241.アベル君と首都へ。
241.アベル君と首都へ。
馬車に揺られているよ。
と言っても、もうセイナリアのゲートの前だ。
前回来た時の様な風景が広がっている。
一般人がゲートでの検問待ちで行列を作り、果てにはシートを敷いて休んだり、テントを張ったりしている。
ところが、こちらの貴族用レーンはスムーズに進んでいる。
これが封建制度というものだ。
って、前回も言ったかな。
今回、俺の移動での護衛は騎士団副団長のデビッドと騎士団員5人。
馬車の中は、俺とローズ、ミーそれと魔法大学校に行くことになったアンネローゼだ。
おっと、忘れていた。
リーサも一応同行ということになっている。
ここには居ないが。
まあ、もう首都入りしているのかもしれないし、高次元にでも遊びに行っているかも剃れない。
神様だからね、その真意は計り知れないよ。
それを探るのも、面倒くさいというのは内緒。
本来、爺ちゃんとフレイは馬車の中のはずだが、騎乗が良いと聞かず、結局馬上の人となった。
まあね、長い旅路を狭い馬車の中で居られるかって思いは分からんでもない。
でもよ、ご隠居様よ。
還暦も過ぎたんだから、ちっとは自嘲してくれよ。
と言っても久しぶりの長旅で気が高ぶったんだろうなぁ。
で、次の問題が起こる。
ゲートに近づいて、検問をやっているセイナリア騎士団の騎士団員が馬車に近づき、俺に質問してきた。
「申し訳ありません、どちらのお方でしょうか?身を証明できるものをお持ちですか?」
そう言って、一応丁寧に聞いてきた。
俺は自分の紋章を騎士に提示し
「ヴァレンタイン辺境伯嫡男、アベル・バレンタインです。騎士学校入学のために参りました。」
と、言った。
騎士は俺の紋章と、馬車の紋章を見比べ
「少々お待ちいただいて宜しいでしょうか?」
そう問うたその時、一騎の馬が近寄ってきた。
「騎士よ、ご苦労。バルドは詰所に居るのか?」
そう騎士に聞いてきたのは馬上の爺ちゃんだ。
騎士は一瞬、訝しむ表情を見せたが、気を取り直して
「貴君はどなたでありましょうか?」
と聞いてきた。
すぐ貴族だとわかったから、突っかからなかったのだろう。
偉いなぁ。
などと俺が思っていると
「うむ、そうであったな。儂はエドワード・バレンタインだ。エドワードが来たとバルドに言ってくれ。」
そう騎士に爺ちゃんが告げた。
爺ちゃんが言った途端、騎士はピョンと跳ね上がり、ブリキのおもちゃのように固くなった。
マジ笑いそうになったわ。
「元近衛騎士団長のエドワード閣下でありますか?」
「うむ、昔の事であるがな。そのようだ。」
「少々お待ちください!すぐ呼んでまいります!!」
そう言って詰めの所の方へ、すっ飛んでいった。
しばらくそちらの方を覗いていると、フルプレートを着た巨体が、ガシャンガシャンと音を立てて向かってきた。
その姿を見て、爺ちゃんの口が右上へ歪む。
「エドワードか!!」
デカい声が響き、市民までもが遠目でこちらを覗き込む。
「バルド!息災だな!」
爺ちゃんは馬を降り、バルドさんと軽くハグを交わす。
ホント、親友なんだね。
「こっちはアベル坊か!デカくなったな!またセイナリアで暴れに来たのか?」
バルドさんは馬車の窓から覗き込んでいた俺を見つけ、笑顔で嫌味を言ってくる。
まあ、豪快な人ってだけだからね、悪意はないのよ。
「バルドさん、ご無沙汰しています。僕はそんな悪童ではなかったでしょ?」
「うーん、どうだろうなぁ。人さらいの家とは言え、一件爆発させていたのは誰だっけ?」
バルトさんはそう言いながら、俺の頭をガシガシ撫でた。
「ええ、僕ですとも。それで王陛下たちに詰められた苦い思い出がありますからね。」
俺はやや唇を尖らせながら、バルトさんに答えた。
「その節は孫のアベルが世話になったな。」
爺ちゃんが笑いながら、俺のことで礼を言う。
「何、アベル坊は儂を飛び越えて、セントクレア閣下や、王陛下と直接折衝をするから、楽なもんだわい。」
「まあ、アベルはアリアンナですら言い負かすことがあるからな。セントクレアのジジイが欲しがるのも分かる。」
「ほう、あのお転婆をもか。流石だな。ガハハ。」
「お話し中悪いけど、バルドさん、後ろ詰まってきているけどいいの?」
俺が気を聞かせて注意する。
「俺と貴様らの再会を邪魔などさせん。と言いたいところだが、俺は職務に忠実なんでな。エドワード後で飲もう。」
「ああ、やろう。」
そう言って爺ちゃんたちグータッチをして別れたのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。