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290.アベル君と王城へ。

290.アベル君と王城へ。




 俺が校門まで行くと、すでに馬車が待っていた。

 ドアの前には、先日娼館へ行ったときの執事さんが直立の姿勢で待っている。


 「お待たせ致しました。」

 俺は執事さんに声を掛けた。


 「いえ、それほどでもございません。しかし、皆様お待ちでございますので、お早くお乗りください。」

 そう言って執事さんは馬車のドアを開け、俺の乗車を促す。


 皆様ねぇ。

 どちらの皆様で?と聞こうと思ったが、楽しみにとっておこう。


 好物は後に取っておく方なんだ。

 俺が乗り込み席に着くと、執事さんも乗り込んでドアを閉じた。


 そして馬車が動き出す。

 執事さんは前列の席に行ってしまったので、俺からは見えない。


 どうにも手持無沙汰だ。

 一人での行動なんて、ほとんどない暮らしだったからな。


 前世ならスマホで漫画を読んだりゲームをしたり、動画サイトで動画を見たりと暇つぶしにはことを書かなかったんだが、ここではそうもいかない。


 子供のころ、セイナリアに行く旅の途中で母さんと姉さん、俺でファイアーボールのお手玉したっけ。

 ファイアーボールを魔力操作で山なりに相手へ飛ばす。


 飛んできたファイアーボールを自分の魔力で操作し、また別の相手へ。

 こんな感じで、遊びながら魔力操作の練習をしていたんだ。


 魔法が得意じゃない父さんは、それを見ながら笑っていた。

 思えば家族が家族として居られる時間なんかは短いものだ。


 無駄にしてきた時間はそんなにないと思うけれど、それでも五人家族が揃っていた時間は、俺が七歳になるまでだった。

 姉さんが十二歳で魔法大学校へ行ってしまったからね。


 前世で酷い生活をしてきた俺からすれば、それはそれは宝石のように幸福な日々だったよ。

 やべぇ、泣きそう。


 などと物思いに耽っていたら、王城へ向かう坂道を馬車は進んでいた。

 懐かしいな。


 もう来たくは無かったんだが。

 城門はもちろん顔パス。


 そのまんま王城のデカい玄関へ横付けだ。

 「ではアベル様は謁見の間前の控室でお待ちください。」


 いつの間にかそばに来ていた執事さんに声を掛けられた。

 ホント、いつの間にだよ。


 何モンだ?この爺さん。

 てなこと考えていても詮無いことなので、とっとと降りて玄関前に来ると、メイドが待っていて、玄関のドアを開けくぐるよう促されるのでドアをくぐり、メイドの後について控室へと向かう。


 テンプレというかチュートリアルというか、王城入場入門というか。

 そして、いつもの控室。


 ここも一人で待つのは初めてだ。

 王の謁見をするものは、必ず一回個の控室で待たされる。


 母さんときたとき、パーシーの爺にここで会ったんだっけ。

 見た目好々爺なのに、話し出すとねっとりと絡みつくような、嫌な感じがするんだよなぁ。


 母さんのこともエロい目で見ていたし。

 いけ好かん奴だぜ。


 ちょっと窒息させて、高次元でも送ったろか。

 いやいやいや、誰も得しないから止めておこう。


 得になるようだったら、遠慮なく青白い業火の中に放り込んでやる。

 骨も拾えなくしてやろう。

 ヒッヒッヒ。


 なんてな。

 敵対しないならこちらもしない。


 裏で敵対してきたら排除していいと、王からの言質も取ってあるしな。

 そんなくだらないことを考えていたら、ノックがあり、ドアから文官らしき人が入って来た。


 「アベル・ヴァレンタイン様、謁見が可能となりました。謁見の間へご同行いたしますので、おいで下さい。」

 「はい、お願いします。」


 そう言われたので、文官について謁見の間に向かった。

 相変わらず、けれんみタップリの豪華な観音開きの扉が目に前に有る。


 そのドアを連れてきた文官と、もう一人控えていた文官が開ける。

 俺はそのままフカフカの絨毯の上を学校の制服のまま進む。


 そういや、このままだったが、誰も何も言わないのだ、構わんのだろう。






 広い謁見の間の中ほどまで進んでから、膝を折り、顔を伏せるのだった。



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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