299.アベル君とオスカーの教育。
299.アベル君とオスカーの教育。
授業に出ている。
もうそれだけで平穏そのものだ。
もうね、王城とか騎士学団とか、うぜえんだよ。
とはいってもね、呼ばれれば行かなきゃならん、宮使いの厳しさというかなんというか。
まあ、オスカーたちと娼館行ってからは、騎士学団の幹部会室に入っていない。
一回オスカーに絡まれたが。
※回想
「城に行ったようだな?何を言われた?何を聞かれた?」
「僕がセイナリアに来て、まだお城に行く機会がなかったから、陛下たちが気をお効かせ下さったんだよ。オスカーが娼館で童貞を捨てたなんて言ってはいないさ。(言ったけどな、ヒッヒッヒ。)」
「アベル、それだけは言うな。頼む、言わんでくれ。」
「言わないさ(言ったけど)けど、俺じゃなくても執事のご老人は言ったんじゃないの?お目付け役なんだろう?」
「くっ!そうか。そうだな。もうバレているのか。母上は何と思っているのだろう?」
「おここで王妃陛下の名前が出てくるのはヤバいな。」
「何故だ?」
「マザコンの誹りを受けるぞ。」
「そうか?母を慮るのはマザコンだというのか?」
「まあ、そうでもあるし、そうでもないかな。それでもいいんだ。口な出さなきゃな。」
「そうか、必要なこと以外は口に出すなということか。」
「そうだな。それが一般的な処世術であるし、政争で弱みを見せない、唯一の方法だろう。」
「政争か。そこまで考えが及ばなかった。」
「もう、オスカーも十六だ。周りの貴族にどんな言質を取られるかわからん。これが十歳なら子供に何だと逆に貴族が叱れれるだろうが、成人を過ぎた王太子が、言質採られて要求を飲まされるでは、陛下たちも困ることになるぞ。」
「うむ、そうだな。そのとおりだ。」
素直なんだよな。
まったく。
「オスカー、お前は優しい、生徒たちにも家族のことも慮る心を持っている。それは美徳だ。だが、その美徳を操ろうというものが必ず出てくる。貴族の世界というものはそういうところだ。気を付けろ。疑うことを知り、自分にも人にも厳しさをしるべきだ。」
「アベル、貴様は既にそのような世界に足を踏み入れているのか?」
丁々発止でやっているよ。
主にお前の親父とお袋にな。
「踏み入れているよ。五歳の頃から、ずっとな。」
「五歳というと、ここに観光に来た頃か。」
「あの頃から、南の勢力を知ったり、オスカー、お前に掛けられな呪いの解呪に立ち会ったり。あれも南の貴族が絡んでいたからな。それとパーシー公だ。」
「大伯父か。」
「そう、南の一大勢力だからな。あとは。」
「まだいるのか?」
「ああ、一番の難物二人が。両陛下だ。」
「ブッ!!」
まあ、吹くよな。
「オスカーには話すが、セイナリアに来る途中で四十人からなる賊に襲われてな。それがどうも裏で操っている者がいる。現時点でも誰だかわからん。それと、セイナリア内で僕らが乗っている馬車に爆弾が仕掛けられた。これはうちで雇った御者が犯人だったが、借金の形にはめられたんだ。これも裏が居るが現在でもわからん。そして、オスカー、お前にかかった呪いだ。僕を殺そうとし、姉をふくらはぎの肉を削いだ。その実行犯は南の貴族だったが、その貴族が、魔人という神の神気を操ってお前に呪いをかけたらしい。しかし、とてもその貴族一人でそれを行えるような感じではなかった。つまり、誰か裏が居るのだ。」
ここまで俺は一気に説明した。
オスカーは自分が操られた事件もあったので、神妙な面持ちで聞いていた。
「それらの件について、はじめて聞いたものもあるが、私に掛けられた呪いについては覚えている。とはいっても掛けられて暴れていた時の事は思えていないのだ。シャーロット殿を傷つけたことに関してはよく覚えている。私自身ショックだったのだ。」
「でだ、これらの件について、王陛下と話し合う必要が何度かあった。勿論父がメインだったが。オスカーの呪いについては僕が話をしていた。」
「五歳で父上とか。」
「そう。自慢ではないんだ。話、相談や意見する必要があった。」
「そうか、だから貴様は私よりずっと大人なのだな。」
それだけじゃないんだ。
現在四十九歳のおっさんが入っているとか知らんからな。
「まあ、もう一人手強い相手が居た。」
「ん?誰だ?」
「オリビィさ。」
「なるほど。奴は頭と口が回るのでな。もう口喧嘩はしないようにしているのだ。」
「それは懸命だ。」
「話を戻そう。北の辺境、そこを治めているだけの我が家でさえ、三か月というわずかなセイナリア滞在でこれだけ危険な思いをしたのだ。王家はもっと気を付けなければならない。謀反が起こると言っているわけじゃない、しかし起こらないとも限らないのだ。オスカー、学生というモラトリアムを現時点でも謳歌話できない。そういう立場なんだぞ、お前は。」
「モラトリアムとはなんだ?」
あ、いけね。
「羽を伸ばすっていう意味さ。」
学生でいる時ぐらい、羽を伸ばしたいものだが。
「でもたまには羽を伸ばしたいよな。」
「うん、そうであるな。」
「娼館行ったりさ。」
「この好き者め。」
てへ。
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本作は長編となっています。
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