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274.アベル君と童貞ちゃうわ。  

274.アベル君と童貞ちゃうわ。  




 「な、何を急に、わ、私がど、ど、ど、ど」

 ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわって言う空耳あったなぁ。


 「分かった、皆まで言うな。あとで娼館へ行こう。テオドールさんもどうです?」

 「君はつれしょんの様に気軽に誘うね。まったく。しかしそういう事なら一緒に行こうか。」


 「わ、私は娼館など行かんぞ。そのような不潔のところへは私はいかない!」

 「だと!?こら!娼館が不潔だと!?こら!あ?」


 また俺は、ここでキレる。

 そりゃ、自分の奥さんの職場を貶されれば怒るのが亭主ってなもんでしょ?


 「い、いや、どうしたアベル?なんでそんなに、あ!き、貴様の妾の一人が、ああああ、すまぬ。また空気の読めぬことを!」

 「そうですが?ヴァレンティアに置いてきたもう一人の嫁は娼館主ですが何か?」


 「済まぬ、私が抜けておった。申し訳ない!」

 そこへ、


 「アベル君、ヴァレンティアの娼館主と言えば、女傑で有名なリラ殿では?」

 と、テオドールが割り込んできた。


 「よくご存じですね。リラは嫁です。」

 「ほう、そうか、やはり君は凄いな。あの六百歳以上の女傑が君の嫁か。」


 「エルゼにもその名が?」

 「そりゃ、商人が集まるからね。有名だよ。どんなに貢がれても気に入らぬものは客に取らず、逆に見染めたものは立身出世してしまうと言う女傑リラはエルゼの街でも有名人さ。」

 

 「そのような女性なのか?アベルの妾は。」

 オスカーが俺たちの会話に口を挟む。


 が、その鼻の頭をデコピンではじいてやった。

 「痛っ!貴様!何をする!!」


 「何をするじゃねぇんだよ。この野郎。妾言うなってんだよ。」

 「ああ、そうであった、すまぬ!」

 

 はじかれた鼻の頭を指のさすりながら、オスカーは謝罪をした。

 そんなオスカーに、俺は改めて口を開く。


 「で、なんでこんな話をするかって言うと、オスカーの異性に対しての余裕の無さだよ。」

 「余裕がないだと?私が!?何故そう言える?」


 「まず、がっつき過ぎ。」

 「がっついているだと!」


 「そうだろう?我が姉に対する言動、どれをとってもそうだ。先ほどの屈服などと言う言葉が出るあたり、その最たるものだな。彼女の目の前でそれを言ってみろ。雷魔法の餌食と化すぞ。それと娼館に対する潔癖さ。それは童貞男子が求める、処女性欲求の裏返しだよな。つまり、己が童貞なだけに、清純な穢れの無い女性に対するあこがれが強いわけだ。そしてもう一点、自分に性的経験が無いから、それについての恥を相手が処女なら覆い隠すことが出来るしな。気持ちは分かるが、こんなものは早々に犬に食わしてしまえ。さっさと、男女の肉体の差異くらい、自分で見極めろ。」


 俺は一気にまくしたてた。

 その様子を、目を白黒しながら聞いていたオスカーが、一気に肩を落とす。


 「今まで、自分が悩んでいたことを、一気に喝破するでない…」

 そう、オスカーはぼそぼそと呟いた。


 「我が姉が処女では無かったらどうしようとか、考えていたのか?」

 「う、い、いや私は信じておるのだ。シャーロット殿のことは全面的にな。」


 「だからこそ悩んでしまうという事だよな。僕も知らんが。」

 「し、知らんのか?アベル!?」


 「やっぱ、気にしてんじゃん。」

 「くっ!」


 「良いんだよ、そういうものだ。だからそんな悩みもプライドもかなぐり捨てて、さっさと行くか。」

 「へ、何処へだ?」


 「セイナリア市公立娼館だよ。」

 「アベル君は職員に心当たりがあるのかい?」


 テオドールが聞いてきた。

 この場合の職員とは、娼婦のことである。


 公務員だからね。

 「リラに行くことがあるのなら、指名しろと言われてあります。まあ、彼女の知り合いなら、やんごとなきお客が来ても大丈夫な職員をそろえることは出来るんじゃないでしょうか?」


 リラが下手な相手を俺に紹介するはずがないからな。

 「アベルよ、貴様、平気なのか?こちらに奥のもう一人が居るのであろう?言ってから向かうのか?」


 忘れちゃいないんだけどさ、こんな時に嫁の話すんなよって。

 空気読めって、まったくよう。


 「まあ、話をとおしに一旦寄宿舎には帰るよ。向こうのオリエンテーションもいい加減終わっているだろうから。」

 「奥ともそういう所に行くことを言えるのか。アベルは明け透けなのだな。」

 

 「根本で裏切るわけじゃないからね。嫌味くらいは言われるだろうけど、それくらいは許容しないと。」

 そう思っているのはお前だけだぞ!とか、言わないでね。怖いから。



 

 

 女性の許しは加点法。

 許して貰えたから何度も同じことを繰り返せば、緑の紙が飛んでくるのだ。


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