表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/366

264.アベル君と王子と取り巻き。

264.アベル君と王子と取り巻き。




 俺とフランカはオスカーの後ろについて校内を歩いている。

 オリエンテーションがあるんじゃなかったっけ?


 「オスカー、学校の説明会があるって教師が言っていたが。」

 「ん?ああ、それは騎士学団で教えてやるよ。」


 「で、お前の取り巻きは何人いるんだよ。」

 俺は率直な質問をぶつけてみる。


 「アベルは相変わらず口が悪いな。取り巻きではない。みんな優秀な団員だ。まあ、人数は五人だな。貴様らと私を含めれば八人になるのか。」


 なるほど。

 「男女比は?」


 「男が三人、女性が二人だな。」

 オスカーが内訳を答える。


 へー、バランスは悪くない。

 俺とオスカー、フランカが入って五対三か。


 俺はまず起こさないが、恋愛事情や貴族同士のパワーバランスがいざこざの切欠になるかもしれない。

 もう燻っていたりして。


 なんたって、最高指導者の嫡男と一緒なんだ。

 誰が一番取入るか、競争が有っても不思議ではない。


 そこにフランカが入ることで平民というスパイスも加わる。

 面倒ごとの巣窟なんじゃないか?やっぱ、抜けたいんだが。


 「さあ、着いた。開けるぞ。」

 そう言ってオスカーはドアを開けた。


 もわっと何かの臭いが立ち込めてくる。

 香水かよ。


 騎士に修練する場所に居るのか?こんなもん。

 デオトラント的なものか。


 それなら納得だが、いささかキツ過ぎないか?

 俺の顔が渋い顔でもしていたのか、オスカーが何事かと聞いてくる。


 「どうした、アベル?そんな渋い顔をして。」

 「ああ、ちょっと臭いがな。」


 「それか。最近の流行りでな。どうしても汗臭くなるから、それをごまかしているんだ。特に女性がな。」

 「なるほど。」


 やっぱりそんなところか。

 ヨーロッパで香水が流行ったのは、ベルサイユ宮殿にトイレが無かったせいだっけ?


 ま、関係ないことはいいから、中でも見るか。

 オスカーとそんな話をして室内に入る。


 そこには五人の男女がコの字型に並べられた、それぞれの席と思われるところに座って談笑をしていた。

 まあ、雰囲気は今のところいいな。


 俺たちが入ると一斉に立ち上がり、男性はお辞儀を、女性はカーテシーでオスカーを迎え入れる。

 ああ、カーテシーって言っても、制服のスカートだから、形ばかりだけどね。


 だが、オスカーが取り繕ったところで、やっぱり王族に対しての態度じゃんよ。

 俺はシラケた心をおくびに出さず、オスカー後ろで立止まっていた。


 「なんだ?アベル、人見知りか?そんなとこに居ないで、私の横に来い。」

 それが嫌だから後ろに居たんだろうよ。


 しかしここで逆らっても無用なトラブルを引き込むだけだ。

 爺ちゃんにも言われたからな。

 俺は黙ってオスカーの隣に立った。

 しかしフランカは俯いて後ろに立ったままだ。


 「フランカさんもこっちにおいで。」

 俺はフランカを呼んだ。


 「いえ、でも。」

 そう言って立ち止まったままいやいやと首を振る。


 「さっき王子殿下が仰ったじゃないか。一生徒だって。」

 俺がこう言うと、オスカーが続けて。


 「アベルの言うとおりだ。まして私たちは騎士学団の仲間になるのだ。改まる必要はない。」

 そう言われて、フランカはおずおずと俺の隣に立った。


 「さて、皆に紹介しよう。私の隣に居るのがアベル・ヴァレンタインだ。有名人だからな。名前は聞いたことがあるだろう。彼をこの騎士学団幹部会に入れようと思う。」

 ん?ちょい待て。入れようと思うだと?


 オスカーお前、この中の人間の承認を得ずに俺を入れようってのかよ。

 「失礼ですが、王子殿下、宜しいでしょうか。」


 「ん?何だアベル。もう文句か。お前は子供のころから文句が多かったものな。」

 うるせえ!お前が横柄だったせいだろ!


 「私の入団に際し、こちらの皆様の承認等はなかったのですか?」

 「いや、フランカは承認を取ったが、貴様はない。まあ、いいから挨拶しろ。」


 クソッ!やっぱりこいつを昏倒させておけばよかった。

 「私はきたのヴぁれん・・・」


 「一閃の剣の子息様ってか。十五歳で二つ名持ちの坊ちゃん。」

 おっと、いきなり洗礼が来やがった。


 北の人間じゃない。

 南か。


 「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

 「大貴族様に名乗るような名は持っていなないよ、国内随一の魔法使いのお子様。」


 「左様ですか。では貴族ではなく、民草という事ですか?」

 「面白いことを言うねぇ、さすが宰相閣下のお孫さんだ。残念ながら否だな。一応貴族でね、それなりに食べさせてもらっているよ。」


 「なるほど、貴族の身であっても、私に名乗る名はないと申されるわけですね。」

 「まあ、そういう事になるかな。お坊っちゃんはこの部屋には似つかわしくないって意味でね。」


 「おお、それはありがとうございます。つい 先ほど迄思っていたことを仰って下さった。その言に従い、私はお暇することにいたします。それでは皆様、ごきげんよう。」





そう言って、俺はドアの取っ手に手を掛けた。




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ