ローズの回想10
私たちは飴玉をメイド服のエプロンのポケットへ大事にしまい、食堂から廊下に出ました。そして少し歩いたところに炊事場がありました。
炊事場の扉から漏れ出る匂いは、凄くいい匂いで口の中が涎で大変なことになりそうでした。
リサが扉を開けて
「こんにちは」
と呼びかけると、私のお父さんのように身体が大きく、胸が厚く、腕の太い男の人が出てきました。
「ん?なんだ、リサか。今はつまみ食いするようなものはないぞ。」
とその人が言うと
「違う。この子を連れて城の中を案内してる。今日メイドになったローズ。ローズ、この人は料理長のジョージさん。」
とリサが言いました。
「今日からメイドになったローズと言います。4歳、オオカミの獣人です。よろしくお願いします。」
と私は挨拶をしました。
「おお、またちっこい子が来たな。俺は炊事場を任されているジョージだ、よろしくな。」
と言って、パチンと私にウインクをしました。
「ジョージさんはマーガレット様の旦那様。仲がいい。」
とリサが言います。
それを聞いた私は
「え?マーガレット様の旦那様なんですか。」
と、質問をしてしまいました。
「おうよ、マーガレットは俺の最愛の奥さんだ。」
と、ジョージさんが言い、それを聞いて私は
「ほへ~」
と呆けてしまいました。
「なんだ、そんなに変か?」
とジョージさんが聞くので、私はあわててブルブルとかぶりを振りました。
「ああ、もしや、あいつが怖いのか。仕事をしているときのあいつの顔はキツイからな。この城と御領主様たちのことが一番に考えて、仕事してるんだよ。お前たちにもそれを強いているのかもしれないな。でも、そうじゃ無いときは穏やかで綺麗なんだ。そして何より性根が優しい。そこに惚れっちまったんだな。」
とジョージさんは笑いながら言いました。
すると
「一体あなたはこの子たちに何を話してるんですか!」
そこにはマーガレット様が怖い顔で立っていました。
「なんだ来てたのか。何話してるって、お前が綺麗で優しいから、俺が惚れたんだって話しをしてたんだよ、なぁ」
と私たちを見て同意を求めるジョージさん。
「来てたのかじゃありません!この子たちにそんな話はしなくていいんです!まったくあなたという人は。余計なことをペラペラと!仕方のない人なんだから、もう!」
ちょっとふくれっ面をしながら、でも恥ずかしそうなマーガレット様。
心の中で、マーガレット様もこんな顔するんだなって思ったことは内緒です。
「そんな照れなくったっていいのに、なあ」
とまた私達に同意を求めるジョージさん。
「照れてません!」
ちょっと顔を赤めて反論するマーガレット様。
そして
「ところで、あなた達はここで何をやってるんです?シャーロット様のところはよろしいのですか?」
とマーガレット様はこちらに話を振りました。
「シャーロットお嬢様がローズを連れて城の中を案内しなさいっておっしゃったのです。」
と、リサが言いました。
「ああ、なるほどそうですね。お城の色んな場所を知るのは必要なことですね。それでこの後はどこへ行くのです?」
と、マーガレット様がお聞きになりました。
「取り敢えず今日はこれでシャーロットお嬢様のところへ帰ろうかと思います。あと、ジョージさん、シャーロットお嬢様がおやつをご所望なされているのですが、何かありませんか?」
とリサが言うと
「おお、あるある、さっき作ったばかりのドーナツがあるな。これ持ってけ。」
そう言ってトレイの上にお皿を乗せ、ドーナツを3個お皿に盛り付けました。
「まだ温かいからな、さっさとお嬢様のところへ持って行け。」
とジョージさんが言うと
「落とさないよう気をつけて行きなさい。また後でね。」
そうマーガレット様は優しく送り出してくれるのでした。
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