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254.アベル君と帰り道。

254.アベル君と帰り道。




 王妃と王女は帰って行った。

 「アベル様!私はあきらめません!どんな障害も乗り越えて見せます!!」


 なんだか、古い歌の歌詞のようなことを馬車から顔を出し、王女は叫んでいた。

 その意気や良し。


 うん、それだけ。

 「アベル、良かったのか?」

 

 この家の主、ウイリアム・セントクレア侯爵であり、ノヴァリス王国宰相が俺に尋ねる。

 こう字面にすると、凄いね。


 「なにが?」

 「ローランド卿にお鉢を回して。」


 俺が王女に父さんの命令なら結婚すると言ったことについて、爺ちゃんは問うていうるわけだ。

 「嫁取りの心配くらい、親にしてもらおうかな。自分たちは自由だったんだからさ。けど、あそこでああでも言わないと、王女が病んじゃいそうな気がして。」


 「それは考えられたけれど、あの子もかなり頭が回るもの、何とかしちゃうかもしれないわよ。」

 隣で聞いていた婆ちゃんも、俺に話しかけてきた。


 「うん、そうだね。10年前も辟易としたもの。けど王女が乗り越えてきたなら、迎え入れるよ。僕はそう決めているんだ。」


 「そうか。ならばよい。ただ王女がアベルのところに嫁ぐとなると、また頭の痛いことになるのう。」

 「そうね、あなたはアベルが結婚してからも、調整役を務めてちょうだい。」


 「爺ちゃん、長生きさせるようなことしてゴメンね。」

 俺がこう言うと、爺ちゃん婆ちゃんは笑った。


 その後、俺とローズ二人でお茶を御馳走になりながら、いろんな話をした。

 ローズがオムツを替えていたことから、パーティーを組んでダンジョンに入っていたことなどを、面白おかしく俺が話して、ローズに怒られる。


 それを見て爺ちゃんと婆ちゃんが笑う。

 そんな穏やかな時間が流れ、俺たちはお暇する時間が来た。


 「食事して行けばいいじゃない。」

 婆ちゃんが不満げに言う。


 「こっちに来たばかりだからね。入学式前にちょっと休んでいたいんだよ。この前、アンネの魔法大学校の入学式へ行ったんだけど、学校長の話が始まったら寝ちゃってね。」


 「その話はカレッド伯爵から聞いたぞ。終わりまでぐっすり寝ていたって。」

 爺ちゃんが伯爵に聞いた話を口にした。


 「まあ。」

 婆ちゃんは大げさに驚いてから、その後おかしそうに笑う。


 「それなら仕方ないわね。じゃ、気をつけて帰りなさい。」

 婆ちゃんは笑顔で言ってくれた。


 「アベル、おそらく陛下からお呼びがかかると思う。準備だけはしておきなさい。」

 爺ちゃんが不穏なことを言う。


 「10年前のことを思えば、それも仕方ないよね。わかりました。」

 俺はそう言うと立ち上がり、用意されていた馬車にローズと連れ立って乗り込む。


 俺は窓から顔を出し

 「じゃ、おやすみなさい。」


 その言葉に二人は手を振ってこたえてくれた。

 そして馬車は静かに走り出した。


 「疲れたな。大丈夫?」

 俺はローズに聞いてみた。


 「流石に凄い人たちばかりで、ビックリしました。」

 「そうだよなぁ。よく頑張ったね。」


 「あなたが隣に居たから…」

 そう言ってローズは俺にもたれかかった。


 その肩を俺は抱いた。

 父さんからは、嫌みの一つくらい覚悟はしなければならないか。


 王女自らに俺は道筋をとおしてやった。

 だから、王がでしゃばることはないと思うんだがなぁ。


 あの人、こういう引っ掻き回す様な事、好きだしなぁ。

 ヒヒィン!!


 いきなり馬の嘶きと共に馬車が急停車した。

 「大人しくしろ!!」


 外で誰かが騒いでる。

 なんだよ、セイナリアも物騒になったな。


 ここ貴族街だぞ。

 御者さんが馬車内の俺たちへ静かに声を掛ける。


 「坊っちゃん、物取りです。」

 「分かった、僕が対応するよ。大人しくしていてね。」


 「お一人で?」

 「一応C級冒険者でね。」


 俺は笑って返した。

 「ああ、そうでした。」


 御者さんはそう言って大人しく黙った。

 俺はローズに向き直り、


 「行ってくる。」

 「はい。」





 ローズは手短に応えるだけだった。




読んでいただき、有難うございます。

本作は長編となっています。

続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。

作者がんばれ!

面白いよ!

と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。


それでは、また続きでお会いしましょう。


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