311.アベル君と集団決闘。
311.アベル君と集団決闘。
俺と北側のメンツはなんだか穏やかに南側の連中が来るのを待っていた。
お弁当でも広げたいくらいに。
お腹は一杯だったけどね。
そこに、オスカーとグスタフさんがそろって現れた。
ジェームズさんも、後ろにピッタリついていたのは当然かな。
仕事だろうからね。
「アベル、貴様、剣はどうした。」
オスカーらしくもない、目ざといじゃんかよ。
「今回無手で相手してやんよ。」
「あまり舐め過ぎなのではないか?」
「いや、そういうわけじゃないんだ。お二人に確認させてもらいたいんだけど。」
「魔法か?」
ここでグスタフさんが俺に聞いてきた。
「ええ、今回は魔法で相手をしようと思います。」
「良いのか?貴様、剣と魔法の両立を明かすことになるぞ。」
オスカーがいまさらのことを言ってきた。
「まあ、知っている人は知っているし、今更かなぁって思ってね。それにこれから手出ししにくくなるだろ。俺にも、俺の周りの人にも。」
「うむ、確かにそれはそうだが、騒動にはなるぞ?覚悟はしておるのだな?」
「それくらいは。ただこの程度の小さな魔法って感じしか出さないよ。」
俺がそこまで言うと、グスタフさんが口を開く。
「校舎や修練場を爆発させるようなことをすることは無いな?」
「勿論。集団を一気に潰そうとは思いませんよ。面白くないじゃないですか。」
「「アベル…」」
オスカーとグスタフさんがそろって頭を抱える。
「冗談ですって。近接の魔法を使おうと思います。もちろん窒息も使いません。」
「窒息を使わないだと?」
オスカーが怪訝そうに呻く。
昨夜、気絶させられたからな。
「使いませんよ。つまんないから。」
「結局貴様の気分次第ではないか。」
そりゃそうだ。
「ここだけの話。」
俺はこそこそ話に切り替え、二人も俺の方に耳を近づける。
「誰も殺すつもりはありませんから。」
「なんだと!団体を相手にそれはあまりに舐め過ぎなのではないか?」
グスタフさんがそんなことを言うので
「決して舐めているわけじゃないし、窒息だと何が起こったか分からないだろうし、もっと視覚的にも負けたなってわかるようにしたいわけですよ。」
「視覚的になぁ。」
オスカーが反芻しながら呟く。
「あいわかった、使う魔法は近接のみ、相手は殺さない。この条件なら許そう。殿下もよろしいですね。」
グスタフさんがオスカーに確認する。
「うむ、しかしアベル、いかな貴様でも多勢に無勢だ。慢心して殺されるでないぞ。」
「承知しました。王太子殿下。」
俺はそう言ってお辞儀をすると、
「ふん!」
という返事が返ってきた。
オスカー、このツンデレめ。
そんなやり取りとしていると、殺気立った団体が到着した。
あれ?さっきより四、五人多いような気がするが。
まあ、いいか、誤差の範疇だ。
「ジーナ・サンタグレース!先ほどの人員より多くなっているではないか!!」
グスタフさんの怒声が周りに広がる。
その怒声に明らかにビビるジーナ。
しかし気を取り直し、必死の形相でグスタフさんに言い寄った。
「この者どもは、私の意識に触れ、狭義によって立ってくれた者達です。決して、アベル・ヴァレンタインを数だけで圧倒したいなどと思っているわけではありません!」
思っているじゃないか。
それを口に出しちゃだめよ。
「それに!」
ジーナの言葉が続く。
「それに、彼はエドワード・ヴァレンタインを祖父に持ち、それに師事している身。この程度のハンデは軽いものなのではないでしょうか!」
ハンデってのは、命の駆け引きではやらないものなんだけどね。
まあ、自分たちは弱いって本音を語ってくれたんだ。
ご褒美くらい上げないとな。
しかしそれは次の怒声でかき消された。
「命の駆け引きの場でハンデだと!馬鹿を言うな!!」
グスタフさんが、本気で怒鳴ったのだ。
もうジーナ涙目。
「いいですよ。その人数を相手にしましょう。皆さん死ぬ覚悟は出来ているんでしょうから。僕も祖父の名前を出されて、優しくしてやる必要もなくなりましたしね。」
「「「な!」」」
グスタフさん、オスカー、ジーナが固まる。
オスカーとグスタフさんは、俺がさっき殺さないって言っていたのに、ちゃぶ台ひっくり返されたんでびっくりしてんのかな?
ジーナは死ぬ覚悟って言葉でビビったらしい。
お前ら、俺を殺す覚悟があったんだろ?
なら等しく死ぬ覚悟も持てよ。
「では、さっさと始めましょう。」
俺がそう言うと、やっと俺が無手なのに気が付いたジーナが、
「アベル・ヴァレンタイン!貴様、剣が無いではないか!我々をあまり舐めるなよ!!」
「やっと気が付いたか。俺はこれで戦うんだよ。」
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