王女のことはどうするのだ?」


 爺ちゃんがとんでもないことを言いだした。

 ここでかよ。


 「どうかしたの?まだどうこうするような状態じゃないと思うけど。」

 俺はつい不機嫌そうに言ってしまった。


 ちょっと回ってきたかな。

 「いや、陛下から打診があって呼ばれたのだ。説得せよとは言わぬが口利きくらいはしてくれと。」


 「それって説得せよって話じゃないの?」

 「まあ、そうなるのかな。モテる男は辛いものだな、アベルよ。」


 「権力をかさに迫ってくる正室候補、自ら立候補してくる側室候補。内に秘めていた想いを隠しもしなくなってきた乳兄弟。盤石な位置にいるくせに、なぜかそわそわしている内縁の奥様。学校に行けば、南の間諜なのか分からない女生徒がぴったりくっついてくる。ホント女難とはこのことだね。」


 「アベル!そんなに!?」

 俺の言葉を聞いたロッティーがいきなり叫ぶ。


 「そんなにって言われてもね。俺自身が粉掛けたのは、リラとローズしかいないんだがな。」

 「いずれにしても正室は迎えねばならん。それが誰であれ、覚悟は決めねばならんだろうな。酷な話であるが。」


 爺ちゃんはバツの悪そうな顔をして俺に語る。

 断れないからなぁ。


 どうせなら、父さんを早いところ説得して、俺に命令させりゃいいんだよ。

 どうせ周りは政略結婚とみなすんだからさ。


 「しかしオリビィが僕に恋心を抱いているのは知っているが、陛下までなぜ僕にオリビィを嫁がせたいんだろうね。不思議じゃない?」

 俺は、かねてから不思議たっだことを口にした。


 「あら、面白い話をしてらっしゃるのね。」

 そう言って僕らの席の近くにカミラがやってくる。


 トレーサ、頼むからもう引っ掻き回すなよ。

 『もうやらないわよ。早く話を進めなさい。おもしろそうだから。』


 「あなた方もお出でなさいな。どうせ聞きたいのでしょう?正室候補とそれに対してのアベル様や、陛下たちの考えをお聞きいたしましょう。そうすれば私たちも、多少はスッキリするでしょう。」

 かき回しているじゃねーか!


 「カミラさん!!」

 ロッティーが諫めに入ろうとするが


 「いいよ、姉さん。皆に聞いてもらおう。一人を除いては家族なんだから。まあ、その一人は特別枠で。仕方ないからな。」

 などと言って俺はロッティーを止めた。


 そうだよ、みんな家族に詳らかにしていまおう。

 俺だけ、嫌爺ちゃんもか。


 二人で抱えるのはつか…いや、勿体ない話題だからな。


 「爺ちゃん、さっきの話どう思う?と言うか、何か聞いていない?」

 俺は女子たちに囲まれたテーブルで、なぜか上機嫌になって酒を飲んでいる爺ちゃんに聞いてみた。


 「これは至極簡単なことだな。」

 「なに?爺ちゃん。そんなに簡単?」


 俺は多少混乱しながら爺ちゃんに問い詰める。

 その姿を見て、更に上機嫌の爺ちゃんとカミラ。


 この二人、気が合うんじゃないのか?


 「そうだ。聞けばここに居る全員が納得するであろう。しかし、ここの皆に分かりやすく、なぜアベルが王女陛下を娶るのをためらっているか聞かせてやったらどうだ?」

 クッソめんどくせー!!


 と、叫んでやりたい。

 「仕方ないな。貴族であればすぐ理解できることだ。不敬に当たるかもしれないが、敬称等は省かせてもらう。簡単に言えば、王女や第二王子以下は外交の道具だ。」






 俺がそこまで言うと、ローズとアンネが驚愕の顔をした。


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