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286.アベル君と家庭の事情。

286.アベル君と家庭の事情。




 「どういう意味だ?」

 オスカーが率直に聞いてくる。


 「そのまんまの意味さ。紳士、淑女もベッドの上ではスケベに早変わりって意味だよ。」

 「言わんとしている事は分からんでもないが、どうもピンとこないな。」


 「そうか。わかりやすい事象があるんだが、あまり君たちに想像しろと言いたくはないな」

 俺が思案するふりをしながら言った。


 「何を想像するなと言うんだい。」

 テオが興味深そうに聞いてくる。


 「一番現実的で、一番信じられないことです。」

 「勿体ぶるな。早く申せ。」


 オスカーがせっつく。

 「自分たちの親がそれをやり、母親が俺たちを産んだという事実だ。」


 「そ、それは…」

 オスカーが言葉に詰まり、

 

 「キツイ現実だね。そうか、今まで想像もしなかったが、これはキツイ。父と母のか…」

 テオは言葉を手繰りながら口に出す。


 「つまり、そういう事だ。自分の親がしなければ我々は今ここに居ない。つまりヒューマンがスケベでなければ、命の営みは無いんだ。そして、情と言うものなくなる。夫婦の情と言うものはそういうものらしい。」


 オスカーは顎に手を当て流し案をしている。

 テオは両手を組んで、後頭部にそれを当て馬車の天井を見つめている。


 リックだけが何か言いたげに俺を見ていた。

 「リック先輩、何か言いたいことがあるんですか?」

 「うん、まあ、今の会話につながる事なんだけど、あまり言いたくないと言うかなんというか。」

 「僕らしかいないんですから、ざっくばらんに行きましょうよ。僕の言ったことだって、下手すれば不敬罪になりかねないことなんですから。執事さんの口が堅ければの話ですけど。」

 俺はリックの言葉を促す。


 「うん、じゃあ、単純なことなんだけどね、私たちの住んでいるところは農地と森しかないって言ったでしょう?領主の父も農作業の手伝いをするくらい。つまり、何もすることが無いところって事なんです。」


 「ああ、分かった。リック先輩、見ちゃったんですね。」

 「うん、子供の頃に。父が上になって母が泣いているような声を出していた。私は怖くて近づけなかった、父にも母にもしばらく近づくことが出来なかったんです。でも父も母も仲が良かった。お互い支えって領地を守ろうとしていた。私もそれを見て安心をした。その後しばらくして男女と言うもおはそういう事をするんだって領地の同い年の者から聞いてね。」


 「ええ、なるほど。それで?」

 俺はさらに促す。


 「そして、アベル様のさっきの言葉で得心がいった。父の母は条項を重ねることで、情を深めたのだと。やっと分かったよ。」


 「良かった。リック先輩はそれで胸のつかえがとれたんですね。」

 「うん、長い間誰にも言えずに胸にしまったままだったけど、やっと納得できた。今日この場に居てよかったです。本当にありがとう、アベル様。」


 リックはニッコリ笑い、俺に頷く。

 俺も頷き返して笑った。


 「いい話だな。」

 テオが口にする。


 「テオ先輩はいきなり娼館に連れていかれたんですもんね。」

 「まあ、リックの土地のように素朴な街じゃないからね。船乗り、商人、それを相手にする女たち。みんな生きるために必死だから。気も強くなるし、喧嘩っ早くもなる。そんな彼らをまとめたり、なだめすかしたりして領地経営をしなければならないからね。街の連中との付き合いってものの比重が重要になるのさ。そこで彼らがやっている店にもいかなければならに。そこらへんはもう語っただろう?」


 俺はテオの話を聞き込みながら、頷いていた。

 「うちも同じようなもんです。何せ冒険者が多いですからね。それに国軍と騎士団。まあ、気が荒いってんなら負けてないですよ。」


 「でも領主は一閃の剣とその奥方はお転婆魔法使いだ。このノヴァリス王国で珍しい一夫一婦を貫いていらっしゃる。そこに来ると、うちの父上は、まあ、なんというか金がある分、奔放だからね。あちこちに女をこさえてね。母上をその愚痴ばかり言う生活でね。裕福で食うに困らないが、精神的には抑圧された生活だったように思うよ。」


 うちは恵まれている。

 前世から見れば天国に居るようだった。


 愛されて、育っている実感があったもの。





 家族ごとでそれぞれの色がある、そう物思いにふけるのだった。



読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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