ローズの回想3
薄暗い石造りの廊下をリサさんの後を置いていかれないように早歩きで歩くと
「あたしはリサ。6歳、ドワーフ、よろしく。」
そう言って足を止めることもなくリサさんは前を進んで行きます。
私はその背中を見ながら
「私はローズ、4歳、オオカミの獣人です。よろしくお願いします。」
と言うと
「ん。」
とだけ返事をして
「あたしのことはリサでいい。あなたのことはローズと呼ぶ。いい?」
と聞いてきました。
私が
「はい。」
と返事をするとリサが
「一つだけ注意がある。メイドは廊下で止まってお話ししてはダメ。メイドは廊下で立ち止まってお話しできるほど暇ではいけない。そうマーガレット様がおっしゃっている。気を付けないと雷が落ちることになる。怖いよ。」
私は歩く速さを緩めず、なるほどと納得しながら
「はい。」
と、小さく返事をしました。
廊下を進んだ先にいくつもの扉がありました。その中の一つの扉の前にリサが止まると
「ここ。」
と言いながら扉を開きました。
覗き込むと、質素なベッドとテーブルセット、そして備え付けのクローゼットがありました。
「ここがあなたの部屋。早く中へ入って」
そう言って、私を部屋の中へリサが迎え入れてくれます。
私が部屋に入ると素早く、リサは静かに扉を閉めます。
続いてクローゼットをリサは開け私の手荷物を見ながら
「荷物はそれだけ?、必要なものだけ出して、クローゼットの隅にでも置いておけばいい。」
そう言って。クローゼットの上の方を眺めます。
「椅子がなきゃダメか」
そう言って、テーブル前に有った椅子をクローゼットの前まで引きずり、靴を脱いで裸足になったと思ったら、ぴょんと椅子に飛び乗りました。
そしてクローゼット上方に引っかかっている新品の小さくてかわいいメイド服をハンガーごと持ち上げ器用にハンガーを外すと
「持って」
と私に渡すそぶりをしました。
私はあわててメイド服を受け取り、両手で服を広げてみました。
すると思わず
「かわいい〜」
と声が出ました。
「それがあなたのメイド服。3着用意してあるから、順番に着てゆく。その方が一着ごとに着潰してゆくより傷みが遅くて長く着れるらしい。」
そんなことを言いながらリサは椅子から降りてきました。
「そういえば、さっきの荷物に着替えと下着って入っている?」
とリサが聞くので
「入ってます。」
と言って中身を見せました。
リサは中身を見ると
「うーん」と言って考え込みました。
「この着替え二着分と、今その下に着てる分だけ?」
と聞くので
「はい。」
と、応える私。
「あとで捨てる。マーガレット様に言って新品をそろえてもらう。いい?。」
リサはそう言い放ちました。
「なんで?まだ着れるのに。」
そう私が言うと
「以前のあたしならローズと同じにそう言った。でもマーガレット様に同じようなあたしの着替えを見せたら、「それは着替えとは言わない、ボロというのよ」って言われた。「衣服はすべて清潔であれ。」それがマーガレット様の言いつけ。いい?」
そう言うと私を手招きし
「早くその服を脱いで。今日は仕方ない、その下着の上からメイド服を着よう」
そう言って私をメイド服へ着替えさせるのでした。
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