273.アベル君と王家の尊敬。
273.アベル君と王家の尊敬。
「なんだ、オスカー、お前は絶対的な尊敬をされているから、王家に忠誠が集中しているのだとか思っていたのか。なる程、だから素直な口調で屈服とか不敬とかって言葉が己の口から出てくるんだな。納得だ。もちろん、王家は絶対的な政治力と財力、軍事力を持ち合わせているからな、それに盾突こうとは皆思わんよ。でもそれは恐怖であって尊敬ではない。」
俺はオスカーに王家が貴族にどのように見られているのか教えてあげた。
もちろん、絶対的な信頼を寄せている家もあるだろうけどね。
だから、これはあくまで俺の主観。
でも、あながち他の家も違ってはないだろう。
「逆らえないから、得をするから忠誠を誓っているということか…」
なんだかオスカーがしょんぼりしている。
君主制を俯瞰から見た実態なんて、王宮の誰も話さないだろうからな。
帝王学としては学ばねばならんだろうが、ここ卒業しての話なのかね?
もしかして教師はウイリアム爺ちゃんか?
だとしたら爺ちゃん、ご愁傷様だ。
「だからオスカー、お前はそれ以外の、尊敬される王にならねばならん。財も力も政治も英雄王がすべて千五百年前から揃えて下さった。あとはお前がお前自身を磨き、各領主、国民から尊敬と敬愛を勝ち得ないといけない。分かるな。」
「理解は出来た。しかし私一人でそのようになれるだろうか?」
「我が姉の尻を追いかけまわしてばかりいては、なれないだろうなぁ。」
「アベル~、私のシャーロット殿に掛ける思いは本気なのだ。さっきは不用意な言葉を使ってしまったが、貴様が思うよな邪な考えなど持ってはおらぬのだ。」
「しかし他国からの縁談もひっきりなしだろう?オスカーよ。」
「それこそ外交として仕方ないものであろう?アベルは分かっていていうから、意地が悪い。」
「ということはだ、その某国の姫が正室になり、我が姉が側室になるってことだな。」
「う、まあ、そうならざるを得ないな。」
「ふーん。」
「なにをスカしておるか!アベル!貴様、既に妾を囲っているではないか!」
「情報早いな。」
「報告くらい受けておるは。既に二人も妾が居るとな。この好き者め。」
「僕はな、オスカー、自分の欲望だけで二人を娶ったわけじゃない。自分の裁量において、相手と意思疎通をもって関係を結んだんだ。いわば妾でもない。内縁の妻である。」
「な、内縁の妻だとう!」
ん?なんだろう?俺は十五、オスカーたちは十六の王侯貴族だからこの会話は普通か?
いや、まて、オスカーの会話が、日本の童貞男子高校生臭がするんだが?
「テオドールさん童貞?」
おれは直球でテオドールに聞いてみる。
さすがにこの話題をオスカーにいきなりぶつけるわけにはいくまい。
「な、なんだい、いきなり。」
テオドールは、少し目を剥いたが、落ち着いて対応する。
「いえ、デリケートな問題だっていうのはわかりますが、少し気になったもので。テオドールさんには会話には入って来ませんでしたが、少し余裕を感じられたので、ええ。」
「アベル君ならわかるかもしれないが、港湾は比較的ガラが悪くてね。そういうガラの悪さにも慣れないと行けなくて、付き合いで色んな所にも行かなくてはならなかったのさ。その中に、」
「娼館があったと。」
俺が言うと、テオドールは首をすくませ
「そのとおりだ。」
と、言ってから続けて、
「勿論成人してからだったがね。流石に親が許してはくれなかったみたいでね。」
「なるほど、そのバックボーンがあり、清楚系美少女を間近で見てしまったら目が眩んだと。」
「いや、その、そうかな?自分では良く分からんが。娼館自体はハマるほどではなかったのは確かだ。まあ、欲求があればそれに従う程度かな。今もたまには行くね。」
「ありがとうございます、テオドールさんが王女殿下以外の女性の話題に落ち着きがある理由が良く分かりました。僕に内縁の妻がいることも別に気にもしてませんでしたもんね。」
「そうだね、色恋は人それぞれだ。まして自分で責任を取れる立場なら、人がどうこう言う必要はないさ。で、君の興味はもう一人なんだろう?」
そのとおり、俺はオスカーに向き直って言い放つ。
「そのとおりです。オスカー、お前、童貞だな。」
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