295.アベル君と王太子妃候補。
295.アベル君と王太子妃候補。
「アベル?どうした?」
ウィリアム爺ちゃんが心配そうに俺へ声を掛けていた。
「なんでもないよ、そう言えば魔法大学校の入学式で見かけたなって。」
「ああ、思い出したぞ。魔法大学校の入学式で、後見人の少年と入学生がずっと寝ていたってな。」
王がまた余計なことを思い出したようだ。
「そんな事もありました。」
「そうだ、それを教えてくれたのがカレッド伯爵だったな。」
「ええ、隣の席でしたから。学校長の話が始まるまで、世間話をしていたんですけどね。学校長の話が始まった途端、意識が飛びました。何かの魔法なんでしょうね。ビックリです。」
「此奴め、校長の話がつまらなくて寝おったくせに。」
あれ?王にはバレバレですか。
「けど、カレッド伯爵のご令嬢って、庶子じゃありませんでしたか?カレッド伯爵ご本人からそんな話を聞いた覚えがあるのですが。歳を取ってからの娘だったから、可愛くて仕方がないとも。」
「うむ、そのことなんだが、その娘の母親は某伯爵の娘でな。血筋自体は悪くはないのだ。カレッド伯爵も嫡子も庶子も同じく扱って居ったし。」
ウィリアム爺ちゃんが細くの説明を入れてくれた。
「庶子も候補に入れますか。流石開かれた王室は違いますね。」
俺がこんなことを言ったら、王は目を丸くして、
「生意気を言いおって。お主が真っ先に改善するようなところであろうに。」
「私はそこまで進歩思想に染まっているわけでもないですよ。」
「ふーん、そうなのか?」
「そうです。建国より千五百年の間に変わった風習や法律もあるでしょうが、ここまで長い間、一国家が安定して存続できた事は、変えなくてよかった部分が多かった証左でしょう。全ては王祖、ノヴァリス英雄王の建国理念がその当時、最も進歩的であったんでしょうね。」
「うむ、よく勉強してあるな。流石よの。でだ、なにかカレッド伯爵の娘に引っかかるところがるのか?」
「カレッド伯爵が仰ってましたが健康面で難があるんじゃないかと。確か病弱で塞ぎがちと仰っていた気がしたのですが。」
「うむ、最近は明るくなって、病気も改善したようだぞ。どうも大学に入る前に酷い事故に遭ったようだが、それから持ち直し、本人も人が変わったようだと言う話だが。」
「それは良い話ですが、人が変わった様と言うのが引っかかり余すね。」
「なるほど、それはそうだな。しかし候補はカレッド伯爵令嬢だけではないのでな。」
「あ、なるほど。候補は候補ですものね。」
「そうのとおりだ。どれか一人を良く吟味すべきだな。」
「じゃ、そのどれかを早いとこくっ付けちゃえばいいじゃないですか。」
俺がそう言うと、王妃が眉をひそめて、
「アベル、それはちょっと乱暴よ。」
と、諫めに入った。
ああ、そうだ。
それぞれの人生がかかっているんだもんな。
そんな簡単なものではなかった。
「申し訳ありません。つい人の人生を駒のように見てしまいました。軽率でした。」
俺は王妃に謝る。
「いえ、あなたはすぐ気が付いて、謝罪が出来ます。首都にはびこっている貴族たちよりよっぽど大人ですよ。」
うわ、きっつ。
「王妃がこんなことを言えるのも、アベルを信用しているからだからな。」
王からのエクスキューズが入るが、喜んでいいのか?これ。
「ありがとうございます。そう言われると、ここに居るのも気が楽になります。」
「そうか?そうであろう。いつでも来て良いのだぞ。」
いや、来たくねーし。
「では少しまとめさせていただいてもよろしいですか?」
「うむ、いいだろう。」
「王太子妃候補に限って言えま、まだ絞り込めていない。隣国の姫も、他領主の令嬢も、また首都に住まう法衣貴族の方々の令嬢に至っても、決めかねている。よろしいですね?」
「うむ、そのとおりだ。」
「そこで私が担うのが、王太子殿下の遊び相手として一緒におり、姉と合わさないようにする。これが主たるご命令でしょろしいでしょうか?」
「命令ではない。オスカーの友達に対してのお願いだ。」
王はそう言うとフフンと、得意げな顔をした。
お願いなら俺が断れないと思っているのだろう。
畜生!そのとおりだ。
「友達のお父様のお願いならば、受けざるを得ないでしょうね。」
俺がこう返事をすると、
「さあ、この話はお終いね。アベル、夕食を食べて行きなさい。」
マジか、ローズが待ってんだけどな。
「あの。」
俺が言いかけたところで、
「ああ、ローズが心配なのね。アベルの今日の夕食は城ですると、ローズには伝えに行かせるからお城でゆっくり過ごしなさい。」
こうして王妃に先回りされた俺は、かごの鳥になってしまったとさ。
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