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321.アベル君とカミラさん。

321.アベル君とカミラさん。




 俺が噴出したお茶が、思いきりカミラに降りかかる。

 「嫌だ!あんた、汚いわね!アンネもアンネよ!なんてこと言うの?」


 トレーサが血相を変えて俺とアンネを非難する。

 「お前、神なんだからよければいいだろ!」

 

 「ラブコメの波動よ。」

 「は!?」


 「よくあるじゃない。男の子がブーっ!って吹いて、ヒロインに掛かっちゃうっての。ちょっと感じてみたかったのよね。」

 そう言っているうちに、俺が噴出したお茶がみるみる消えていく。


 「馬鹿なのか!?」

 「失礼ね。神に向かって。」


 「人のことは前世を引きずるなって言っておきながら、お前は向こうの世界の漫画のギャグを感じたいとか。アンネ、この神ちょっとおかしい。」

 俺がこう言うと、アンネは即座に答える。

 

 「アベル様、トレーサ様はリーサちゃんの頃からこうだったじゃありませんか。」

 うん、正論だ。


 「そう言われりゃ、そうだけどさ。」

 「二人とも失礼よ!」


 それこそ少女漫画のように頬を膨らますトレーサ、もとい、カミラ。

 「話を戻すけど、俺の側室になるって、カレッド伯爵の庶子って設定をどう乗り切んだよ。」


 庶子ってのは、いわば直系では無い子、妾の子ってことだ。

 嫡男である俺に側室として嫁ぐには、その貴族の嫡子であること、これが前提だ。


 嫡子と庶子、この色分けは貴族の中では覆しようが無い。

 難しい問題なのだよ。

 


 まあ、百パー覆しようが無いわけではないが。

 それを言うと、カミラはあっさりそれに乗って来そうでね。


 「そんなの何とかなるわよ。」

 「具体的には?」


 「記憶の改ざん。」

 「バッカじゃねーの!?じゃ、リアルにカミラを生んだお母さんはどうすんだよ。」


 「記憶の改ざんで誰かにくっ付ければいいでしょ。」

 「だからさ、記憶の改ざんはされたヒューマンは不具合を生じ易いって自分で言っていたじゃないか。しかも、カミラが産まれてここまでの記憶の改ざんだろ?相当数の人間の記憶を書き換えなきゃならんぞ?」


 「じゃあどうすれば良いっていうのよ。」

 「お前、そのプロットも描かずに受肉しちゃったわけ?」


 「悪い!」

 「うん、悪い。」


 「もう!」

 「もうじゃねんだ。ちったぁ考えろよ。おめーはよ。」


 「アベル様、カミラ様と話をすると、とたんに口調が悪くなりますね。普段は貴公子然としてらっしゃるのに。」

 「アンネ、僕はそんな貴公子って感じだった?」


 「いつも格好よくて、優しい口調ですよ。今みたいに下町のおじさん達みたいな口調じゃありません。」

 「下町のおじさんって…」


 俺は思わず絶句してしまう。

 そこに、トレーサがすかさず茶々を入れる。


 「中身おっさんだから、自が出ちゃうのよね。おほほほ」

 「うっせ!この!」


 「ほら。アベル様らしくありません!」

 なぜかアンネは怒っている。


 まあ、カミラと話していると、前世の俺がむくむく出てくる。

 俺がどうしてここに生まれたか、前世でそういう生活をしてきたが、あの一柱は全部知っているんだから。


 気兼ねなく、田中信一郎で居られる。

 こう思える人間はもう一人、リラだけだ。


 それがアンネは自分だけ疎外されているように感じるのかも知れない。

 実際、そうだしな。


 「ごめんね、アンネ。いつもの僕に戻るように努めるから。ね、機嫌を直して。」

 俺はそう言って、アンネの顔を下からのぞき込む。


 目と目が合うとt、そこに広がる大輪の笑顔。

 「はい!」


 そう元気な返事をアンネはしてくれた。

 ただ気を付けねばならないのは、許してはいないのだ。


 機嫌が直っただけでな。

 それだけは忘れるな。


 「まあ、庶子であることをパスできても、僕が受け入れるとは限るまい。」

 「えっ!!なんでっ!?」


 「お前みたいなトラブルメーカーを家で囲うほど、僕は酔狂ではないよ。」

 「大人しくするわよ。神よ、神がタダで手に入るのよ。お買い得よ。」


 「スーパーかよ。」

 「convenienceよ、利便性。」


 「わけがわからんて。」

 「もう、わかったわ。アベルの気が変わるように私も何とかするから。」


 「おお、それこそラブコメの波動。」

 「えっ!そうね!正解ね。」





 いいのか?正解で。

 


 





読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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