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261.アベル君と学校と初めての友人。

261.アベル君と学校と初めての友人。




 習練場とも思われると所に、真新しい制服に袖を通した俺と同い年くらいの少年と少女が集まっている。

 いるのは生徒だけ、お付きの者たちは別の部屋で寄宿舎のルールを聴くらしい。


 ローズはそちら。

 まあ、妾だからという事で一緒に来たのではなく、一応俺のお付きメイドとしてきたことになっている。

 

 あまり公言することでもないからな。

 だからこそ爺ちゃんはローズを絡めた俺の心配をしたわけだ。


 十分気をつけるつもりで入るけどね。

 さて、新入生の連中なんだが、俺は見渡してみるようなことはしないよ。


 そんなことをしたら、俺を見てくださいと言っているようなもんじゃないか。

 後ろの方で、黙って眺めているだけでいいんだよ。


 こういう時はさ。

 「おい、お前。」


 ん?気をつけていても目立ってしまう事はある。

 なんたって、この顔は良すぎるからな。


 自惚れではなく、田中信一郎が客観的に思っている事だ。

 「なんか用?」


 俺は声のした方を向き、返事をした。

 なんだろう、騎士になるために鍛えてきました!って鉄板なステレオタイプがそこに居た。


 「お前、何処の出身だ。そんななよなよした格好しやがって。」

 「別に、なよなよはしてないが?それに名乗るなら自分から名乗ったらどうかな?」


 しかし、どうもテンプレな展開だ。

 力が強いと過信しているものが、弱そうなものにマウントを取る。


 まあ、生物学的には正解なのか。

 「ああ、そうだな。失礼した。俺はカッローネ男爵が嫡男、パオロだ。」


 案外行儀がいいかないか。

 「カッローネ卿って南部の?」


 「そうだ。」

 「南部辺境でのいざこざで武勲を上げたという?」


 「うむ、そのとおりだ。お前、良く知っているな。」

 何故かパオロと名乗った男は機嫌が良くなった。


 なるほど、武家出身って事か。

 で、俺が出自を知っていたから機嫌がいいのか。


 ちょろ。

 「南部のいざこざはだいぶ前だと記憶しているけれど、携わったのは、君のお爺様かい?」

 「いや、その頃はまだ曽祖父が家督をついでいた。祖父はその下で働いていたらしいな。」


 「そうか、立派な武家の出なんだな。だからそんなに逞しいのか。」

 「うむ、騎士になるために剣の修練に心血注いできたからな。」


 「そうか、立派なんだな。」

 俺はそう言ってパオロを煽てる。


 何事も穏便にだ。

 「そういう貴様はどこの出なのだ?そんな細っこい身体で、剣が振れるのか?」


 呼び方がお前から貴様になった。

 どうやら同列に加えてくれたらしい。


 「ああ、僕はアベル。北の出でね。君の家のように立派な武勲を上げた家とは比べるべくもない家の出さ。」

 「そうか、そうか。それなら俺の下に就かないか?剣術くらいは教えてやるが?」

 自信を持つことはいいことだ。

 ましてや青春真っ盛り、怖いものが見えない年ごろだ。

 その頃に謀反気を持って、自主独立できれば本当はいい。

 

 たとえ家を継ぐとしてもね。

 いつまでも年配者の言う事を聞くことは出来ないんだから。


 まあ、だからと言って、俺が下に就いてやる必要もないけれども、けれども!

 「いやぁ、僕が君の下に就いたら、君が皆に笑われるよ。君はここで勉学を積み、立派に騎士になる器さ。僕にかまけている暇はないはずだ。」


 「それは貴様も同じだろう。」

 「僕は無理やりここに放り込まれてね。もっと見分を広げろとかもっともらしいことを言われたんだけれど。ここに来たのは自分にとっては、明確な目標なんてないのさ。まあ、有力貴族との顔つなぎが出来ればいいって、親たちは考えているんじゃないかな?」


 俺の目標はスローライフだったんだがな。

 何がどう狂ったのやら。


 「うむ、そうか。他の貴族とのつながりは確かに将来必要になるな。では一番初めに俺と貴様が友誼を結ぼうではないか」

 パオロがいきなり自分が友達になるから握手しろと言わんばかりに手を差し出して言った。


 まあ、成人したと言っても子供の話だ。南部貴族がすべてパーシー公の下ってわけでもないだろうからな。

 学校の中だけ、これくらいはいいだろう。


 バレたら?そりゃバレるよ。

 そん時はそん時。


 それでも友達でいてやるって言ったら、パオロの頭をえらいえらいと撫でてやるさ。

 「ああ、ありがとう。僕なんかと友達になってくれて。」


 俺はそう言ってパオロの手を取った。

 何度もまめがつぶれ、皮膚が固くなり、踵のようになっている手のひらだった。


 コイツのこういうところは嫌いじゃないよ。

 あ、掛け算やらないようにね。


 俺の手を掴んだパオロはブンブンとその腕を振り回し、

 「そうか、そうか、俺と貴様が一番の友達か、そうか。」


 そう言って、なぜかしみじみし始めた。

 なんぞこれ。


 ああ、こいつも剣術ばかりやってぼっちだって落ちか?

 「どうしたんだい、お腹でも痛いのかい?」


 俺がわざとらしく聞いてみると、

 「い、いやそうじゃないんだ。剣術ばかりで、同年代の人間と仲よくなるなんてなかったからな。ちょっとな。」


 やっぱりか。

 こりゃ、良くありませんよ。ええ、良くありません。


 これじゃ他の貴族も同じかそれに準じているのかもしれない。

 寄子同士とか、そういうつながりはあるかもしれないけれど、領地が遠ければ繋がりは保てないもんな。


 同じ相手、同じ思想とばかり繋がってんのも、頭でっかちになりやすいし。

 こりゃ何とかしなければならないか。


 はっ!また余計なことに首を突っ込みそうになった。

 セントクレアの方の爺ちゃんになんとかするよう言うか。


 どうにもならんかもしれんがな。

 「まあ、まあ、この学校内でも楽しく過ごそうよ。他にたくさん友達もできるさ。」


 「ああ、そうだな。貴様は前向きだな。気に入ったぞ。」

 なんだかなぁ。


 そのんな話をしていると、拡声魔道具は鳴り響いた。

 「新入生!傾注!これより学校長より挨拶がある。こちらに注目するように!」


 

 

 そして演台に現れたのは!


 以後次号。刮目して待て!!!

 ゴメン、やってみたかったんだ。




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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