ローズの回想8
声の聞こえた方に目を向けると、長い柄のついた鋏を持った普通の人より背の小さいお爺さんが居ました。
「ああ、ビル爺。今この子を連れて城の案内をしてる。」
とリサが言うと
「おお、またお前さんよりちっこいメイドが来たんだな。幾つだ?」
とリサにビル爺さんと呼ばれたお爺さんが私に問いかけます。
「ビル爺、待って、ちゃんと挨拶させるから。ローズ、この人は庭師のビル爺。私と同じドワーフ。ビル爺、こっちはローズ。今日メイドになった。」
と言うと、リサは目配せを私にします。
「私はオオカミの獣人でローズと言います。今日このお城のメイドになりました。4歳です。よろしくお願いいたします!」
と、出来るだけ元気に挨拶をしました。
「おおまだ4歳か。しっかりした挨拶じゃのう。また元気があっていい。マーガレットも気に入るじゃろ。わしゃ、庭師のビルじゃ。この庭園をまかされておる。よろしくのう。」
そうビル爺さんが言うと、武骨な大きな手で私の頭を撫でました。
撫でられながら
「このお庭、綺麗ですね。」
と私が言うと
「そうじゃろう。わしが手塩にかけて育てとるからな。」
と言って、ビル爺さんは笑いながら目を細めます。
「先々代の奥様も、先代の奥様も、今の奥様もこの庭がお気に入りじゃ。」
と言ってビル爺さんは胸を張ります。
「先々代って、そんなに前からこのお城にいるんですか?」
私は驚いてビル爺さんに聞きました。
「そうじゃよ。先々代の奥様の頃は、まだわしは若造で師匠が健在だったから、教えを請いながら仕事をしておった。懐かしいのう。」
そう言ってちょっと遠くの方を見るビル爺さん。
「ビル爺、まだローズの案内の最中。お話は今度でいい?」
とリサが言うと
「なんじゃ、相変わらずお前さんは無粋じゃのう。でもまあそうじゃな、この城は広いからしっかり案内されるといい。じゃあのう。」
そう言って、立ち去っていきました。
「じゃ、あたしたちも行こう。」
次の場所へリサは私を案内します。
「ここが図書室。」
庭園よりちょっと離れになっている建物につきました。
「ここにはよく来るようになる。」
とリサが言います。
私はハッとして
「お嬢様?」
と言ったら、にやりとリサは笑い
「正解。」
と言いました。
「じゃ、入ろうか。」
リサは大きな扉に手をかけ
「うん」
と力を入れて扉を開けました。
「扉が重いから早く入って。」
そうリサが言うのでさっさと扉の中へ入りました。
入って行くとそこはドームのようになっており、その中央にカウンターがありました。
ドームの壁一面に本が並んでます。
「すごい。」
私がそういうと
「首都の図書館はもっとすごいらしい。」
そうリサは言いながら目の前のカウンターの方へ歩いていきました。
「おや、リサじゃないか。またお嬢様のお使いかい?」
カンターの向かいにいたスラリと背の高い若い男の人がリサに言いました。
「ハンスさん、こんにちは。今日はこの子の案内。新しくメイドで入ったローズ。ローズ、こちらは司書係のハンスさん。たぶんすごくお世話になる。挨拶して。」
とリサは促しました。
「今日お城のメイドになりました。オオカミの獣人のローズです。4歳です。よろしくお願いします。」
と挨拶すると
「しっかりした挨拶だね。マーガレットさんが採用するはずだ。私はハンス。この図書室の司書をしています。よろしくお願いします。」
とハンスさんはニッコリ微笑みながら言いました。
「お嬢様が読む本のことで、ハンスさんの知識が必要になる。あたしはいつも助けられてる。」
とリサが言うと
「まあ、それが仕事だからね。この城じゃあまり本を読んでくれる人もいないけど、シャーロット様がたくさん読んでくれるから、本たちも喜んでいるさ。」
と、にこやかにハンスさんは言いました。
「ここの本は何冊あるんですか?」と私が聞くと
「一万二千五百十二冊だね。数をチェックしただけで、僕も全部読んだわけじゃないんだ。」
とハンスさんは言います。
私は一万二千五百十二冊という数が想像できなくて
「はぁ」と言ってぼうっとしてしまいました。
「驚いたかい?何代か前の領主様がね、本が大好きでたくさん集めたらしいんだ。今の御領主様もね、冒険者をやっていた頃に珍しい本があると手に入れて、それを蔵書にしてるんだよ、おかげで僕は好きな本に囲まれて、給料まで貰える。幸せ者だよ。」
とハンスさんは笑いながら言います。
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