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322.アベル君と女の抗争。

322.アベル君と女の抗争。




 そんな会話をしているとき、客間の扉がまた鳴った。

 誰かがノックをしたのだ。


 「アベル、入るわよ。」

 そう言って客間に入って来たのはロッティーだ。


 「やあ、姉さん久しぶり。」

 俺が笑顔でこう言うと、


 「久しぶりじゃないわ、あなたこの前お爺様に用事でローズと立ち寄ったそうじゃない。なんで私が帰るまで待ってくれないの?」

 ロッティーが険しい顔で詰め寄ってくる。


 「あの時は時間が余分に有り過ぎたからね。寄宿舎でゆっくりできるなって思っちゃってね。」

 俺がこう言うと、ロッティーは更に険しい顔をして


 「どうせ、寄宿舎でローズといちゃついていたのでしょ?あなた方のやりそうなことだわ。」

 プイっ!とふくれっ面を横に向けた。


 ここでもラブコメの波動かよ。

 どうかしてる。


 「あら、居たのはアンネちゃんだけじゃないのね。カミラさん、いらっしゃい。我が家へなんの御用かしら?」

 横へ顔を向けたときに二人が目に入ったのだろう、ロッティーがカミラに向かって質問をする。


 「シャーロット様、私がカミラ様をアベル様にご紹介したくてお連れしたのです。いつも仲良くしてくださる、ご学友として。」

 アンネがカミラの代わりにロッティーに答えた。

 アンネも貴族的執り成しがうまくなったもんだ。


 そしてカミラが優雅に立ち上がってカーテシーをする。

 「シャーロット先生。お邪魔しております。この度は先生に挨拶無く屋敷を訪れた御無礼をお許しください。私の無二の親友であるアンネローゼが、どうしても乳兄弟殿に合わせたいと申すものですから、殿方に会いに来るなどはしたないとは思いましたが、こうしてのこのこ参ったしだいでございます。」

 「ああ、そう。カミラさん、ではあなたは目の前にいるアベルをどう思うの?」

 「それはそれは美しい殿方。数多の婦女子が放ってはおかないでしょうね。」


 さっきまで、乳繰り合いたいとか言っていたのにな。

 「そんな第三者的俯瞰で見た感想なんて聞きたくないのよ。あなたがどう思ったかを聞きたいの。」


 ロッティーの言葉の剣が上段から切りかかる。

 なんでそんな話題でエキサイトしているのか知らんがね。


 「申しても宜しいのですか?先生?」

 扇子で口を隠し、上目遣いでロッティーを見るカミラ。


 「ええ、存分に申しなさいな。」

 そう言いながら、ロッティーはズイッと前に出て、カミラに立ちはだかる。


 「では、私も年頃の女子として、殿方との色恋を妄想することはございました。しかし、一目惚れなどはそれこそよそ様の妄想ではないかそう思っていたしだいです。しかしながら、その考えがよもや簡単に崩れようとは。」


 カミラは一呼吸あえて置き、ロッティーをわざと誘っている。

 森の剣星かよ。


 「まあ、一目惚れなんて勘違いだっていうよね。」

 俺はその間に入り込んだ。


 「アベル!黙りなさい!」

 即座にロッティーから叱られる。


 なんでやぁ。

 「それはアベルに一目惚れをしたということなの?」

 

 こう言ったのは勿論ロッティー。

 「そのような!そのような破廉恥な!初対面の殿方に、そのような思いを寄せるなどあってはならぬと思っておるのですが…」


 カミラはのらりくらり決定打を言わないで、かわしてる。

 あいつ、楽しんでやがるな。


 「ふぅ。」

 カミラの話を聞いていたロッティーがため息をする。

 「もういいわ。カミラさん、もうよい時間だからあなたを我が家の食卓にご招待いたしましょう。アベルも良いわね。」


 俺に拒否権があるとでも?

 「ええ、どうぞご随意に。」


 「馬車でローズを迎えに行かせましょう。良いわね、アベル。」

 この混沌の中に、ローズを巻き込めと?

 

 しかし、俺に拒否権はないのだ。

 「ローズも一緒の食事ね。いいね。姉さんも久しぶりでしょ。たまにはいいんじゃないかな。」


 俺はげんなりした気分をおくびにも出さす、ロッティーに言った。

 「失礼ですが、そのローズ様という方はどなたのでしょう?」


 カミラがまた余計なことを言い始める。

 お前はよく知っているだろ。


 喧嘩ばかりしていたじゃないか。

 「アベルは内縁の妻とか言っているわね。簡単に言えば妾よ。」


 ロッティーは投げやりに言い捨てる。

 「まあ、お妾!アベル様には、もうそのような方がいらっしゃるのですね。」


 「そうね、諦めるなら今のうちだわ。」

 「先生、殿方がお妾を囲う程度は仕方ないことではないでしょうか?私が何をあきらめねばならないのでしょう?」


 「くっ!」

 ロッティーが言いくるめられた!


 なかなか見られるものではない。

 天才少女の名をほしいままに20年間生きてきた。


 これがこんなにあっさり黙らされるとはな。

 これが腐っても神のディベート力か。


 俺は椅子から立ち上がり、ロッティーをかばうように前に出て口を開いた。

 「そう、僕にはすでにパートナーが居るってわけ。だからしばらくは正室とか側室とか考えたくないんだよね。姉さんはそれが分かって、僕を他の女性から遠ざけようとしてくれたんだよね。」

 

 そう言ってロッティーの顔を覗き込む。





 カミラにやり込められ、一時呆然として居たロッティーの目に生気がまた宿るのだった。


読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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