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315.アベル君と別邸で爺ちゃんと。

315.アベル君と別邸で爺ちゃんと。




 久しぶりに別邸の書斎に来ていた。

 爺ちゃんに件の状況を伝え、出来れば知恵を借りるためだ。


 「と、言う状態なんだ。」

 俺は現状を端的に伝える。


 「ふむ、アベルの顔が憔悴していると思えば、なんてことはない、女難か。」

 「その一言でことが足りるのが辛いね。」


 俺は苦笑いを浮かべる。

 「ローズはどう思っているのだ?」


 爺ちゃんが傍らに控えていたローズに聞いてみた。

 「ご隠居様、私は平民ですので、お貴族様の婚姻に対しての発言は控えさせていただきます。」


 「そうか。しかし、ローズはアベルに娶られて落ち着いたな。いい伴侶となったものだ。だが、その伴侶としての考えを問うておるのだ。分かるな。」

 「ご、ご隠居様。ありがとうございます。」


 そう言ってローズは目頭を押さえた。

 爺ちゃんの伴侶という言葉に琴線が触れたのだろうな。


 嗚咽の後のしばしの沈黙、そしてローズは顔を上げ、

 「では僭越ながら、述べさせていただきます。アベル様はジーナ様を娶るべきです。」


 「ほう、それはなぜだ?」

 「お断りした場合、アベル様の国内での立場が悪くなるからです。」


 きっぱりとローズは言った。

 「なるほどな。ローズはそう考えているのだな。」


 「はい。次期当主という段階で、他の貴族の方々に足元を見られるようでは、ヴァレンタイン辺境伯として国内の発言力が無くなってしまわれます。」

 「うむ、状況をよく把握して未来を見据えておるな。」

 そう言って爺ちゃんは嬉しそうにローズを褒める。

 でしょ、ローズはよく出来た嫁なのだ。


 「確かにローズの申した通りだな。」

 爺ちゃんが俺に向かって口を開いた。


 「今の状況はその方向を取らないといけないよね。」

 「うむ、風習を知らなかったとはいえ、ドジを踏んだの。」


 「命より髪の方がまだましだろと思って、情けのつもりだったんだけどね。それが仇になっちゃったよ。」

 「はっはっは、何でも知っているアベルが、一つ知らなかったことで躓くか。人生とはそういうものよ。」


 苦笑いを続ける俺を見ながら、爺ちゃんは楽しそうにそして慈しみを込めて笑う。

 やっぱり、うちの家族は一番だな。


 だからこそ、嫁選びは慎重にしたかったんだが。

 「その一つの躓きが、人生の分岐点になりそうだから爺ちゃんの所に来たんだけどね。」


 俺はまだ微笑んでいる爺ちゃんに言った。

 「ことはローズが言ったように簡単でも単純でもない。アベル、分かるか?」


 「一つ目は爵位の格差だよね。でもこちらが納得すればクリアされることだ。あとは経済格差。これも同じ。最大の難点は北と南だね。」

 「そうだな。そのジーナという娘は嫡子なのか?」


 「えっと、そこまで知ってないや。敵側からいきなり巻き込まれた感じだったから、調べる余裕もなかった。」

 「アベルらしくもない。まあ、それも仕方なしか。アーサー!」


 ガチャ、と書斎のドアが開き、

 「お呼びでしょうか?ご隠居様。」


 と、廊下で控えていた別邸付きの執事であるアーサーが入ってくる。

 部屋に入れても良かったんだけど、家の内側の話だったんで、廊下に控えさせていたんだ。


 「ああ、サンタグレース家を探れ。他の貴族との繋がりについても出来るだけな。」

 「畏まりました。早急に始めさせていただきやす。」


 「アーサー待って、おそらく南のアルディーニ伯爵家と繋がりがあると思う。あとパーシー家との繋がりも探ってくれない?南の領主たちは、多かれ少なかれパーシー公との繋がりはあると思うけどね。」

 俺はすぐにでも事にかかろうとしていたアーサーに声を掛けた。


 「わかりました、坊っちゃん。では行って参りやす。」

 そう言ってアーサーは書斎から出ていった。


 「アーサーがどう調べるのか興味があるね。」

 俺がそう言うと、


 「彼奴らに彼奴らなりの繋がりがあるからな。主人が首を突っ込めば、仕事と手柄を無くされると思うだろう。我らは彼奴らが持ってきた情報を吟味すればよいのだ。」

 「なるほど、そのとおりだね。」




 俺はそう言って、ローズが淹れてくれたお茶を口に含んだ。



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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