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262.アベル君と学校長。

262.アベル君と学校長。




 「こちらです。」

 教師であろう人物が、その学校長らしい人物を連れてくる。


 まじかよ…

 その人は、軍務大臣グスタフ・ヴォルフガング侯爵その人であった。


 まあ、軍務大臣が責任者でも全然おかしくないどころか、むしろそうでなければいけない籐人選だろう。

 グスタフ侯爵は舐めるように演壇から新入生を眺める。


 俺は思わず顔を背けた。

 しかし気配で分かる、俺を見てるって。


 「うっほん!儂が学校長及び軍務大臣を拝命しておる、グスタフ・ヴォルフガング侯爵である。諸君らは、この国の礎になるためにここに来た。国民の規範となるためとして、国防の要として自分を磨き、友を作り、そして自分がこの国でどうあるべきか、この学び舎で友と共に切磋琢磨してもらいたい。まあ、一人規格外なものがいるようだが、それは捨ておこう。」


 ここで生徒たちが一瞬ざわつく。

 俺のことだよな。


 しゃー無し、真正面から10年ぶりの御尊顔を拝見するか。

 「静粛に!まだ学校長のお言葉は済んでいない!この程度でざわつくな!!」


 軍事組織の教師らしい叱責が飛び、新入生は即時に黙る。

 俺はその間、侯爵の顔を眺めていた。


 10年という歳月で、ずいぶん歳を召された。

 セントクレアの爺ちゃんと同じだから、もう70近くのはずだ。


 でも生気というか、オーラというか、まあ、みなぎっている。

 これは、あと30年生きると言ってもみな不思議がらないんじゃないか?


 と、思っていたら目と目が合った。

 恋はしないが。


 グスタフ侯爵は俺を見つけて、右に唇をゆがめ即座に元に戻り、

 「貴族で家督を継ぐ者は、社交の前段階という意味を持つだろう。それ以外の者は、騎士として認められれば、騎士爵として陞爵される利点がある。一代限りだが貴族の道が約束されている。目指すものは鋭意励むように。それでは儂の話は以上だ。」


 そう言ってグスタフ侯爵は演壇を降り、教師に何やら話してから校舎の方に引っ込んだ。

 「これから校舎に入って学校の説明会を行うが、その前に学生全員による校内組織、騎士学団の団長より挨拶を行う。オスカー・ノヴァリス、登壇しなさい。」


 「はい。」

 そう言って制服を着た美男の学生が登壇した。


 あれがオスカーかよ。

 俺に雪だるまにされ、呪いによってロッティーを斬りつけた。


 まあ、そのあと呪いが解け、わだかまりも消えて友達になったわけだが。

 随分いい男になりやがって。


 さぞモテることだろう。

 「私がオスカー・ノヴァリスだ。ご存じの諸君も多いと思うが、この国の王子である。しかし、恐れたり及び腰になる必要はない。ここでの私は諸君らと同じ一生徒に過ぎない。そのことは覚えておいてほしい。そして、騎士学団について説明しよう。」


 と、オスカーの説明が始まった。

 騎士学団とは、なんてことはない生徒会のことだ。


 ん?学校で生徒会長が王子様って言えば、乙女ゲーのテンプレじゃないか。

 では能力持ちの美人の平民娘が入ってこなければおかしいな。


 あとは美形の取り巻きたちだな。

 まあ、そんなんあるはずもないんだけどさ。


 「そこで、是非一年生から騎士学団でその能力を生かしてもらいたいものがいる。女性から選出、フランカ。」

 名前を呼ばれたであろう女生徒が呆然としている。


 まあ、当然だ。

 家名を呼ばれなかったのだ。


 平民出身に違いない。

 そんな娘がいきなり王子様に名前を呼ばれる。


 本当に乙女ゲーだな。

 「フランカは平民ながら剣術、学力ともに優秀で、騎士学校の門戸を叩いた人物だ。その積極的な性格と能力を買っての選出である。」


 オスカーがフランカの紹介を行った。

 なるほどね、能力値が高いのか。


 ここからは顔を見ることが出来ないけれど、可愛かったら王子様ルート行ってくれんかな。

 ロッティーの安静の為に。


 「次に男性から。アベル、アベル・ヴァレンタイン、貴様だ。」

 オスカーの野郎、こっちに振るなよ。


 多分俺は苦虫を噛んだ顔をしていたに違いない。

 当のオスカーは、俺の方を向いて楽しげに笑っている。


 「まあ、アベルの事は知っている諸君らも居よう。あの一閃の剣、ローランド・ヴァレンタイン辺境伯の嫡男、片方の祖父は、剣では無敵と称された、エドワード・ヴァレンタイン、もう一方の祖父はウイリアム・セントクレア侯爵宰相、そして母上はお転婆魔法使いこと、アリアンナ・ヴァレンタインで姉は魔法大学校の講師である、シャーロット・ヴァレンタインだ。」


 野郎、もうちょっと隠しておこうとしたことを、全部吐きやがった。


 「そして、貴様は既にC級冒険者らしいな。随分ここに来るまで楽しんでいたみたいじゃないか。我が親友よ。」


 その言葉を聞いて周囲がざわめき立つ。

 隣に居たパオロがわなわなと震えだし、

 「貴様!北の泡沫貴族だと言ったではないか!それがなんだ!北の最有力貴族のヴァレンタイン家の嫡男だと!?」 


 いささか、激昂気味のパオロが俺に詰め寄る。

 「まあ、そうなんだが、ここで一番の友達は君だよ、パオロ。」

 

 「そんなの信じられるか、殿下から親友と呼ばれる存在が、俺なんかと。」

 まあ、そうよね。


 「俺なんかとか言うな。さっきみたいに堂々としてろ。俺はお前を気に入っているんだ。お前の友達になれて嬉しいんだよ。」

 「アベル…お前…」


 「アベル!何している!こちらに来い!」

 オスカーの野郎が、生意気に俺のことを呼びつける。

 

 先ほどとは違い、おびえた牡鹿のようになっているパオロに向かって俺はいった。

 「済まんなパオロ、さすがに王子殿下の言う事は聞かなければいかん。一生徒なんて言ってもな。」

 

 「ああ、アベル、俺たちは友達でのか?」

 俺はオスカーのもとに行こうとしていた足を止め、パオロの方を向いた。





 「友達が良いんだよ。」




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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