255.アベル君と首都での戦闘。
255.アベル君と首都での戦闘。
嬉しいことに、信用されているね。
俺はドアを開け、馬車から降りて身を伏せ、状況を観察した。
強盗は三人。
二人は剣を抜いている。
もう一人は無手。
手に魔力が集中。
魔法使いが、いつでも打てるようにしているのか。
それでは魔法使いからやってしまおう。
俺は魔法使いの頭に、魔法操作と魔力固定で見えない壁を作る。
そこへ酸素を生成し注入。
魔法使いの頭が酸素で一杯になったころ合いを見て、酸素生成を反転させ、酸素の消去を行った。
「馬車の中の者!!出て来い!!」
剣を持つ一人目が怒鳴る。
ドサッ!
その後ろで音を立てて、魔法使いが倒れた。
「どうした!!」
二人目が魔法使いに慌てて駆け寄る。
一人目はそれを気にしながらも警戒を解かない。
訓練されているなぁ。
俺はその時、既に一人目の剣士の頭の周りに酸素を注入していた。
そして、真空化。
警戒して血走っていた眼が、白目に裏返り、そのまま地面ひれ伏した。
「お、おい!お前まで、なんだ!なにが起きている!!」
二人目はほぼパニックになりながら、御者さんに怒鳴り始めた。
「やあ、何か僕らに用でもあるのかい?」
俺はそこで馬車の陰から強盗の見えるところへ出た。
「貴様がやったのか!」
「まず、僕の質問から答えなよ。何か用なのかな?」
「シュッ!」
強盗は俺に何も言うことをせずに、剣でいきなり突いてきた。
距離があったのに、なかなか早い。
やはり訓練された人間だ。
俺は怪我をしたくないから、一応ブレインブーストを使う。
ブレインブーストは頭部まで溜まった魔素が、脳に蓄積されているグリコーゲンに作用し、脳の機能を効率化させてくれる便利な機能ですよ。(説明ゼリフ)
途端に盗賊の剣がゆっくりに見える。
それが俺の胸に一直線。
このままでは俺は死ぬな。
というわけで、マッスルブーストの時間だ!
説明しよう!マッスルブーストとは、体内に溜まった魔素が、体内中のグリコーゲンに作用し、筋肉の最適化を行い、力も持久力も高めてしまう便利な能力だ!マッスルブーストと同時に掛けることによって、ゆっくり見えて、素早く動けるんだ!分かったかな?(説明ゼリフ)
俺は剣の腹を拳の背で払い、そのまま強盗の懐に入って、めいいっぱい鳩尾に拳を叩きこんだ。
強盗は身体を苦の字曲げて、膝から崩れ落ちた。
マッスルブースト掛けたまま、容赦なく殴っちゃったからな。
そりゃ痛いだろ。
強盗は身体を丸めたと思ったら、そのままゲェゲェと吐き出した。
やり過ぎちゃったかな。
とりあえず捕縛しておこう。
「御者さん、ロープあります?」
「坊っちゃん、大したもんだ。あっという間に三人も片付けた。」
「ありがとう。ロープは?」
「屋根の荷台にありますから、ちょっとお待ちを。」
俺は御者さんから借りたロープで、三人を縛り上げた。
吐いていた一人は、
「止めろ、放せ!」
と言って暴れようとしたので、酸素を奪ってあげた。
「よっこいしょ。」
俺はそう掛け声を上げ、三人を持ち上げる。
御者さんが、目を丸くしてまた驚く。
「坊っちゃんどう見たって細いのに、スゲェ。C級冒険者はみんなそんな力があるので?」
「人によるんじゃないですかね。」
俺は苦笑いをしながら、三人を御者台にあげ、さらに屋根の荷台にあげた。
その間、強盗達は馬車のあちこちに頭や足をぶつけていたが、俺は気にしなかった。
襲って来た奴なんて、気にしないよね?
荷台に三人を縛り付け、
「遅くなっちゃうけど、騎士団の詰め所に行って。」
俺はそう御者さんに言い、馬車にもぐりこんだ。
「お疲れさまでした。」
ローズが笑顔で手短に俺を労らってくれるのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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