ローズの回想9
「では次に行こう。」
とリサが言うので
「じゃハンスさん、何かあったらよろしくお願いします。」
と私は言いました。
ハンスさんは
「ああ、待っているよ。」
と言って手を振って送り出してくれました。
私は振り返って手を振りながらリサの後を追いました。
「次はどこに行くの?」
とリサに聞くと
「食堂と炊事場。良く行く所だから。」
そう歩きながら言います。
おおきな観音開きのドアの前に着きました。
そのドアを開くと広い食堂が現れました。
赤いカーペットに長いテーブル、そして椅子がきれいに並べられています。
一番奥の壁には暖炉がありました。
そこには二人の男の人が立っていました。
一方はラフなシャツに革のパンツをはいた白髪交じりの男の人、もう一方はビシッとした制服を着た耳の長い男の人でした。
「リサ、どうしました?」
耳の長い男の人が聞きます。
「ご隠居様、ヨハン様、今この子を連れて城の案内をしてます。今日メイドになったばかりのローズです。ローズ、こちらがご隠居様と執事のヨハン様です。ご挨拶を。」
とリサが促してくれたので
「ローズです。今日からメイドとしてお世話になることになりました。4歳でオオカミの獣人です。よろしくお願いたします。」
と言って頭を下げました。
「うむ、私はここの先代領主のエドワードだ。隠居なんて歳でもないんだが、皆がそう言うので困っておるのだ。しかし、4歳にしてはちゃんとした挨拶するな。大したものだ。うむ、その歳でメイドか、ローランドはいったい何をさせるつもりだ?」
とご隠居様が言うと、ヨハン様が
「お生まれになるお子様のお付きにするとのことでした。」
と言いました。
「ああ、なるほどな、子供には子供ということか。リサもそうだったな。シャーロットに良く尽くしてくれておる。しかしまだ幼いのだ、二人とも、あまり気張らんようにな。」
とご隠居様は微笑むと
「どれ、お前たちに良いものをやろう。手を出せ。」
そう言って腰を落とし私たちの目線になりました。
そして私たちが手を出すと
「飴玉だ。何故か最近よく咳が出るでの、これを舐めていると幾分楽になるのでな、常に持っておるのだ。」
と言って私とリサの手のひらに飴玉を一つずつ上げてくださいました。
「ありがとうございます!」
私とリサは同時にそう言ってお辞儀をしました。
「礼など良い、良い。さて、ヨハンお前の挨拶がまだであろう?」
ご隠居様がそう言うと
「そうでございますね。はじめまして。私はヨハン。このお城の執事をやっております。よろしくお願いしますね。」
わずかに微笑みながら、お辞儀をしてくださいました。
「よろしくお願いします!」
私は元気に言いました。そしてちょっとだけヨハン様の耳を見つめてしまいました。
「元気ですね。子供は元気な方がいい。おや、あなたは私の耳が気になるようですね。エルフを見るのは初めてですか?同族が町場には降りてくることは珍しいですからね。見慣れないかもしれません。」
とおっしゃったので
「エルフの方は初めて見ました。お綺麗な方が多いとお話に出てきましたけど、本当なんですね。」
と、私は言いました。
すると
「はっはっは。小さいご婦人にモテてうらやましい限りよの、ヨハン。」
と、ご隠居様が笑いながら言います。
「エドワード様、からかうのはお止め下さい。さあ、城をめぐるのでしょう?早く行きなさい。メイドの仕事、頑張るのですよ。」
そう言ってくださいました。
「では失礼致します。」
そう言って食堂から出ようとすると
「飴玉を舐めてるところを、マーガレットに見つかるでないぞ。はっはっは。」
とご隠居様の声が響くのでした。
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