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298.アベル君と食卓上の攻防。

298.アベル君と食卓上の攻防。




 攻防は続く。

 あ、銀〇英雄伝説の出だしみたい。


 カッコいい

 そうじゃない。


 「おお、アベルがとうとう折れてくれた。」

 そう言ったのは、腹が目立ってきたノヴァリス王国国王だ。


 「何が折れたのというのです?」

 俺はとぼける。


 「今オリビィと言ったではないか。それは我が娘を受け入れる証左であろう?」

 「確かにそのように申しましたが、王太子殿下を学校では呼び捨てにするように、友誼の念を込め愛称で呼んだまでです。」


 これが通る一家じゃないのは分かっている。

 しかしこれは必要な一手だ。


 「しかしそれは今までのように、オリビィを警戒して遠ざけるようなことはしない、そういう意味よね?アベル。」

 「ええ、そのとおりでございます、王妃陛下。私はいまだ未熟者。内縁の妻がいると申しても、彼女らは私の幼少の頃より、生活の一部でございました。ですから、まっすぐな恋慕の念は非常に心苦しいというか、向けられるのが辛ろうございました。ところが、ここでは友誼でいいとのこと。王女殿下のことも愛称で呼んでもいいという誉を頂き、心がスッキリとしたところでございます。」


 「さすがよの、あくまで余たちの公認の友誼であると申すか。」

 「そのとおりで御座います、王陛下。」


 それを聞き、王は王妃をチラ見する。

 「そうね、アベルはあと三年セイナリアに居るんですもの。その間に十分友誼を深めるのは可能だわ。ねぇ、オリビィ。」

 

 王妃の言葉を聞いて、オリビィ、(もうこの呼び名でいいよね。)が口を開く。

 「私は、アベル様にオリビィと呼んで頂いただけで、胸が一杯になってしまって落涙を押さえることが出来ませんでした。恥ずかしいところをお見せしました。申し訳ございません。」


 「とんでもありません、王女殿下。」

 「もう、オリビィと呼んで下さいまし。」


 ぐっ、絡めとられる。

 「そうですね、オリビィ。」

 

 「ハウっ。」

 オリビィが胸を押さえ小さく呻く。


 「オリビィ、お友達と言えど、殿方の前ではしたないですよ。」

 「はい、でもアベル様に呼ばれるだけで、胸が痛くなるのです。」


 オリビィは推しを目の前に限界化しているヲタのようだった。

 俺のアクスタ飾って一緒に乾杯してそうだ。


 そんなものは勿論無いけどね。

 もうね、限界化したヲタなんて、止めることは容易ではないのよ。

 

 だったら現状楽しむしかあるまい。

 後のことは後のことだ。


 父さんたちが頭を抱えるかもしれんが、皆王家の所為だと言えば丸く収まる。

 「陛下、ぶしつけながら一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


 「うむ、アベルが珍しいな、申せ。」

 「お酒を頂けますか?」


 「なんと!そうだな。アベルは既に成人しておった。忘れておったわ。よし、飛び切りのを飲ませて進ぜよう。」

 王はウキウキ顔になりながら、メイドを呼びつけた。


 「そうか、アベルも酒をのめる歳か。では二人で飲み明かそうではないか。」

 いいね、そうしようぜ。


 これで女性陣を切り離せるしな。

 酔っぱらえば、現世の物事など、些事だ。

 

 「あら、お父様。せっかくアベル様と仲良くなれたのに、殿方だけでお楽しみになるわけですか?」

 オリビィがブーたれる。


 「それもそうだが、せっかくだしな。そうそう騎士学校の生徒を城に呼びつけるわけにもいくまい?ならば今楽しめる時に楽しんだ方が良いではないか。」

 おお、王がいい方向に進んでる。


 酒飲みはそうじゃなきゃいかん。

 「陛下、恐れながらオリビィのことも聞いてください。せっかくこのためにアベルを呼んだのではないですか。」


 「え?」

 「あっ!」


 俺は思わず聞き返し、王妃は思わずあんぐりと口を開けた。

 「王太子陛下の処遇を決めるために私を呼んだのではないのですね?」


 王妃は珍しい失態で、顔を真っ赤にして俯いた。

 「アベル、合わせてだ、それもこれも合わせてこの場で、な。」


「な」じゃねーよ。

「帰ってよろしいですか?」


 「あい分かった、この期に及んで引き留めるわけにはいかんだろう。おい、馬車の手配をしてやれ。」

 王は、諦めたような顔をして、メイドさんに馬車の手配を命令した。


 「申し訳ありません、騙し討ちのようなことになってしまいました。ただ娘を思っての親心だったのです。それは分かってください、アベル。」

 「承知しております、王妃陛下。両陛下の両殿下を思う気持ちは、しっかり胸の内にしまっておきますので。」

 

 気持ちをしまっておくだけだ。

 もう手出しはしない。


 「あ、あの、アベル様はもうお帰りになられるのですか?」

 今の騒ぎで、限界化が冷めてしまったオリビィが俺に聞いてきた。


 「ええ、そうですよ。家族が待っていますしね。」





 


 そう、俺の家族、ローズの待つ寄宿舎の部屋に帰らなきゃ。






読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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