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256.アベル君と馬車でのひと時。

256.アベル君と馬車でのひと時。




 俺は笑顔で出迎えたローズに話しかける。

 「うん、でもダンジョンの虫たちより楽だよ。」


 「なんでです?」

 「ダンジョンの魔物たちはさ、酸欠使えないんだもん。人間たちは使えるから、あっという間だよね。」


 「ああ、そうですね。でも、アベル様しか使えないのです。あまりひけらかすような真似は。」

 「時と場合かな。どうせ、王陛下とそれに連なる大臣たちだって知っているんだ、バレたってかまわないさ。」


 「アベル様が言うなら、そうなのでしょうけど。」

 「それより騎士団の詰め所に寄ってから帰るからね。まったく、余計もんだよ。」


 「誰かの手のものでしょうか?」

 「その線は高いかな。でも今探しても仕方ないさ。こいつらも尻尾切りされるだろうしね。」


 「アベル様は十年前と違いますね。」

 「なんで?そんなに変わってないと思うけど。あ!童貞じゃなくなった!」


 ペチン!

 ローズが俺の手を叩く。


 ああ、これくらいは許すよ。

 貴族と平民の差はない、夫婦なんだからね。


 平民の妾を囲うと、物のように扱う人もいるらしい。

 まして平民側から暴力を振ったなんて言えば。


 まあ、そりゃね。

 でも、なんだかなって思うよ。


 まあ、それはさて置こう。

 「十年前はご領主様たちに、盗賊団の裏が居るんじゃないか?爆弾犯人は?とかって聞いていたじゃないですか。今は襲われても平然としていらっしゃる。ずいぶんと大人になりましたね。」


 「自分は最初から大人みたいに言ってんじゃないの。デートした時だって、大変だったじゃないか。」

 「それは…言わないで下さい。」


 「あれから十年だもんな。あの時のポーチ持ってる?」

 「ありますよ。大事に使っています。」


 「そっか、持っているのか。またあの革道具屋さんに行ってみようよ。」

 「はい、お供します。」


 「それとさ、貴金属店も行きたいんだ。」

 「何故ですか?」


 「ノヴァリス王国ではこういう風習は無いんだけどね。僕が知っている、遠い、もの凄く遠いところでね、結婚した男女はお互いの左手の薬指に指輪を嵌め合う風習があるんだよ。


 「なんだか素敵ですね。」

 「ダンジョンでドロップした金剛石とかも持ってきたから、それで指輪を作ろう。」


 「いいのですか?貴重な金剛石を。」

 「これくらい構わないよ。俺にはローズの方が貴重だもの。」


 俺がそう言うと、ローズは俯いて涙を流す。

 こいつこんな泣き虫だったっけ?なんては思わないよ。


 子供だった俺には見せなかったのかもしれない。

 小さいころから働いているなら、何かしらのストレスはあるものだ。


 俺は黙ってハンカチを貸した。

 ローズのは、セントクレア邸ですでにクシャクシャになっちゃったからね。


 ローズはそれを受け取り、しきりに目元を拭いてから、頭を俺の肩に預けてきた。

 可愛いなぁ、ははは。


 素直にそう思うことなんて、ここ最近になってからのこと。

 好きになることを拒絶していたからね。


 今はすごく気持ちを楽に、好きでいられる。

 ストレスフリー全開だ。


 「坊っちゃん詰め所に到着します。」

 おっと、忘れていた。

 この馬車の屋根に賊が三人も乗っていたんだ。


 御者さんが、知らせてくれたおかげで気が付いたが、いい雰囲気もあったもんじゃないな。

 程無くすると、馬車が止まった。


 俺は馬車を降り、御者さんにその場に待機を伝え詰所の門で構えている騎士に挨拶をする。

 「私はヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベルと申すものです。宰相閣下宅から帰る途中、賊に襲われまして、生け捕りにしましたのですが、とりあえず、こちらにお持ちしました。よろしいでしょうか?私の紋章はこれです。」


 俺は自分の紋章を見せ、身分を証明しつつ事のあらましを騎士に語った。

 「ハッ!少々お待ちください。」


 そう言うと、騎士は詰所内部に入って行った。

 上司でも連れてくるのかな?




 なんて思っていると、雷が落ちたのかと思うくらいデカい声がした。


読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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