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283.アベル君と刻の流れの中で。

283.アベル君と刻の流れの中で。




 「ん?気になりますか?」


 「ええ、とても。」

 俺は少し食い気味だ。


 「アベル様のお母様がいらしたのです。」

 「ああ、そうですか。」


 納得。

 あの日は、迷子になった僕がカレンさんに連れられ、ロータリーまで来て別れたんだ。

 そして母さんたちは合流し、人でごった返す商店街に入ってしまい、いろいろと苦労したんだ。

 

 そのあとすぐに別邸へ帰ったんだけど、母さんは報告を聞いてカレンさんのもとへ行ったんだな。

 お礼をするとか言ってたから、そのつもりはあったのだろう。


 「母は、何か失礼なことを言いませんでしたか?」

 母さんに限ってそんなことはないとは思う。


 が、一応念のためだ。

 「失礼も何も、丁寧にお礼を言われて、おまけにしばらく遊んでいられるだけのお金を頂いてしまいました。具体的に言うと大金貨三枚。」


 三千万円!迷子のエスコートで三千万円!

 まあ、まあ、うちの両親は金銭感覚が壊れているときがあるからな。


 嫡男の安全の担保としたらという事なのだろう。

 でも、まあ、流石と言うか、母さん太っ腹。


 「それだけじゃないんです。」

 おもむろにまたカレンさんが、口を開く。


 「その頃は、小さな置屋に所属していたんですけど、娼館の事務の方がスカウトにきてあっという間に、こちらではたくことになりました。お金を頂くより、こちらの方が驚きました。学生さんに分かりやすく言うと、街の小さな私塾に居たのに、いきなり魔法大学校や、騎士学校の寮に入って、ここで勉強しなさいと言われるようなものです。」


 上手い比喩だな。

 「その手配を母がやったと?」


 「多分、というか、それしか考えられません。辺境伯夫人の手がセイナリア市の施設を動かせることが出来るならばですけど。」

 「なるほど。そうなりますね。」


 普通ならな。

 おそらくウイリアム爺ちゃんが手を貸したんだろう。


 国の宰相であり、首都の責任者。

 小指でちょいだろうさ。


 「なる程、そしてカレンさんはリラの耳に届くほど、ここの地位を高めたと。」

 「ここで働かせていただく以上、恥ずかしくないようにと懸命に頑張っただけです。幸い、私の種族の属性も助けてくれて、ヒューマンに比べて、若いままでいられますから。」


 「でもリラが知っているのは大したものだと思いますよ。まあ、彼女の情報網は、僕が異常と思うほどですけどね。」

 「ありがたい話です。」


 「うん、僕もありがたかった。こうしてまたカレンさんに会えたんだもの。直接あの時の例が言いたかったんだ。その節はどうもありがとうございました。」

 

 「やめてください。アベル様の頬を叩いた末にここにいるなんて、ありえない話です。本来なら極刑になってもおかしくないのですから。アベル様もお口添えしてくれたのでしょう?


 「確かあの時は、カレンさんという人が助けてくれたんだとしか言っていませんね。母の独断でしょう。あの人はそう言うことの出来る人ですから。」

 そして母さんは、家に召し抱えるようなことをカレンさんがよしとしないって、直接会ったことでわかったのだろう。


 さて、そろそろ時間だな。

 みんなの首尾はどうだったのだろう。


 ヒッヒッヒ。

 俺は姿勢を正し、キチンとカレンさんに向き直った。


 「それでは門限近いので、そろそろお暇します。今日は相手をして下さり、ありがとうございました。また来てよろしいですか?」

 カレンさんも、ピシッと背筋を伸ばしてから、丁寧に三つ指を付いてお辞儀をし、


 「こちらこそ、お相手して下さり、ありがとうございました。またのお越しを心よりお待ち申し上げております。」

 そう言って脇にあった鈴を鳴らした。


 「御用でしょうか?」

 控えていたのであろう、案内の職員が襖を開ける。


 「お客様がお帰りになられます。お連れのお客様の状況は如何ですか?」

 「皆様、お帰りの準備をなされている様子でございます。」

 

 「それでは、お客様のご案内、よろしくお願いします。」

 「はい、承知いたしました。」


 そう言って、案内係はいったん襖を締める。

 どうしたのだろうと考えていたら、俺はまだ裸だった。


 俺の着替えを待つってことね。






 てへっ。


 




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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